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第35話:極楽の魔窟は、今日も仕込み中

「へいお待ち! 特大クラーケンの極上刺身盛りと、A5ランク飛竜肉の信州味噌炒めだ! 樽生ビールもキンキンに冷えてるぞ、残さず喰らい尽くしな!」

「「「うおおおおおおおおおっ!!!」」」


 夜の帳が下りた『極楽亭』の大広間は、地響きのような大歓声に包まれていた。


 厨房の戦場で、ガルバの神速の包丁さばきが炸裂する。最高級の食材が次々と完璧な芸術品へと「解体」され、客席へと運ばれていく。


 ──ピコーン!

【高級食材の完全解体を確認:DP+120】

 ──ピコーン!

【至高の調理(完全なる命の昇華)を確認:DP+200】

 ──ピコーン!

【キル、キル、キル確認──!!】


 チリンチリンチャリンチャリンチャリンチャリン!!!


 アキトの視界の端で、保有DPのカウンターが集中豪雨のような爆音を立てて回り続けていた。だが、次の瞬間、数値のカウントがピタリと止まる。


 ──ピコーン!

【保有DPが上限に達しました(カンスト:99,999,999 DP)】


「あ、本当にカンストした」


 管理人カウンターで魔導端末を眺めていたアキトは、思わず笑みを漏らした。


 魔物を一匹も殺さず、ただ厨房でドワーフの親父が極上の飯を仕込み、客が温泉でふにゃふにゃになってダラダラ過ごすだけ。その結果、アキトのダンジョンは、人類の歴史上どの魔王も成し得なかった「人類最高峰のDP獲得効率」を達成してしまったのだ。永久マスター免税のおかげで、この莫大なポイントはすべて純利益としてプールされている。


「んふぅー、この『ウニの醤油漬け』、冷やした『神殺し』に合いすぎて脳が溶けちゃうわぁ……。アキト、私をエアコン扱いしたことは一生許さないけど、このおつまみを作ってくれる間だけは、あんたを世界最高のマスターって認めてあげる!」


 横の特等席では、大精霊ルミナが完全に使い物にならなくなっていた。白銀の髪を畳にすりつけ、特製のおつまみとお猪口を交互に口へ運びながら、幸せそうに頬を緩めている。


 もはや神々しい大精霊の威厳はどこにもないが、彼女の完璧な結界と温度管理のおかげで、この宿の「極楽」は24時間保たれている。


「おいアキト! 管理人さんよぉ!」


 大広間の入り口から、ノーテンキな声が響いた。


 やってきたのは、アキトのFランク時代の貧乏冒険者仲間たちだ。彼らはいつも通り怪我だらけだが、ここに来ると一瞬で傷が癒えるのを知っているため、実に見事な笑顔を見せている。


「今日も銅貨数枚でこの最高の湯と飯を味あわせてくれてありがとな! いやぁ、お前が『偶然見つけた安全地帯の雇われ管理人』で本当に良かったぜ! 街のギルド長も『アキト君をいじめる奴は私が許さん!』って大張り切りだし、お前人徳あるなぁ!」

「ははは、そう言ってもらえると嬉しいよ。みんな、ゆっくりしていってくれ」


 アキトは、しがない笑みを浮かべて彼らを見送った。


 彼らは物語の終盤に至ってもなお、アキトを「運良く凄い宿の管理人に抜擢された、しがないFランクの友人」だと信じ込んでいる。だが、それでいい。彼らが何も知らずに、いつでも気兼ねなく帰ってこられる場所であることこそが、アキトの理想の「引きこもりライフ」の証明なのだから。


 世界中の王族や大富豪が1泊100万ゴールドを積んで媚びへつらい、天界の駄神が酒欲しさに大号泣して加護を授け、街のギルド長が最強の盾として周囲を睨みつける

 誰からも脅かされず、誰も殺さず、美味い飯と極上の酒、そして最高の仲間に囲まれた絶対不可侵の楽園。


 最弱のFランク冒険者が現代知識と泥臭い経験でシステムをの穴を突き、全力で敷き詰めた「理想のスローライフ」の完成形が、そこにあった。


「ふぅ……。ひと仕事終えたことだし、俺たちも始めますか」


 アキトはカウンターから立ち上がり、厨房で一息ついていたガルバと、酔っ払っているルミナの元へと歩み寄った。 手には、今朝新しく開けたばかりの、琥珀色に輝く最高峰のウイスキー。


「ガルバさん、ルミナさん。今日も最高の仕込み(DP稼ぎ)をありがとうございました。俺たちの極楽に──乾杯」

「おう、がはは! 乾杯だ!」

「かんぱーい! 明日も美味しいお酒、期待してるわよ!」


 カラン、と心地よい氷の音が響き、三人の弾けるような笑顔が、温かい湯煙の向こうへと溶けていく。


 迷宮の最深部に隠された、世界で最も優しく、最も貪欲な極楽の魔窟。 その扉は、今日も最高の癒やしを求める迷い人たちのために、静かに開かれている。

本作を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

初めての小説執筆で、AI(Gemini)を相談相手に迎え書き上げた作品です。

無茶振りに文句も言わず、プロットの穴を埋めてくれたり、大暴走をかましたりの相棒にも感謝を。

何より、こんな無名な作品を最後までお付き合いいただいた皆様にありがたいやら申し訳ないやら(笑)

また新しい物語でお会いできる日を楽しみにしています。


(もしかしたら明日にも始めてるかも知れませんが…w)

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