大興山の調査
袁紹が一度洛陽の都へと戻る日となった。
大賢良師から人目のないところで話がしたいと言われた袁紹は応じる。
袁紹「どうした?他の者には聞かれたくない話でもあるのか?」
良師「1つ袁紹殿に提案がある。俺が何進殿と張譲殿を天秤にかけていたことはもう周知の事実だろう。先ずは詫びる。どちらに付くのが良いか判断に迷っていた。今ならこれを利用して、1つ張譲殿へ将来的に大打撃を与えられる策を思いついた」
袁紹「気にするな。お前が向こうとこちらを天秤にかけていなければ、彼女たちからの証言も得られなかった。大打撃を与える策か…非常に興味深い。聞かせてもらおう」
良師「俺がわざと張譲たちに官軍が大興山の調査をするという情報を流す」
袁紹「ほぉ、それで次はどうする?」
良師「この情報が真実が張譲たちは探りを入れてくるでしょう。袁紹殿には、それが真実だとわかる動きを取ってもらいたい。例えば、実際に官軍を動かすとか…」
袁紹「ふむ…その次は?」
良師「信用した張譲たちは、龔景との繋がりを断つでしょう」
袁紹「だろうな。あえて危険は冒さないであろう」
良師「龔景という男は、出世欲に取り憑かれた塊のような男、張譲たちに切られたところで…」
袁紹「こちらが甘い蜜をやれば、青州ごとこちらに鞍替えさせる事ができるということか」
良師「はい。それにそれだけではありません。龔景に甘い蜜を与えた何進殿のお役に立つため、中常侍らのために働いた以上のことをするでしょう」
袁紹「中常侍派の切り崩しか」
良師「はい。こちらから引き抜かれた者たちを龔景を使って、取り戻す。張譲が顔を真っ赤にして怒り散らすのが見えませんか?」
袁紹「ふっ。ハハハ。確かにそれは面白そうだな。張角殿も随分と悪辣な策を思い付くものだ。貴殿は、村人の仲間たちを取り戻せて得をして、我らは龔景という奴らにとって毒となり得る存在を手に入れて得をする。損をするのは中常侍どもだけ。その線で進めるが良い」
良師「ありがとうございます。ですが、この件まだ何進殿には御報告しないでください。敵を騙すには味方からと言いますから」
袁紹「成程。承知した」
そして、大興山の調査当日。
龔景「これはこれは官軍の皆様、此度はどのような御用件でしょうか?」
袁紹「大興山に洛陽の都を脅かす野盗の根城があるとの情報を得たので調査しに参った洛陽総部尉の袁本初である。隠し立てするような事があれば、同じく罪に問うのでそのつもりでいるように」
龔景「そのような族がこの青州に…私どもの不手際で、官軍の皆様には大変ご迷惑をおかけして申し訳ございません。調査について、勿論全面的に協力させていただきます」
袁紹「その言葉が嘘ではないことを願おう。では、先ず野盗どもの根城について心当たりは?」
龔景「そのようなものらがいることも今知りましたもので…」
袁紹「嘘ではないな?」
龔景「嘘ではございません!そのようなものらが居れば、真っ先に捕まえて突き出しておりました」
袁紹「そうかそうか」
袁紹は龔景に近付き、耳元で囁く。
袁紹「お前も大変だな。鼠にこき使われて、捨てられるなんてなぁ」
龔景「!?な、なんのことでしょうか」
袁紹「まぁ、否定したい気持ちもわかる。あの鼠は甘い汁だけ吸って、全く還元してくれないからなぁ」
龔景「さ、さっきから何が言いたいのですか!」
袁紹「おっと、そんな大声を出したら周りも驚くであろう。俺は、ただお前のことを助けてやりたいだけだ。鼠どものために色々と裏でやっていた事には目を瞑ってやる」
龔景「し、信じて良いのですか?」
袁紹「あぁ。何進様は派閥の者たちに優しい御方だ。お前が悔い改め、何進様のために働くのであれば、今よりももっと良い地位に出世できよう。あ!そうそう、洛陽南部尉がまだ空白で誰にしようか悩んでいると言っていたなぁ」
龔景「野盗の根城は大興山の麓にあった村から少し先に行ったところにあります。それと中常…鼠に言われて、先に調べたのですがもうもぬけの殻でした」
袁紹「理解が早くて助かる。これから共に何進様を盛り立てて行こうではないか」
龔景「はい。私にできる事であればどんな事でも何でもやらせてもらいますので、推薦の方宜しくお願い致します」
話が付いた袁紹が顔を隠している大賢良師の元に来た。
袁紹「どうやら、賊は逃げたようだ。中に誰も居なかったと。残念だが貴殿の村人の仲間たちはもう」
良師「覚悟はしておりました。こちらの方でも一応確認させて貰っても構いませんか?」
袁紹「勿論だ。俺も奴の言葉を丸々信じたわけではない。だが、こちらに付くと決めた時、希望を見出したかのように目が光ったように見えた。貴殿の言う通り、出世欲の塊であるという認識に間違いはあるまい」
良師「なら嘘は吐かないでしょう」
袁紹「俺もそう判断する。それでも確認するか?」
良師「はい」
袁紹「ならば、こちらは後で調べるので先に行かれよ」
良師「御心遣いに感謝します」
袁紹「気にするな。こちらも貴殿の策のお陰で、青州を弄せず手に入れる事に成功した。アイツを洛陽南部尉という閑職に任命して、青州刺史の任を解き、孟徳と俺の友人である鮑家に任せようと考えている」
良師「成程、御友人なら安心ですね」
袁紹「うむ」
大賢良師は袁紹との会話を終え、連れてきた250人の兵を連れて、唐松から聞き出した野盗の根城へ向かうのだった。
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