間話休題①十常侍と呼ばれる者たち
中常時たちが一同に介していた。
彼らの内訳は、頭を務める張譲、副頭を務める趙忠、幹部の夏惲、郭勝、孫璋、畢嵐、栗嵩、段珪、高望、張恭、韓悝、宋典の合わせて12人。
概数を取って十常侍と呼ばれる12人の中常時たちである。
張譲「して、趙忠よ。広宗という田舎で急速に力をつけている張春輝とやらはどうであった?」
趙忠「ふむ。今の広宗を田舎と呼ぶのは間違いかもしれん。教育に衛生、都よりも活気に溢れていた」
張譲「お前がそこまで褒めるとは…」
夏惲「そこまでの御仁なんですかその張春輝って広宗の領主は?」
趙忠「いや…ワシが危険視しているのは張春輝の嫡男として同席した張角という人物の方だ。張春輝という男は良くて平凡。我らにとって害となることはないだろう。だが、張角という男は違う。あやつは平然と脅しまでかけてきた。とても16歳のガキには思えん」
郭勝「へぇ…なら出る杭は早いうちに叩いておかないとですねぇ」
趙忠「それができれば苦労はせん。アヤツはこちらが理由を付けて渡そうとした賄賂を有難く受け取り、その金を長江の中下流域で発生した大規模な旱魃の被害に遭われた民のために使うように帝へ返金致しますときた。それがきちんと使われているか帝にお伺いを立てると脅しまで付け加えてな」
孫璋「な!?我らが相手を取り込む際の常套手段に対して見事に切り返してきたということか!?危険だ。そいつはかなり危険だ」
趙忠「だから、ワシはそう言っている。敵対するべきではない…寧ろ味方で居てくれた方が心強いと言える」
畢嵐「でも趙忠殿のことですから、二の矢の準備もしてたんでしょ?」
趙忠「あぁ、張角という男は絶倫…いや絶倫の中の絶倫らしい…」
栗嵩「趙忠殿も冗談なんて言うんですね…いやマジっすか!?」
趙忠「あぁ、大真面目だ。それに張角という男は激しいのが好きだそうだ。村民に性癖がバレるのが嫌で、今まで手を出せなかったそうだ」
段珪「ということは女で言うことを聞かせられそうですな」
趙忠「話をしてみた感じ、ワシもそう感じたので、10人の女を手配する約束をしたら大変お喜びであった」
高望「10人の女ですか…多いですね」
趙忠「これでも頑張った方だ。最初は向こうから15人の女を要求された」
張恭「15人の女だと!?なぁ?本当にそんな女好き野郎が村民に手を出さなかったってのか?」
張譲「いや…そういう男ほど体裁を気にするものだ。手を出さなかったのではなく、噂が広まるのを恐れたのだろう…それだけでもこちらが女を提供すれば何進に取り込まれる事はなかろう」
韓悝「そういうものですか…ですが10人もの女をどうやって準備するんです?」
張譲「ワシが飼っている男に見目麗しい女を集めている奴がいる。激しいのが好きなら多少壊れてる女でも良かろう。用意できないか頼んでみるとしよう」
宋典「ぐへぇ。俺、アイツ嫌いなんすよ。野心ギラギラで、俺たちに取って代わろうと企ててるような奴っすよ。頭も馬鹿なくせに」
張譲「まぁまぁ、そう言ってやるな宋典。こういう時に使える駒として、馬鹿でも役に立つ。それに我らと敵対する何進のところにいる文官どもを女に溺れさせ、女と寝たいがためにこちらに情報を流す影を作り出してくれる良い馬鹿なのだからな」
宋典「確かにそのことには感謝してるんすけど…アイツマジで悪知恵だけはあるからいつまでも抱えるのは危険だと思うんすよ」
張譲「ふむ…いつもの宋典の勘か…無視はできんな。そのうち何かしらの罪をでっち上げて、処分することを検討しておこう」
張恭「良かったなぁ宋典。お前、張譲殿から捨てられんじゃねぇかってビクビクしてたもんなぁ?」
宋典「そ、そんなビクビクなんてしてないっすよ」
張譲「ワシがここにいるお前たちを見捨てる事はない。お前たちは、ワシの駒と違い同士だ。同士を見捨てる事は絶対にせんよ」
韓悝「なら、とりあえず張角って危険人物は女で取り込めると…なら張譲殿。アイツとのやり取りお願いしますよ」
張譲「うむ」
それからしばらく経ち、張譲と龔景は対談していた。
龔景「これはこれは張譲様。本日はどのような御用件で?」
張譲「うむ。龔景よ。急で悪いが女を10人ほど用意して欲しい」
龔景「ハハハ。張譲様も好きものですなぁ」
張譲「これ勘違いをするな!ワシにそれはない。どうしてもこちら側に引き込みたい奴が居てな。そいつが大層女好きだそうだ」
龔景「へぇ張譲様が引き込みたい奴ですか…まぁ詳しくは聞きません。それで、どう言った女が良いんです?」
張譲「激しいのが好きなのだそうだ」
龔景「成程…精神が壊れて使い物にならないですが、調教済みの女が10人ほど居ますね。それで良いですか?」
張譲「あぁ、構わない」
龔景「わかりました。張譲様、あの件本気で考えてくださいよ」
張譲「あの件?」
龔景「もしかして忘れたんですか?俺を中常時に取り立ててくれるって話です」
張譲「あぁ、勿論覚えている。そうだな。これが上手い事運べば、他の者たちからも推薦を得られるようにしよう」
龔景「言質取りましたよ。無かった事にはしないでくださいよ」
張譲「あぁ、勿論だ」
龔景「じゃあ、こちらで運ぶ奴も手配しとくんで、よろしくお願いしますよ張譲様」
張譲が帰った後、龔景は贔屓にしている商人の唐松を呼ぶ。
龔景「この運びは絶対に成功させろ。良いな?」
唐松「分かってます。なんたって、龔景の旦那が中常時に取り立てられるかもしれない重要な案件なんですから」
龔景「分かっているなら良い。失敗は許さん。場所は、張譲様からお聞きせよ」
唐松「ヘイ!」
そして、この唐松が盛大なやらかしを起こすとは、この時の龔景は思いもしなかったのであった。
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