広宗城に呼ばれる
宝と梁が手洗いを済ませて、椅子に座る。
張宝「ごはん、ごはん、角にぃのごはん」
張栄子「楽しみにしてるところ悪いけど今日は私が作りました」
張宝「…嘘。角にぃのごはんが食べたい!」
良師「宝!母上が愛情を込めて作ったものを食べたくないみたいに駄々をこねるな。きちんと残さず食べたら夕食は俺が食べたいものを作ってやる」
張宝「ほんと!角にぃのごはん、晩に食べれる?」
良師「あぁ、約束だ」
張梁「げっ!楽しみにしてたのにババアの飯かよ」
良師「梁!今の発言は聞き捨てならない!母上に謝れ!そのような汚い言葉遣いをしていてはろくな大人にならないぞ!」
張梁「…ご、ごめんなさい」
張栄子「良いのよ。角も私のために怒ってくれてありがと」
良師「良くはない!人の心を傷付ける人間はろくな大人にならない!俺の前で、次にそんな口を聞いたら梁とは、もう遊んでやらないぞ」
張梁「それは絶対に嫌だ…母さんごめんなさい。もう絶対に言わないから許してください」
張栄子「私は本当にもう…謝ってくれたし」
良師「宝!」
張宝「はい!」
良師「梁が汚い言葉を使ったら知らせてくれ。知らせてくれたら御褒美にアップルパイをあげよう」
張宝「アップルパイ!?知らせます!すぐに知らせます!」
良師「これで梁も自分の言った言葉に責任を持つんだ。わかったな?」
張梁「は、はい!」
人の悪口や陰口ばかりを叩く人は、心が荒んでいく…俺は大事な弟にそう言う大人になってほしくはない。
作ってもらえるのが当たり前…何かをしてもらうのが当たり前…感謝の気持ちを忘れた人間は誰からも感謝されない寂しい人間になる。
良師「久々の母上のご飯、いただきます。!?母上、かなり腕を上げましたな」
張栄子「分かるの?」
良師「えぇ。この汁物、育ち盛りの宝や梁のために野菜を多めに入れ、栄養に気を遣っている」
張栄子「ふふっ。料理の先生に褒められて私も嬉しいわ」
ここに転生させられたばかりの頃の母の料理はお世辞にも美味しいとは言えなかった。
だが、作ってもらったものを美味しくないから食べたくないなどと言うのは失礼だ。
そこには、自分の時間を削ってまで家族のために用意してくれた確かな愛情があるのだから。
良師「トンカツにもキャベツの千切りが添えられている」
張栄子「といた卵に小麦粉を塗して油で揚げるなんて発想、どうやって思いついたのかに興味があるけれど。そこにちょっとヘルシーな千切りキャベツを添えることも」
良師「まぁ、宝と梁の様子を見る限り、マヨネーズで、その優しさも無に返されてるが」
張栄子「そうそう、このマヨネーズよ!卵の黄色い部分と酢、塩と油でできるなんて」
良師「1番、簡単な作り方ではあるが。結構罪作りな味であろう」
張宝「うん!私、なんでもマヨネーズかけるよ」
張梁「俺も俺も!」
なんでもかけたら素材の旨みを消してしまう気もするが…まぁそれで美味しく食べられるなら今は何も言わないでおこう。
張宝「ごちそうさまでした。角にぃ、あそぼ!あそぼ!」
張梁「ごちそうさま。あ!姉ちゃん、ずるい!兄貴、俺とも遊んで!遊んで!」
張栄子「本当に人気者ね角は」
良師「少しだけな」
その時、扉をノックする音が聞こえる。
張栄子「はーい、どちら様ですか?」
波翁「奥方様、ワシです。波翁です。春輝様と王宏様のお話が終わりましたので、坊っちゃまを呼びに参りました」
張宝「角にぃは、今から私と遊ぶの!」
張梁「兄貴は渡さないぞ!」
俺の可愛いナイト…いやただ遊びたいだけの2人に両腕をガッチリとホールドされる。
張栄子「こらこら2人とも、角を困らせないの!」
良師「父上と話すことがある。それが終わったら遊ぼうな」
張宝「ほんと!?直ぐに帰ってくる?」
張梁「絶対絶対に遊んでくれる?」
良師「あぁ、父上との話が終わったら宝と梁と遊ぶ」
張宝「夕食も?」
良師「あぁ、作る。食べたいものをリストアップしておくんだぞ」
張梁「よっしゃあ!姉ちゃん、食べたいもの書こうぜ」
張宝「うん!」
波翁「坊っちゃまは、良い父親になりますな」
良師「気が早いじいやだ」
だって俺の妻はまだ6歳ぐらいの少女だぞ。
絶世の美女になるらしいけど…。
波翁に付いて、広宗城に入り、応接室へと向かう。
張春輝「帰ってきていたのに直ぐに迎えてやれなくて済まなかったな角!」
良師「父上もお元気そうです何よりです」
張春輝「お前もな。そうだ!母さんが怒っていたぞ。前、ここに呼ばれていた時にどうして家に顔を出さなかったのかってな」
良師「はい。先程、そのことで怒られておりました」
張春輝「はははっ。あの時は俺も気を利かせず申し訳なかった」
良師「父のせいでは…」
張春輝「それで、お前が開拓民たちの元を離れて領都に来たのは、何か問題があったからであろう?」
良師「俺、そんなに分かりやすいですか?」
張春輝「何かなければ帰ってこない程度には…な」
良師「そうですか…。では、単刀直入に言います。中常侍の趙忠より、約束した通りの女が10人送られてきました。どれも調べたところ程遠志と所縁のある者たちだということがわかりました」
俺は父に今回来訪した理由を話し始めるのだった。
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