閑話休題②商人の処遇について話し合う十常侍
時は十常侍の趙忠が広宗に交渉へ向かってから数週間後のことである。
張譲「張角とやらから手紙が届いたと?」
趙忠「うむ」
夏惲「御礼状を送ってくるなんて殊勝な心掛けじゃ無いですか?」
郭勝「それにしては趙忠殿の顔色が優れないようですが…」
孫璋「まさか、更に女を要求してきたとかですか?」
畢嵐「何と欲深い男なのだ!」
栗嵩「それなら、寧ろこちらの思惑通りと趙忠殿もニヤつくことでしょう」
段珪「ということは…まさか誰かやらかしたとか?」
張恭「アァ?誰がやらかすってんだよ?」
韓悝「それは…」
宋典「アイツっしょ!寧ろ、アイツなら俺的には万々歳っすけど」
張譲「内容は確認したのだな?」
趙忠「うむ…思った以上に良くない…」
張譲が趙忠から手紙を受け取ると内容を拝読する。
良師『親愛なる友人の趙忠殿へ。この度は素敵な贈り物をありがとうございます。少しお聞きしたいのですが、そちらでは贈り物を汚して贈るものなのでしょうか?汚した者の処分はどうお考えでしょうか?こちらで処理しても問題ないでしょうか?色々と質問が多くて大変申し訳ございません。今までこのようなことされたことは無かったので。それが宮使えの当たり前なのかと思い田舎者が筆を取った次第です。広宗東の森官吏張角より』
張譲「これは失態だな…」
趙忠「あぁ。よりにもよって道中で女たちを犯して、そのまま献上するなど…即刻首を刎ねて、連絡を断たれても何も言えん。だが、この張角という男はわざわざ手紙でこちらの確認を取っている。ここで、我々が処分を引き受けると言えばどうなると思う?」
夏惲「向こうは本当に処分されたのか、帝にお伺いを立てる可能性があると?」
郭勝「それは、色々とまずいのでは?」
孫璋「霊帝はこちらの思惑通りに動いてくれない時もある」
畢嵐「今は気付かれない程度に少量の毒を盛って弱らせている」
栗嵩「公務に出るのも辛そうであるからして、知れ渡ることは無いだろうが…」
段珪「だからといって、知られないとも限らん」
高望「確かにその通りかと」
張恭「あぁ!もうまどろっこしいぜ。だったらよ!贈答品のことは誠心誠意謝罪してよ。おいたをした奴の処分は向こう側に任せちまえば良いんじゃねぇか?」
韓悝「そう簡単に行くでしょうか?」
宋典「そもそもの話なんすけど…もうこの際、アイツと縁切ったら良いんじゃ無いっすか?」
張譲「宋典よ。それができればワシも苦労はせん。張角とやらを繋ぎ止めるためには、女が必要だという判断には変わりはないのだな趙忠?」
趙忠「少なくともワシはそう考えている」
張譲「なら、ヤツはまだ切れん。その商人の処遇だけ向こうに任せ、ヤツには今回の失態の責任を取らせ、また向こうが求めてきた時に女を都合させる」
趙忠「それで、今は凌ぐしか無かろう」
張恭「でもアイツがそう簡単に割り切れるか?テメェのとこの商人が悪さしたからその処罰は向こうに任せた許せなんて話をよ」
宋典「無理っす。アイツのことだから『そんなことされたら女を都合つけるのにも難しくなるかも知れません』とか張譲殿に言うだけっすよ」
張譲「では、処罰はこちらで…」
趙忠「それはやめるべきだとワシは考える。張角という男はかなり賢い人物のように思う。逃げの言葉で信頼を勝ち取るのは不可能であろう。ここはスパッと切る判断をするべきと考える」
高望「実際に張角とやらとお会いした趙忠殿がそう判断するならば、そうなのでしょう」
韓悝「にしても我らをこうして手玉に取る張角とやらは一体何者なんですかね?」
趙忠「父の影に隠れてるつもりだろうがあれは傑物だ。できれば何進たちに取り込まれるのも帝と会わせるのも避け、こちらの目の届く範囲に留めおきたい」
夏惲「でも何進派閥は、司徒の王允が養女を張角の嫁に出したと噂になってますよ?」
畢嵐「いや司徒の王允は、何進派閥ではなくどちらかというと帝次第でどうにでもなる存在だ。そこまで警戒しなくても良いだろう」
高望「それにしても、何進派閥からも女を融通され、取り込もうとされる辺り、張角という男は女を差し出されれば誰にでも尻尾を振るというのは、このことからも明らかでしょう。尚のこと、アイツを切るのはまだ早いかと」
趙忠「ふーむ」
張譲「どうした趙忠?」
趙忠「どうにもワシが会った張角という男と印象が結び付かないのが不気味な気がしてならん」
張恭「そういうこともあるんじゃねぇか?仮面被ってる奴ならよ」
趙忠「仮面か…(こちらを的確に脅すような男が遊びの女を要求などするのか?何か他にもあるのでは?あの村の男女比率は男7の女3ぐらいであろう。純粋に女を欲していることだけか?)」
張譲「趙忠!どうした?」
趙忠「いや、ワシの気のせいのようだ。それで、結局どうする?」
張譲「アイツはまだ切らん。だが、罪を犯した商人の方には、張角の裁きを受けてもらうとしよう」
趙忠「ワシもそれが良いと考える。張角という男は油断ならん存在だ。後に敵対するとしても今は情報収集を最優先にするべきであろう」
張譲「では、俺はアイツに次はないと念を押しておくことにしよう」
張譲は再び龔景の元を訪れていた。
龔景「これはこれは張譲様。もう、あの話を果たしてくださるとは、感謝致しますぞ」
張譲「勘違いするなよ龔景?お前のところの商人が道具に手を出して、向こうからお怒りがきた。ワシは言ったはずだ。失敗は許さぬとな?」
龔景「な、なんと!?(あの野郎が!なんてことをしてくれたのだ!俺の中常時への昇進をこんな形でふいにしやがって!)」
張譲「今回は、商人の首を向こうに差し出すことで、話はついた。向こうは今後もこちらとのやり取りをお望みだ。お前も首の皮は一枚繋がった。だが、次はないぞ。そのことをゆめゆめ忘れるなよ?」
龔景「は!はい!」
こうして、唐松とやらの処罰は決定されたのである。
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