物知りな王脩先生?
情報の御礼に氷鬼とケイドロという遊びを教えてあげた女の子と別れて、言われた道を真っ直ぐ進むとポツンと一軒家じゃなくて、ポツンと寺みたいなものが見えて来た。
良師「ごめんください」
住職「どちら様ですかな?」
おぉ、いかにも王脩先生という感じで物知りな人が出てきたぞ。
良師「王脩先生ですね?初めまして、女と子供だけの村についてお聞きしたくてやってきました」
住職「王脩先生?はて、そのようなものはここに居らんかったはず」
良師「へっ?貴方が王脩先生では無いんですか?」
住職「ワシはこの寺を管理している住職でございます。ここは身寄りのない子供たちを預かり養育する場所。大人はワシ1人ですが…王脩先生…王脩先…王脩…おぉ王脩くんのことか!それなら庭で本を読んでいる少年が王脩くんですわい」
住職の指差す方向では、1人で本を読んでいる少年が居た。
住職「少しお待ちくだされ、王脩くんは読書の時間を邪魔されるのを嫌がりますのでな。その間にこちらでお茶でもどうです?」
良師「それでは、御言葉に甘えます」
住職に案内された部屋で、出されたお茶を飲みながら王脩少年が本を読み終わるのを待っていた。
孤児院の子A「うわ〜ん。うわ〜ん」
住職「どうしたんじゃ?」
孤児院の子A「ぐすっ。ぐすっ。鬼ごっこしてたら転んで、怪我したの」
住職「それはいかん。バイ菌が入るまえに水で洗うのじゃ。その後に包帯を巻いてやろうな」
孤児院の子A「ありがと住職先生」
住職「なーに、子供は元気に遊びまわるのが1番じゃ」
あの住職は、こんな地に居るのにとても良い人だな。
うちにスカウトしたいぐらいだ。
いや、話をするだけなら何も問題はないのか?
なら、少し恩を売っておくか。
良師「お兄ちゃんに傷口を少し見せてくれるかな?」
孤児院の子A「お兄ちゃん、誰?」
住職「この方はな。王脩くんに用事があるそうじゃ。直ぐに包帯を持って…お前さん今…何をしたんじゃ?」
孤児院の子A「すご〜い!さっきまで痛かったのに全然痛くない!何、この水!何なのこの水!」
良師「これは符水と言ってね。良い子にしている子にはよく効く薬なんだよ」
住職「符水じゃと!?お前さん、そんなもの儒教を第一に考えておるこの国で滅多に使ってはならんぞ。しかし助かった事には違いない礼を言う」
あ!
そういえば、父に外では軽々しく使うなと言われていたのだった…。
しかも寺の管理をしてるって事はバリバリの儒教思想だよなぁ。
御役人の前に引っ立てられたり…。
住職「そう心配しなさんな。それに国も儒教だけしかダメと言って禁止している訳ではない。じゃが、その力は良くも悪くも人を惹きつける。符水を使えるという事は導術を使えるという事であろう?朝廷より人望を集めるようなことがあれば排除されよう。そうやって反省したのであれば、次からは淫らに見せるでないぞ」
この住職がめちゃくちゃ話のわかる人だから助かったけど迂闊すぎたな。
次からは気を付けないと。
良師「はい。反省してます」
王脩「道教ですか…興味深いですね」
住職「おぉ王脩くん。本はもう終わりかな?」
王脩「住職先生、外を見てください。もうすぐ暗くなります」
住職「もうそんな時間じゃったか…急いでご飯の支度をするのでこれで失礼する」
良師「料理なら俺に作らせてもらえないか。王脩少年から話を聞く御礼に」
王脩「僕に用事でしたか…それは大変お待たせして申し訳ありません。本を読んでいる間だけは邪魔をされるのが嫌でして」
良師「構いません。子供たちから王脩先生と呼ばれる才人とお話しできるのですから。そのために待つぐらいなんて事はありませんよ」
王脩「そんな先生だなんて立派なものではありません。森とはいえ危険が潜んでいないとは限らないので、1人よりも皆の方が何かあった時に守ってあげられるからまとめて面倒を見てあげているだけです」
良師「それも素晴らしい心配りだと思いますよ」
俺はそう言って、住職と共に厨房へと消えていった。
住職「裏の畑で育てている食材ならいくらでも使ってくださって構いませんぞ。なんせ、ワシの料理は野菜炒めばかりでしてな。子供たちには飽きられておりますゆえ」
良師「まだ子供ですから作ってくれる有り難みを理解できないだけですよ。それじゃあ、パパッと作りましょうか」
俺は1時間ほどかけて、料理した。
孤児院の子A「うわ〜何これ!何これ!めちゃくちゃ豪華な食事だよ〜!」
孤児院の子B「に、肉まである!それにこのドロっとしたのがかかってるのは米だ!」
王脩「これは見たこともない料理です。パンのようなものから甘いりんごの匂いが」
良師「本日のお品書き。白米にドロっとしたものに切った野菜や肉が入ってるのはカレーと言います。そして、パンの中にりんご時に蜂蜜を挟んだのは、デザートのアップルパイです。実はカレーの中にもりんごと蜂蜜を使ってるから相性は抜群だと思う。召し上がれ」
孤児院の子A「ふわぁ〜何これ〜ほっぺが落ちる〜おいしすぎる〜」
うんうん。
やっぱり、自分が作ったものを美味しく食べてくれる笑顔が俺は1番好きだな。
孤児院の子B「俺、これならいくらでも食える!」
孤児院の子C「ドロっとしたものだけが残っちゃったから飲む!」
孤児院の子D「外はサクサクなのに中はりんごと蜂蜜の甘さで、口の中が幸せで踊ってしまいそうや」
いや、君はどこの彦摩呂さんや!
まぁ、美味しそうに食べる笑顔を見れて、俺はそれだけで満足だけどな。
王脩「美味い…今までご飯は食べられたらそれだけで良いと思っていました。多くを望んではいけないと。ですが、心の底から暖かくなる料理もあるのですね」
そうだろうそうだろう。
料理には人を元気付ける無限の可能性が秘められてるんだから。
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