憧れの人
両親を亡くして、早いもので3年6ヶ月の月日が流れた。
俺は高校の卒業と同時に医大への進学を諦め、ダブルワークが可能な配送大手のハマゾンに就職した。
そんな忙しい毎日でも月に一度のコスプレ会場へ足を運んでいた。
その目的の一つが。
満成「おぅ良師!元気にしてたか?」
良師「満成!って先月も会っただろ!」
元義「今日も黄巾党コスプレするよな?」
良師「あぁ」
葉切「最近、俺らも認知されてきて、女性のファンが黄巾党に参加してくれて嬉しい限りや」
こうして、未だに繋がっている友人たちと会えることだ。
そして、もう一つが俺たちが黄巾党のコスプレで会場に現れると。
女性ファンA「キャー張角様よ〜♡そのお隣には、張角様の腹心と言われた熱心な信者の馬元義様に張曼成様に波才様。今日は、揃ってる姿が見られるなんて最高よ〜♡」
女性ファンB「波才様〜♡こっち向いて〜♡」
このように黄色い声援が聞こえるようになってきたのだ。
良師「我が大賢良師張角である」
女性ファンC「一生、付いて行きます張角様〜♡」
満成「蒼天既に死す。黄天当に立つべし」
元義「蒼天既に死す。黄天当に立つべし」
葉切「蒼天既に死す。黄天当に立つべし」
女性ファン全員「蒼天既に死す!黄天当に立つべし!」
こうして大盛況のまま終わった打ち上げでのこと。
満成「お!揚惇命先生が更新してる」
良師「揚惇命先生?」
元義「最近になって『えっ俺が劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるために尽力します』という三国志の作品を無料サイトに挙げている作家さんだ」
良師「へぇ。でも黄巾推しの俺たちが黄巾を倒した元凶とも言える朝廷側の作品はあまり馴染め…」
葉切「良師ちゃん、揚惇命先生はなぁ。しっかりと黄巾党にも焦点当ててくれてるんや。寧ろ、一章、丸々黄巾党の話や。張角推しの良師ちゃんにこそ読んでもらいたい作品や」
葉切の奴は関西の大学に行ってから言葉尻が関西っぽくなってきたな。
それにしても、張角にも焦点を当ててる三国志の作品か。
良師「URL送っておいてくれ。帰ったら読んでみる」
満成「もう送っておいた」
良師「はやっ!」
帰って、俺は一章の部分を読んだ。
結論から先に言うとハマった。
明日も仕事だってのに、今更新されてるところまで一気読みしてしまった。
特に劉備の弟として転生した義賢が何度も試行錯誤を繰り返し、張角たちを救うところが最高に良かった。
生かされたということは、今後も絡んでくるだろう。
それに何より、目の付け所が面白い。
揚惇命先生の作品の更新を毎日の楽しみに、さらに2年もの月日が流れた。
高校生だった俺も社会人5年目の23歳だ。
そして、揚惇命先生の作品は佳境を迎えていた。
そんな矢先、配達先の名前を目にした俺は驚愕する。
そこには確かに届け先の名前に『揚惇命』と書かれていたのだ。
チャイムを鳴らす手が震える。
この2年、俺は辛い時も悲しい時も揚惇命先生の作品に救われてきた。
憧れの人なのだ。
揚惇命「はーい。今出ます!」
俺より少し年上かな?
眼鏡をかけ、袴のようなものを着た人が出てきた。
良師「揚惇命先生でしょうか?俺、大ファンなんです!毎日『えっ俺が劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるために尽力します』が更新されるのを楽しみにしてます!サイン、お願いします!」
揚惇命「あ。うん。ありがとう。そのここでは、やめて欲しいかな。良かったらお茶でも?」
良師「良いんですか!では、お邪魔させてもらいます!」
本人を前にして、俺は自分が止められず気付いたら家に入っていた。
こんなの普通、頭おかしい奴だと思われるよな。
でも止まらない俺。
良師「俺の名は大賢良師です!先生、聞いてくださいよ!呪術が出たあたりから何か違うとか言い出す奴がいて、めちゃくちゃムカついたんすよ。だって、今より昔の方が呪術信仰だったわけじゃ無いっすか!俺の推しの張角だって、霊験水で傷を治したわけじゃ無いっすか!」
揚惇命「あぁ、うん。そうだね。御礼にサインでもしようか?勿論、配達の紙にじゃ無くてだよ」
良師「いいんすか?是非、これにお願いします!」
俺は揚惇命先生の作品がいつか本になる日を夢見て、こうやって毎日印刷して、持ち歩いている。
それに、揚惇命先生が嬉しそうにサインしてくれた。
俺は間違いなく揚惇命先生が初めてサインを書いてくれた特別な人になれたのだ。
そこで俺は時間を見て、驚愕する。
良師「次の配達先が迫ってるのでこれで失礼します!」
クッソー。
次の配達先が遠方じゃ無かったらもっと揚惇命先生と語り合いたかったのに!
俺は深夜配達の時は、SAによって、コーヒーを飲みながら揚惇命先生の作品を読む。
良師「終わってしまった。この先、もう少しエピローグが続くそうだが終わってしまった」
毎日の楽しみが消えてしまう言いようのない喪失感。
そして、義賢の最期はやっぱり死んでしまった。
いや、元の世界に身体はあるわけだから帰ってしまったの方が正しいか。
良師「さて、今日も張り切って、仕事しますか!」
な!?
何で、トンネルの道の真ん中にお婆さんが!?
俺はハンドルを切った。
目の前にはトンネルの壁。
その前に横転するトラック。
腕に力が入らない。
ヤバいわコレ。
ごめんな遼。
ごめんな綾。
兄ちゃん、もうダメかもしれない。
???「かくにぃに」
???「かくにぃ」
???「まぁ、かくったら、弟と妹の子守りは任せろなんて、いち早く草原に駆けて行ったと思ったら寝ちゃってるわね」
???「かくも疲れたのだろう。少し寝かせてやると良い」
俺が目を覚ますとそこには亡くなった両親と未だ目を覚まさず植物状態で眠る弟と妹が。
あぁ、俺死んだんだな。
???「はーい!そこ勝手に死なないで!ハァ。ったく!普通、先ず魂がこっちにくるの!何で、いきなり定着するかな。ゴホン。はぁーい」
良師「パラレル甘氏!?」
パラレル甘氏「あれっ?私名乗ったかしら?まぁ、知ってるなら早いわね。私こそ三国志の女神」
良師「何で、揚惇命先生の登場人物がここに?それに俺、両親と弟と妹と居たはず」
パラレル甘氏「あぁ、義賢ちゃんの作品を読んだのね。義賢ちゃんを導いたのも私よん。ってことで、義賢ちゃんが救ってくれた世界とは別の世界なんだけど。朝廷の腐敗が深刻で、このままだと国の人全員死んじゃうのよ。ってことで、この世界救ってくれる?御礼に、私に叶えられるお願いなら何でも叶えてあげるよん!」
うん。
さっぱり頭が付いていかない。
でも、コレが夢なら。
良師「俺の願いは両親と弟と妹と幸せに暮らすこと」
パラレル甘氏「了解。契約成立ね。この世界を救ってくれた暁には、貴方の願いを叶えてあげる」
こうして、俺は再び意識が沈み。
パラレル甘氏「あ!言い忘れてたけど。貴方の特殊能力は、病の治癒!触れた相手の病を特定して霊験水を用いて癒すことができるからそれも駆使して、頑張ってね!」
そういう大事なことは先に言え!
あぁ、揚惇命先生が毎回パラレル甘氏に義賢を通じて、ツッコミしてた気持ちがようやくわかった。
この女神、ポンコツだ。
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それでは、次回もお楽しみに〜




