大興山の調査を許可する
袁紹「おっとそうであった!一つ聞き忘れていた。大興山の麓の村で起こった惨殺事件について、知っていることは?」
唐松「龔景の私兵が野盗のフリをしてやった!」
袁紹「ほぉ。では、野盗に化けるための調達を行なったものがいるはずだな。お前ではあるまいな?」
唐松「お、俺がやった。俺にだってな。権威ある中常侍のお抱えになれる可能性がある話だったんだ!飛びつくに決まってるだろ!」
袁紹「間接的とはいえ、関わっていると…これで直ぐに死罪にしなかった張角殿に感謝するのだな。お前の話に嘘偽りが1つでもあったならその瞬間、俺が貴様の首を容赦なく刎ねてやろう」
唐松「ひ、ひぃっ。う、嘘じゃねぇ!本当に一つも嘘は言ってねぇ!大興山にアイツらの拠点があって、運が良ければ捕われてる生き残りがいる」
袁紹「成程…大興山は青州刺史となった龔景の統治範囲…だが証人の確保は急務ともいえる。それに我が父の治める冀州も他人事ではない。俺としても龔景にはできれば失脚の後、新たな青州刺史が立てられるべきと考えている。そこで、張角殿。これは噂として聞いた話なのだが、貴殿が開拓している広宗東の森の出身者には龔景の被害に遭ったと思われる者が多数居ると聞いた。良ければ、我が軍に同道していただき、大興山の野盗の根城に彼等の村から連れ去られた者か判別してもらうことは可能だろうか?」
すげぇ…凄みと睨みで龔景の方から大興山のことをペラペラとしゃべった。
しかも、噂とぼかしているが父上の話を聞いてのことだろう。
俺たちが同道する許可をさり気なく与えてくれた。
こんなに気が効くのに、官渡では曹操を相手に大敗したんだよな?
まぁ、俺が知る官渡は、袁家の子供たちが結束して曹操と戦う揚惇命先生の作品なので、袁紹はどちらかというと咬ませ犬で小物のイメージしかない。
史実で知ってるのなんて袁紹が曹操に負けたってことぐらいだ。
だからこんなに気を遣える人間があっさり負けたとは到底思えない。
それに、袁紹が上で曹操が軍師の方が中々恐ろしいのではないかと…これは2人に会って俺が抱いた感想だ。
ひょっとして、そんな世界線もあるのかも知れない袁紹が曹操に勝ち、曹操が袁紹の軍門に降るそんな世界線が…。
袁紹「ゴホン。張角殿?張角殿?」
おっと、意識を深く瞑想させすぎていたようだ。
良師「申し訳ありません。勿論、こちらから頼みたいぐらいです。宜しいでしょうか?」
袁紹「こちらがお願いしてるのだ。勿論、良いに決まっている。さて、では俺はこの遠征が重要であると何進様を説き伏せるので、張角殿も村の者たちにしっかりと話をして、遠征の準備を進められよ」
最後までこうして気を遣ってくれる辺り、俺の袁紹に対する好感度は爆上がりだ。
良師「はっ」
俺は深く頭を下げ、袁紹殿を見送るのだった。
洛陽に戻った袁紹は、何進・曹操・王允らと会合を開いていた。
この会合の主催者は何進である。
何進「よくぞ戻った袁紹よ。して、張角という人物について、お前はどう感じた?」
袁紹「恐れながら孟徳と同じく、敵に回せば厄介、味方にすれば心強いと評価します」
曹操「本初もそう思ったか。張角という男、並外れた洞察眼を持ち、いち早く松明係の負担を減らし、夜も明るい場所で本を読めるため、俺も毎日愛用している、机に置ける卓上松明とやらも設計した。反逆者として滅するようなことになれば、多くの損失は免れぬ」
袁紹「それだけではありません。張角という者、領内では子供から大人まで分け隔てなく接し、無償で読み書きを教えておりました。少し抜けているところも見受けられますが、敵にすれば厄介な存在となりましょう。中常侍に目を付けられにくい司徒様に協力していただき、縁を持てたことは大きいかと」
何進「2人がそれほど褒め称える好人物か…ワシにも娘が居れば、嫁がせたものを。いや、張角とやらが女であれば息子の嫁にできたのだがな」
王允「それはやめた方が良かろう。張譲らの甘言に乗り、宦官を擁護するお主の異母妹の皇后様とその異父兄の何苗が黙ってはおらぬ」
???「司徒様の申す通りかと何進様の娘であれば大層可愛く、張角とやらの心もがっしりと掴めると思いますが…賊どもに目を付けられては動きにくくなりましょう」
王允「呉匡、それは我が娘では張角の心を掴めぬと申しておるのか?」
呉匡「め、滅相もございませぬ。言葉のあやにございます」
何進「そう、詰め寄ってくださいますな司徒様。それで、王宮の動きは?」
王允「相も変わらずといったところか…このままでは近いうちに霊帝様は毒殺されよう。聡明な劉協様は廃嫡され、張譲らの思い通りにできる馬鹿な劉辯が即位することとなろう。まだ両方とも幼いゆえ、後10年もすればといったところであろうか」
何進「猶予は10年か…しかし言い換えれば張譲らはいつでも霊帝様を毒殺できる状態ということか」
王允「おそらくな」
袁紹「そのことについて、1つ張譲を失脚できる可能性のある重要な証人を張角は握っております。ですが、その者暗殺されることにひどく怯え、張角の元に置いておき、情報源とする方が良いかと。そこで、他にも証人になり得る者が大興山に囚われているとの事です。こちらの解放を張角と共に行い。張角がこちら側だと中常侍に見せ付けるのも良いかと」
何進「ほぉ。それは面白い、袁紹よ進めるが良い」
袁紹「有難き」
こうして、大興山の調査の許可が正式に降りるのであった。
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