街道に出没する積荷狙いの賊徒
波才のお爺さんである波翁から賊徒の話を聞き、今早急に何とかしないといけない事案だと判断した。
物流を潰されるのは、広宗の民の暮らしに直結する。
それがここ最近、頻繁に起こっているようだ。
父も何とかしているようだが手が回っていない。
このまま放置すれば、商人の方から広宗の地は治安が悪くて危険だと来なくなるだろう。
良師「じいや、今まで賊徒に対してどんな対応をしてきた?」
波翁「そうですなぁ。街道の見回りの強化ぐらいでしょうか?」
良師「成程。商人側の護衛は?」
波翁「勿論、おりますが毎度歯が立たないようでして」
商人が雇う護衛が全く歯が立たない?
普通の盗賊の練度で、そんなことがあり得るのだろうか?
この時代、盗賊に身を落とすのは食べれない民が大半だ。
それが護衛を生業としている武芸者を相手に戦果をあげている…。
可能性として考えられるのは、よっぽど腕の立つ盗賊か…上が相当に優秀かだ。
前者であれば、何処かの県が親父の治世を快く思わずに盗賊のフリをして、兵士に襲わせているか。
後者であれば、盗賊に身を落とした民を調練するのに長けた指揮官がいるということだ。
後者であれば、優秀な人材として抱えるべき人材。
俺は息を吐いて、言う。
良師「俺の考えを述べても?」
張春輝「構わん」
良師「よっぽど腕の立つ盗賊として考えられるのが、何処かの県が領主様の嫌がらせのために兵を派遣している場合。調練に長けた存在が指揮官にいて、盗賊に身を落とした民を優秀な戦闘員に仕立て上げてる可能性が考えられます。前者であった場合は、こちらも全力を持って排除するべきですが、後者であるのならその者は更生させることができれば優秀な人材として、広宗に貢献してくれるでしょう」
張春輝「つまり角は、殺さず捕らえよと言うのだなその賊徒を」
良師「はい」
波翁「武芸者が手こずる相手に我が地の兵に出来ることなど…」
良師「領主様、現在広宗の抱えている兵はどれぐらいですか?」
張春輝「100人程度だがどうした?」
良師「その100人、俺に貸していただけないか?」
張春輝「角には、賊徒を捕える妙案があるのだな。良いだろう。この件は、角に一任しよう。それで良いな波翁?」
波翁「流石、春輝様のお子です。角坊ちゃんの成長を感じられて、嬉しい限り。この件、お任せいたします」
良師「ありがとうじいや。領主様の期待に応えるため励ませてもらう」
こうして、この日を無事に終えた俺は翌日親父が集めてくれた100人の兵が訓練する場所にやってきた。
???「整列しろ!全員、張角様に敬礼!」
良師「そう畏まらなくて良い。お前がこの100人を束ねる隊長か?」
???「はっ」
良師「名は何と言う?」
???「管亥と申します」
管亥は確か、優秀な黄巾党の武将の1人で、張角亡き後も黄巾党の頭目の1人として、活躍した人物だ。
しかし…。
良師「若いな」
管亥「治安を担う者である以上、年寄りでは務まりません。若いことが問題なのですか?」
いや、若いことが問題じゃない。
だが、彼らは治安を担う者としては経験豊富でも実戦となれば、すぐに足下を掬われるだろう。
良師「若いというのは強みであって弱みでもある。お前たちは人を殺したことがあるか?」
管亥「いえ、我らは治安を乱す者を取り締まるのが目的ですので、人を殺したことはありません」
やっぱりそうか。
俺も偉そうに言ってるが、人を殺した経験なんて平和な世界で生きて来たので勿論ない。
これは何かで見た新兵が陥りやすいと書いてあったことについて、話しているだけだ。
そこには、こう書かれていた。
『人を躊躇なく殺せる者は、心が強い。
俺は、初めて人を殺した時、そうしなければならなかったと分かっていても心が痛み、次の戦で躊躇した…その結果、敵の銃撃で手足を失った。
多くの者が責苦と戦いながら、己を奮い立たせそして、一握りが英雄に育つのだろう。
英雄と呼ばれる者に人を殺した者無し。
ただ、上司に恵まれるだけで、心を軽くすることはできる。
意思を明確にし誰かとそれを分け合えたなら。
俺にはそれができなかった』
良師「お前たちには、今完全な兵士となってもらう。今回の賊徒討伐では、取り締まるだけではすまないかもしれない。場合によっては、相手を斬り殺さなければならないだろう。だが、それはお前たちの意思ではなく俺が命じたことだ。全ての責任は俺にあり、責苦を受けるのも俺だけだ。お前たちは、広宗に住む民や親兄弟たちを守るために己が命を優先し、目の前の敵を全て倒してでも生きよ!良いな!」
俺はもうこの世界に来た時から覚悟はできている。
例えどれだけの人を殺す結果となろうともこの世界を助け、俺の願いを叶えてもらう。
家族との幸せな未来のためなら俺は鬼にも仏にもなろう。
管亥「何と御心の強い御仁だ。人を殺した事のない我らに対し、躊躇なく人を殺せと命じ、その責任は全て取るとおっしゃるとは…。張角様、この管亥。そのご期待に必ずや応え。その尊き御身を必ずや守ります」
大賢良師の言葉に胸を熱くさせた管亥の力強い言葉に、うおおおおおと鬨の声が重なり士気が最高潮となった。
良師「ありがとう。お前たちの生きた証、この張角忘れはせぬ。共に生き共に笑い共に死のう。我が子らよ!」
大賢良師は、こうして100人の兵の信頼を言葉で勝ち取り、賊徒討伐に向けて準備を整えたのである。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
少しでも楽しい・面白い・続きが見たいと思って頂けましたら、下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から評価してくださいますと執筆活動の励みとなります。
それでは、次回もお楽しみに〜




