この村は常軌を逸している
荀彧が村に帰ると大賢良師は、程鄧賊に読み書きを教えていた。
程遠志「しまった!今日は大賢良師様の夜間学校の日じゃねぇか!」
鄧茂「急いで俺たちも参加するっす!」
荀彧「夜間学校?」
管亥「張角様が始められた施策の一つで、文字を読み書きできないものたちに週に2日ほど教えているのです」
荀彧「成程。管亥殿は参加されなくて宜しいのですか?」
管亥「ハハッ」
管亥は乾いた笑みを浮かべ、続きを話す。
管亥「このなりですし、読み書きできないように見えますよね…私たちは広宗の領都で兵として取り立てられる時に張角様のお父君の張春輝様より文字の読み書きを教えて頂いたので、必要ないのですよ」
荀彧「これは、僕としたことが見た目で人を判断してしまい、大変失礼致しました」
管亥「いえ、お気になさらず。それでは、私は村を見回る仕事がありますのでこれにて」
荀彧「はい(張角殿は常軌を逸している…。読み書きは多くの民が習いたくても金がかかるので、諦める。習えるのはお金を持っている官僚の子ぐらいのものです。それを無償で教えるなんて…。どんな事を教えているのか少し興味は湧きました)」
荀彧は1番後ろの席に座った。
良師「であるからして、この文は『お母さん、僕の話を聞いてよ。お父さんが僕の分まで食べた』となる。分かったか?」
程鄧賊A「あ!こっちが『お母さん』で、こっちが『お父さん』だったのか…くぅ惜しかったぜ」
良師「では、次の問題は…ちょうど良いところに。荀彧殿、彼らに何か問題を出してくれぬか?即興で計算問題を1つ」
荀彧「即興で計算問題ですか?(あまり難しそうなのは、答えられないでしょうし、あまり簡単すぎるのもどうでしょう)では、1つだけ。お母さんが少年にリンゴを3つ買ってきてとお使いを頼み、100元を渡しました。リンゴは1つ20元です。少年はリンゴを買った帰り道にお菓子を5つ買ってしまいました。お菓子1つ5元です。少年の手元には今、いくら残っているでしょうか?」
良師「ほぉ。これは中々良い問題だ。だが皆、安心して欲しい今まで皆が習ってきた計算方法でこの問題は解ける。では、今から5分与える。頑張って答えを導き出すように」
荀彧「(王都の人間でこの問題に答えられる民衆はどれほどいるでしょう…それをここでは簡単に答えられるですか…)」
程遠志「手持ちは100元で…リンゴは1つ20元だろ?で、お菓子が1つ5元ってことは、ははーん解けたぜ。簡単だな」
鄧茂「程遠志の兄貴、もう解けたんすか!?アッシはまだ…あ!成程、リンゴが3つで20×3の60元だから…分かったっすよ!」
程鄧賊A「流石、程遠志様と鄧茂様だ。えーっと、お菓子が5つで5×5で25元…お!分かったぜ!」
程鄧賊B「最後に100元から60元と25元を引いて、答えは…良し何とか書けた!」
荀彧「(割と農民の皆さんにとっては、難しい問題は出したつもりなのですが…ほんとうに解けたのですか?)」
良師「そこまで!5分が経過した。試験となるとこんなに時間を与えられないが、ここは学ぶ場なのでしっかりと皆んな頭を使えたようで何より。答え合わせといこう。先ず、少年の母親は少年にリンゴを3つ買ってきてとお使いを頼んだ。リンゴ3つで、何元になる程遠志!」
程遠志「リンゴ3つで60元です!」
良師「正解!そこから少年は帰り道でお菓子に目を奪われて、5つも買ってしまう。お菓子5つで何元だ鄧茂!」
鄧茂「お菓子5つで25元っす!」
良師「正解!ここまで解けたら、後は簡単だな。手持ちの100元からリンゴ3つの値段を引いて、手元に40元が残り、そこからお菓子5つの値段を引くと、答えは15元となる」
程遠志「よっしゃー!正解だぜ!」
鄧茂「アッシも何とか正解っす」
程鄧賊たち「合ってた…ふぅー子供に笑われずに済むぜ」
荀彧「そんな馬鹿な!?」
良師「どうかされましたか荀彧殿?」
荀彧「あ!いえ、かなり応用を絡めた難しい問題を出したつもりでしたので」
良師「確かに、まだ計算問題は足し算と引き算と掛け算しか教えていない。ここに割り算が加わるような事があれば答えられなかったかもしれん。それに文章での計算問題は初めての試みであった。だから俺も面白い問題だと思ったのだ」
荀彧「(張角殿は、こんなにたくさんの人々に文字を教えて、洛陽の都に文官見習いとして潜入でもさせようとしているのでしょうか?いや、そもそも文字の読み書きを無償で教えて、一体何を企んでいるのでしょうか…)」
良師「ハハハ。荀彧殿、そう警戒せずとも良い。文字の読み書きが出来れば、自分で物事を判断できる。洛陽の都に居られる帝様からの布告の内容も理解できよう。無知で利用されるままの民であってはならないと思うだけのこと」
荀彧「(民にも選ぶ権利があるということですか…確かに一理あります。そもそも、皆が文字を読めた方が帝様としても嬉しいでしょう。ですが、民の無知を利用している宦官どもや何進殿たちは快くは思わないでしょうね)」
良師「では、本日はここまでとする。各々、しっかりと頭を休めるのだぞ」
程遠志「よっしゃー飯だ飯!大賢良師様、今日は甘いものが食べたいぜ!」
良師「成程。甘いものか…ふむちょうど良い。アップルパイとやらを作ってやろう」
鄧茂「あっぷる?」
程遠志「おっぱい?」
良師「お前らは何を言うてるのだ?アップルパイだ!リンゴをパンで包んで蜂蜜をかけた簡単なものだ」
荀彧「甘い料理を作る?簡単?(常軌を逸しているのはこの村では無く目の前にいる張角殿の方であったか)」
この後、あまりの甘さに夫婦共々虜になってしまう荀彧と唐麟杏であった。
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