大興山の調査を聞き、集まる十常侍
洛陽の都では十常侍などと呼ばれている中常侍たちが集まっていた。
趙忠「どうも何進の子飼いが動き出したようじゃ」
張譲「袁紹か…青州の大興山の調査だったな。何でも近頃都を騒がしている野盗の本拠がそこにあるとか」
夏惲「十中八九、表向きでしょう。裏で青州を奪う計画を立てているのでは?」
張恭「おいおいマジかよ。ふざけやがって。こっちも調査団を派遣して、暴走するのを止めるのが良いんじゃねぇか?」
宋典「事はそう簡単じゃないっすよ。今回の件には帝も賛成したって話っす」
韓悝「帝が?張譲殿、皇后様から話は聞いていなかったのですか?」
張譲「どうも王允が帝に直接働きかけたとのことだ。あの狸めが。中立のフリをして、こちらを罠にかけようとは…趙忠、知らせてくれた張角には感謝しておいてくれ。龔景の奴には十分と支援してもらったがこうなっては仕方がない」
趙忠「王允が中立のフリをした何進側なら、張角は中立のフリをしたこちら側という事だな。御礼は女で良いそうなので、今度はシモをきちんと制御できる商人に任せて、送ることにした」
栗嵩「その張角って奴が女好きで良かったですね。お陰で、向こうのやり取りはこちらに筒抜け、アイツを切る判断も素早くできました」
高望「しかし、そうなると女の調達が難しくなるのでは?」
張恭「だな、そういう奴ほど女が切れたら縁を切ってくるんじゃねぇか?」
段珪「張譲殿、その辺りはどうお考えなのです?」
張譲「案ずるな。アイツが抑えていた女は既にこちらが押収した。それを少しづつ送れば、数年は持つだろう。その間にまた協力者を作り出せば良いだけのことだ」
趙忠「ふむ。しかし、手紙で実は両方を天秤にかけていたと聞かされて、肝が冷えた。張角という得体の知れない男を今はまだ敵に回すべきではないと考えておったからなぁ。それどころか何進らの情報を流してくる辺り、こちらについてくれたと見て良かろう」
張譲「あぁ、前もって知らされて居なければ、証拠の隠滅もアイツを切ることもできず…ずるずると押収されて居たことであろう」
孫璋「そんな簡単に味方だと信用して良いものでしょうか?」
郭勝「孫璋殿は心配性だな」
張譲「孫璋よ。どうして、そう思った?」
孫璋「あまりにも時期が良すぎるかと」
趙忠「それは、張角が何進派閥とも通じて居たからでは無いか?」
孫璋「だとするなら、奴はまたこちらと何進とを天秤にかける可能性があると見るべきかと」
張譲「趙忠、確か張角の手紙では王允の養女を嫁にもらったと書いてあったのだな?」
趙忠「あぁ。その養女を通じて何進らと繋がり、今回のことを知ったので報告したと…そこには張角も袁紹から頼まれて同行すると書いてあった」
孫璋「何故、張角が同行する必要があるのでしょう?」
趙忠「何でも、張角が任されている開拓村とやらでは、龔景の被害に遭い青州から逃げ出してきたものが多く、確認のためだそうだ」
孫璋「やはり、安易に信用するのは良くないかと」
張譲「まぁ、こちらも簡単に信用したわけでは無い。だが、此度は救ってくれた事に違いはない。その事については、形だけでも感謝はしておくべきであろう」
孫璋「そういう事でしたら、異論はございません」
張譲「では、本日の会合はここまでに。各々も、くれぐれも何進の動きに注意せよ」
皆が頷いてその場を後にする。
この会合が開かれる数日前のこと、趙忠の屋敷宛に手紙が届けられた。
小童「趙忠様にお手紙が届いております」
いつものように十常侍と呼ばれる中常侍たちの会合から帰ってきた趙忠は、召使いの少年から手紙を受け取る。
趙忠「ふむ。張角からか…女の催促か?やれやれ」
手紙を開いて、趙忠は固まる。
そこには、袁紹が主軍となって青州の大興山を調査すること、村に青州刺史龔景の被害に遭った者がいることから自分も参加すること、黙って居たわけではないが王允の養女を嫁に貰ったこと、龔景と通じているのなら直ぐに動いた方が良いことが書かれていた。
趙忠「少し出てくる!」
小童「は、はい!」
趙忠は直ぐに張譲を呼び、張角からの手紙を共有した。
張譲「これが事実なら直ぐに判断を下さなければならんな」
趙忠「だが、時間はない。それとなく宮中を探らせ、官軍が慌ただしいようであれば事実と見た方が良かろう」
張譲「王允の奴にはすっかり騙された。中立のフリをして、何進に協力して居たとは…」
趙忠「怒りはわかるが堪えるのだ。それに、この事を知っていると仄めかすのもやめておけ。こうして、こちらも中立のフリをして情報を流してくれると友を得たのだ。完全に叩き潰せる段階まで、黙っておくのが良かろう」
張譲「わかっておる」
暫くして、張角の手紙が事実だと断定した張譲は人をやって龔景を呼び寄せた。
龔景「どうされたのです張譲様。ようやく俺のことを中常侍に推薦してくれるのですか?」
張譲「官軍が青州の大興山に調査に入ることがわかった」
龔景「はい?」
張譲「お前が好き勝手にしたことの結果だ。勿論、我々は何の関係もない。我らがお前と通じている証拠もない」
龔景「ま、待ってください!その言い方だとまるで俺のことを切るみたいじゃ無いですか!?機会を!挽回の機会を!」
張譲「せいぜい、これ以上醜態を晒さぬように宦官の調査に協力するのだな」
龔景「ま、待って!待ってください!張譲様!張譲ーーーーー!!!!」
こうして、龔景は十常侍から縁を切られたのであった。
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