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粗大ゴミの処分依頼

1.

「おい、不届き者の弟子。ツナギの襟を正せ。背筋を伸ばせ。いいか、今日来るのは本物の『調査員』だ。この前の上層部の変な奴とはワケが違うからな。絶対に余計なことは喋るなよ」

次の現場である、干からびた砂漠の惑星。

白いツナギを着た親父神は、今までにないほどガタガタと膝を震わせながら、十歳前後の娘――助手の肩を揺さぶっていた。

「えー、別にいいじゃん。なんか向こうの部署の人たち、いつも以上に顔が青白かったよ?」

「当たり前だろ! 創造陣営の幹部が一先行方不明になってんだぞ! 俺たちの部署に疑いの目が向くのは当然だ。いいか、あいつは『見ていません、知りません、不法投棄のゴミなら燃やしました』で突き通すんだ!」

カチリ、と次元の扉が開き、重苦しい空気を纏ったスーツ姿の調査員たちが数人、砂嵐の舞う荒野へと現れた。その目がバキバキに据わったエリートオーラに、親父神は引きつった笑みを浮かべて深く頭を下げた。

「あ、これはこれは調査員様! お疲れ様です! 解体業務の進捗なら至って順調でして――」

「挨拶はいい。単刀直入に聞く」

リーダー格の調査員が、冷徹な声で親父神の言葉を遮った。端末に映し出されたのは、この前、娘がビームで塵一つ残さず消し飛ばした、あの黄金の甲冑を纏った変な奴の顔写真だった。

「我が陣営の査察官が、この現場の座標付近で行方不明になった。……まさか、貴様ら『閉じる係』が、あいつを消したんじゃないだろうな?」

ギロリ、と鋭い視線が親父神を射抜く。空間の圧力が一気に跳ね上がった。

2.

「い、いやいやいや! まさかそんな! 俺たちしがない解体屋ですよ!? あんな立派な黄金の甲冑を着た偉いお方を、消すだなんて滅相もない! なあ、娘!?」

親父神は必死に話を合わせようと、隣の娘に目配せをした。

「うん。黄金色の、大きめの、不法投棄されたゴミなら、私が先週この指からビーム出して、サクッと更地にしたけどね」

娘はすっと二本の指を立てて、悪気のない笑顔で答えた。

「ぶふぉっっ!!」

親父神が盛大に裏返った声を上げて、その場に崩れ落ちた。終わった。我が部署の減給どころか、一族郎党全員デリートされる、と親父神が頭を抱えて人生を諦めかけた、その時だった。

「……え? 本当に消したのか?」

調査員の目が、一瞬で丸くなった。

「はい。跡形もなく、綺麗に片付けました」

娘がハキハキと答えると、調査員たちは互いに顔を見合わせ、それから――。

「やったぁぁぁぁぁぁ!!! 消えたぞあいつ!!! ざまぁみろ!!!」

「お前ら、よくやった! 最高だ! 部署の予算から特大の手当を出してやる!!」

「……え?」

今度は親父神が口を半分開けてフリーズする番だった。冷徹だったはずの調査員たちが、砂漠の真ん中で手を取り合って飛び跳ねて喜んでいる。

「いや、あの、お咎めなしですか……?」

親父神がおそるおそる尋ねると、調査員は涙目を拭いながら、親父神の肩をガシガシと叩いた。

「咎めるわけがないだろう! 最近、我が創造陣営が死ぬほど大炎上してた原因、全部あいつなんだよ! 自分勝手な物理法則を押し付けて世界を何個もバグらせて、注意したら逆ギレして大剣振り回して逃走してたんだ。上層部でも完全な『粛清(消去)対象』だったのさ!」

3.

「あー……だから、あんなに目がバキバキで襲ってきたんだね」

娘が納得したように魔法のバールをポンと叩く。

「そうんだよ! 本当に助かった。事務手続きの書類が山積みで死にかけていたんだ。……あ、それでだ」

調査員は急に真面目な顔になると、親父神と娘に、一枚の怪しく光る電子プレートを手渡した。

「実は、あんな奴が『もう一人』いる。そいつも今回の炎上の共犯者なんだが、現在、色んな終わった世界を逃走中なんだ。もし見つけ次第、今回と同じようにサクッと消去してくれ。これは上層部直認の『お墨付き(粗大ゴミ処分ライセンス)』だ」

「えっ、いいんですか? 出会った瞬間にビームで消しちゃっても」

娘が目を輝かせると、調査員は力強く頷いた。

「ああ、大歓迎だ! むしろ見つけたら即デリートしてくれ。報告書には『不法投棄のゴミを現地処分した』って書いといてくれれば、こっちで全部握り潰すからさ!」

「……お役所仕事って、たまに話が早くて助かるな」

親父神は、受け取ったライセンスプレートを見つめながら、ようやく生きた心地を取り戻して息を吐いた。

「よし! 指名手配犯の粗大ゴミ処分という、新しい実業務(兼サボり口実)が増えたぞ。娘よ、お前のその覚えたてのビーム、次の現場でも大活躍しそうだな」

「うん! 次の奴も綺麗に片付けちゃうね。あ、父さん、調査員の人から手当が出るなら、今度はアイスじゃなくて高級なお肉食べたい!」

「よし、いいぞ! 叙々苑的な時空の焼肉屋、予約しといてやる!」

創造陣営の残した「最悪のバグ(逃走犯)」を合法的にハントする権利を得た解体屋親子。

終わった世界を閉じる2人の旅は、なんだかちょっと物騒で、最高にエキサイティングな方向へと進み始めるのだった。



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