↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊事警察 ~霊が見える刑事と、霊が怖すぎる刑事が挑む怪事件~  作者: 星乃渚(旧:鈴片ひかり)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/12

呪詛シール

警視庁には、表に出ない部署が存在する。

様々な凶悪事件に対し霊的アプローチを用いた捜査を行う――刑事部 霊事課 通称 霊事警察。

捜査一課の刑事・八神恭史郎は、ある日、霊が見える刑事「本条ひなた」とコンビを組まされる。

だが八神は、極度の怖がりだった。

人面犬事件、猟奇殺人、犯罪組織の暗躍

そして都市の闇で進む謎の薬物実験。

人間の犯罪と怪異が交差する事件に、凸凹コンビの捜査が始まる。

 ※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。





「お二人がいなかったら、私……えっと、薬打たれる前とかに言ってたこと、奴らが話していたことを悔しいから覚えておこうって頭の中でまとめてあるんです」


「それは……」

 なんという女性だと八神は思う。

 ひなたはそんな早瀬香澄を優しく抱きしめた。

「大丈夫、今は忘れていいのよ。こんな辛いことは忘れるに限るのだから」

「そ、それは、で、でも……」

 早瀬香澄は、事件の衝撃に抗おうとして、犯人たちへの憎しみを胸に抱くことを選ぼうとしている。


 もしかしたら、投与された不安増幅効果のある薬がこうやって焦燥感や義務感を溢れさせているのかもしれない

 それはPTSDになりうる事態に立ち向かう一つの方法なのかもしれない。

 だから、八神は早瀬香澄の頭を撫でながら答える。


「大丈夫だ、警察は結構優秀なんだ。少しだけ事情を聞かせてもらうと思うけど、君が背負うべきことじゃない。君は被害者で、奴らに立ち向かった勇敢な女性だ。


 今はゆっくり休んで、護と穏やかな時間を過ごしてくれ。そしてお母さんのお見舞いに行くといい」


 そこで早瀬香澄はわっと泣き出した。

 えんえんと、子供のように泣きじゃくった。


 ひなたは何も言わずに、早瀬香澄と一緒に救急車へ乗り込み病院へ付き添った。


 鑑識や、杉沢本部長が現場に来る中、八神は引継ぎが終わり夜風の冷たさにぶるっときたとき一言、万感の思いを込めて呟いた。


「救えてよかった」


 気になるのは、奴らが言っていた実験というワード。


 そしてあの黒田という男の動きは特殊な訓練を受けていた。

 組織的な動きがある。

 それらが繋がっているような不気味な気配を、八神は拭えずにいた。


 ◇


 後日、八神が目の下にクマを作って霊事課へ現れたことにひなたはぎょっとしていた。

「おい! 変なこと言うなよ! 絶対言うなよ! これは家鳴りや寒暖の差による木材の膨張! そして、ウォーターハンマー現象だ!」


「ちょっと何言ってるんですか」


 霊事課を訪れた八神は、樹里が入れてくれた緑茶を飲みながら慌てていた。


「それは八神君、君の周囲に大勢の霊たちがいるからだ。おそらく君が強く頼れると思ってついてきてしまったのだろう」

「なっ! こ、ここに!? や、やめろ! 俺なんかに構うな! ぎゃあああああ! た、たすけでえええええええ!」


 へっぴり腰で黒瀬課長にすがりついている八神があまりに滑稽なので、樹里とひなたは思わず噴き出したが、さすがに気の毒なのでさっと処置をする。


「これでもう大丈夫です、清めの塩を首筋に塗り込んだのでもう近づくこともできないと思いますよ」


「ふぅ、さすがに疲れと緊張で感覚が鋭敏になっていたようだ。気のせいだったとはな!」


「八神っちってかなりおもしろいキャラよね」

「うん、これは逸材」


「くそ、お前ら、他人事だと思いやがって!」


 ひなたはお茶を飲みながら八神を宥める。

「大丈夫です。八神さんは憑りつかれたりするタイプではありませんから」


「そ、そうなのか!?」

 めちゃくちゃ喜んでいる。

「でも、本能的にというか、やっぱり優秀で強い刑事さんなんでみんなには眩しくて輝いて見えちゃうと思うんですよ、今後も困った霊がいたらついてきちゃうとは思いますが、近寄れないので悪さはできないと思いますよ。おうちで起こってる現象もそんなところなので気にしなくて大丈夫です」


「気にするわ! お前絶対に驚かして楽しんでるだろ!」

「してませんって」

「してる!」

「してません、ってか しつこいなお前」


「……え?」


「脅かしてないって言うてるやろ。あの倉庫でもなぎょうさんお前んとこ不浄霊やら浮遊霊やらが近寄って来てても、黙ってといただろうが? ああ?」


「え、えっと、その」


「それにな、佐久間さんと三枝さんが外にあの中年女、矢作がおったことを教えてくれんかったらお前撃たれたやろ? ちゃんと2人にお礼したんか?」

「いや、その、ねえ、あの2人は亡くなって」


「だからちゃんと霊になってもお礼しとけ言うとんねん、ほら2人とも八神さんを助けられて喜んでるで? ほらちゃんと義理通せやぼけ、そうやって供養に繋がっていくんじゃ」


「あ、あの、その、助ていただいてありが、……」


「ん?」

「ひなちゃん、八神さん気絶しちゃってる」


「あちゃーあいかわらずのびびりやな」


 黒瀬課長がからからと笑いながらひなたに声をかける。

「そういえば本条君、あれが鑑識から回ってきたと聞いたが」

「はい、星月神社からもらった大幣おおぬさでくるんで封じてあります」


 ひなたは漆の箱を黒瀬課長へと運ぶ。椅子ではだらんと八神が気を失ったままだ。


 黒瀬課長は一切の躊躇なく漆塗りの箱を開けると、中に入っていた 大幣をくるくると紐解く。


 中から現れたのは、手の平サイズのトの字に似た奇妙な紋様が絵かがれたシールのようなものだった。

 それが複数枚。

「あのプレハブに貼ってあったものらしいです。回収した鑑識が数名体調不良で寝込みましたが、星月神社の美冬にお祓いされてからは復帰しています。もちろん警察経由ではなく、知人の紹介経由というルートにしてあるので安心してください」


「ふむ…… よし終わった」

「もう? はやっ」


 思わず樹里が呆れているが、ひなたには黒瀬課長が今したことのすごさで冷や汗さえでてきている。


 黒瀬課長はただの紙屑のように数回千切るとそのまま瓶に入れてしまった。


「私が持って帰って燃やしてから灰を川に流しておこう。呪詛シール。そう呼んでいいかもしれない。いったいどういう目的でこんなものを。謎の薬物の治験データを得るためのプレハブになぜこんな穢れた物を貼る必要があったのか。


 しかもあの黒田と矢作という犯人たちは、強力な悪霊除けの呪符を持っていた」


「そうなると、悪霊だろうが近づけない八神さんって、何気に切り札になっちゃうかもしれませんね」

「まあ、切り札にしては少し怖がりなのが、まあ愛嬌としておこう」


お読みいただきありがとうございました。


よろしければブックマークや評価をいただけると、今後の執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。