広宗動乱
荀緄から手紙を受け取った張春輝は、波翁やこの地に古くから住む馬木工と共にその対処に追われていた。
張春輝「この手紙の内容をどう思う波翁?」
波翁「張春輝様の懸念は、兵を引き連れて行くが戦争しようというのでは無く亡命という点についてでお間違えありませんかな?」
張春輝「あぁ。荀家と言えば、何進様にも十常侍にも良い顔をしてきた…その際たるが」
馬木工「息子を張譲の養女に差し出し、領地の安全を図ったことでしょうな」
張春輝「あぁ、馬木工殿の言う通りだ。これを言葉通り受け取り招き入れて荀家に反旗を翻されれば、王宏様より預かっているこの広宗の地を失いかねん」
波翁「かと言って、亡命と言ってる以上、簡単に拒むこともできないということですな」
張春輝「あぁ。だから、どうしたものかとな」
馬木工「まぁ、拒んで器が小さいと思われるぐらいなら受け入れて器の広さを見せてしまいなされ」
張春輝「成程…やはり馬木工殿も呼んでおいて良かった。覚悟は決まった。国境を守護する兵たちに荀家の者たちを止めずに通行を許可するように伝えよう」
間も無く、国境を守護する兵に手紙を呼ぶための伝令兵が張春輝によって呼ばれる。
伝令兵「領主様がお呼びと聞き馳せ参じました」
張春輝「よく来てくれた。この手紙を国境を警備する兵に渡して欲しい」
伝令兵「はっ!」
伝令兵が広宗の国境を守る警備隊に手紙を届ける。
伝令兵「こちら、領主様よりの手紙にございます」
???「叔父上からの手紙?もしかして広宗で何かあったのか?」
手紙を受け取ったのは、国境という最も重要な地を任されている兵の1人で、名を張曼成と言い、張角の従兄弟であった。
伝令兵「詳しくは知りません。ただ、慌ただしくされておりました」
張曼成「わかった。道中、御苦労だった。暫し、休憩して戻られよ」
伝令兵「御心遣いに感謝します」
伝令兵と別れた張曼成は、この地を真に任されている父の元へ向かった。
張曼成「父上!領都とより手紙が」
張曼成の父「何!?まさか、何進様の派閥からまた金で十常侍に寝返る裏切り者が出て、兄上が背を討たれたとかそういう不穏なものか!?」
張曼成「詳しくは分かりません。とにかく手紙を」
張曼成の父「そ、そうだな。ふむ、何々。ほぉ〜流石は兄上の子供だな。甥っ子は東の未開を無事に開拓か。な、何!?荀家が王宏様に亡命!?だが兵を連れてくる!?その兵が全て反旗を翻したら兄上の身が危ないということを分かっておられぬのか!」
張曼成「従兄が東の未開を開拓ですか。俺も負けていられないな。ですが荀家の件は、叔父上が通すと言ってるのなら、我々が止めればそれは職務違反になります」
張曼成の父「そんなことは、分かっている!兄上も思い切ったことを…しかし、あの風見鶏が本気で王宏様に尽くすか?どうせ保身を考え、また裏切るに決まってる!」
張曼成「だとしても、この場では無いと祈るしか」
張曼成の父「ぐっ。せめて武装解除はさせる徹底的にな。後、ここから兵も割く。曼成!お前は、兵を率いて護衛として共に領都に入れ」
張曼成「かしこまりました」
張春輝より国境警備隊に手紙が届けられて、数週間後のこと。
張曼成の父「来たか…」
張曼成「はい。付き従っている民は無し…護衛の私兵と家族、合わせて100人と言ったところでしょうか」
張曼成の父「荀家の当代当主は人望が無いとは聞いていたが、これほどとは…」
荀緄「我々は済南国よりこの地に亡命を希望している者である!この通り武器はここに捨てるゆえ!国境を通ることを許して欲しい!」
張曼成の父「話は聞いている!今、我が隊の者たちが武器を回収しに行くので、妙な真似を起こさぬように!」
荀緄「心得た!」
武器を全て回収して、荀家の全員を砦内に案内する。
張曼成の父「謀では無かったようだな。どうして亡命を希望する?お前の息子は、張譲の養女に婿入りしたであろう?」
荀緄「その息子が張譲の養女を妻にして戻ってきました」
張曼成の父「やはり保身のためか。信用はできんが亡命を希望する者たちを牢屋に閉じ込めることもできん。ここから護衛として我が兵を帯同させるが、妙な真似は起こすなよ?」
荀緄「心得ております」
荀彧「あの、一つ質問が」
張曼成の父「なんだ小僧?」
荀彧「もう暗くなるのに松明係を側に置かなくても良いのですか?」
張曼成の父「広宗では、松明係を廃止した」
荀彧「じゃあ、夜はどうやって明かりを確保しているのですか?」
張曼成の父「それ聞いてどうする?そもそも、広宗の者でも無いのに教えると思うか?」
荀彧「確かに…では、せめて松明係を廃止しても夜の明かりを確保できるようにした人物について教えてください!」
張曼成の父「それぐらいなら、別に構わんか。我が甥の張角という者だ」
荀彧「張角殿というのですか…ありがとうございます。(おそらくあの壁に取り付けてある金属のようなもの、あそこに松明を置くんだと思う。そして、机の上にある見たこともない物、アレもちょうど松明を置けそうな形状をしている。松明係は重労働で誰も好んでやりたがらない。人々の暮らしを快適にする張角という人物…僕は彼に少し興味が湧きました)」
張曼成の父「じゃあ、くれぐれも変な気を起こすなよ?行け!」
荀緄「はい!」
荀家の者たちが広宗に辿り着いたのはそれから1週間後のことであった。
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