父に相談だ
大賢良師が程鄧賊徒100名とその家族200名を引き連れ、広宗へと帰還した。
良師「爺や!わざわざ出迎えにきてくれたのか?」
波翁「坊ちゃんのご無事の帰還、嬉しく思いますぞ。して、その者らが?」
良師「止むに止まれぬ事情で賊徒を率いていた程遠志殿とその副官の鄧茂殿だ。そのことで父上と相談がしたい。お取次を願えるだろうか?」
波翁「かしこまりました。春輝様に確認して参ります」
波翁が戻るまでその場で待つ大賢良師。
程遠志「ここが広宗か…確かに道行く民の顔に笑顔がある…だがそれだけだ。腐敗していないとは言い切れん」
鄧茂「兄貴の言う通りだ。しっかり見てやるから覚悟しろよ堅物」
良師「俺は堅物などと言う名前では無い。張角だ。これから共に過ごすのだ変な名前で呼ぶな」
鄧茂「ヘイヘイ。これだから堅物は…」
良師「まぁ、今はおいおいで構わぬか」
暫くすると波翁が戻ってきた。
波翁「坊ちゃん、春輝様がお会いするとのことでございます。お連れの方と共に登城を」
良師「承知した。そうだ爺やも同席してくれると助かる」
波翁「このような老骨で良ければ、喜んで同席させていただきますぞ」
こうして大賢良師・波翁・程遠志・鄧茂の4人が張春輝の元へとやってきた。
張春輝「角よ。先ずは無事の帰還を父としてこの広宗を束ねる者として嬉しく思う」
良師「勿体無き御言葉にございます。そしてこちらが」
程遠志「この地を暴れ回っていた程鄧賊を束ねる長の程遠志と言う」
鄧茂「同じく鄧茂だ」
張春輝「堂々と名乗るとは剛気な。この地を治める張春輝と申す。して、角に付いてきたということは、盗賊から脚を洗い世のため人のために働いてくれるという認識で構わないか?」
程遠志「そちらの出方次第だ」
張春輝「ふむ。角よ。此奴らは帰順ではなく、俺のことを脅しに来たのか?」
良師「そのことについて父上に一つ御相談が」
張春輝「申せ」
良師「はっ!彼ら程鄧賊にも止むに止まれぬ事情があり野盗へと身を窶しておりました。今日お連れした頭目の程遠志と副頭目の鄧茂は共に元は青州の大興山の麓で農地を耕していた小作民でございます」
張春輝「待て、今何と言った?」
良師「青州の大興山の麓で…」
張春輝「そうか…お前たちも朝廷の権力争いの被害者であったか」
程遠志「それはどういう意味だ?」
張春輝「ふむ。順序立てて説明する必要があるな。朝廷は現在、二分されている。十常侍擁する宦官勢力と何進殿擁する官吏勢力にな」
程遠志「だからどうした?それと俺の村に何の関係がある?」
張春輝「待て、慌てるな。俺の知る限りを話す。元々、何進殿は十常侍寄りだったのだ。というのも十常侍から取引を持ちかけられて、それに乗った。その取引というのが、何進殿の妹を霊帝様の寵姫にし子を為させる代わりに、その子が実権を取った暁には今までと変わりなく十常侍を支持するというものであった。そのために邪魔となる存在…十常侍の言うことを聞かなくなってきていた皇妃の宗皇后に罪を被せて一族郎党皆殺しにした」
程遠志「話が全く見えないのだが、俺でもわかることがある。そんなことをすれば、他の者たちが黙っていないのでは?」
張春輝「良い着眼点だな。普通はそうだ。しかし、霊帝様は宗皇后のことをあまり寵愛なされていなかったのでな。周りも普通に流したのだ。そして、何進殿の妹は美人として名が知れていてな。霊帝様の寵愛を受けて2年で、男児をお産みになられた。そうなると何進殿からすれば、後々十常侍が邪魔になるのは、目に見えている。そこに目を付けたのが袁紹殿だ。袁紹殿は、何進殿とのすれ違いざまに甘い言葉を囁いたのだ。『我らがお味方するゆえ十常侍と敵対なさいませ』とな」
程遠志「まだ話が見えてこない。それが俺の村とどう関わってくるのだ?」
張春輝「当然、袁紹殿からしてみたら何進殿の裏切りに対して怒り心頭の十常侍となるはずであったが…何進の妹は2年の間ですっかりと十常侍側に取り込まれておってな。袁紹殿からしてみたら肩透かしを喰らったわけだ。で、その次に考えたのが領地の取り合いだ。宦官勢力の領地と宦官勢力に対抗する者たちの領地は拮抗していた。そこで、まだ空白地であった青州に目を付けたのだ。だが、宦官勢力がこの動きに黙っているはずもなく、お互いが青州刺史を出し合った。袁紹殿たちが青州刺史に推したのはかの有名な孔子様の一族から孔融殿を、対する十常侍は自分たちの言うことを聞く龔景を。どちらが勝ったかは、青州の大興山に住んでいたのなら貴殿の方が詳しいのではないかな」
程遠志「龔景だと!?ふざけるな。そんなくだらない朝廷の勢力争いのせいで、俺は…俺は!婚約者まで奪われたって言うのか!」
張春輝「貴殿の怒りは最もだ。俺も朝廷に仕える身として、謝ろう」
鄧茂「謝って済むとおもってんのか!テメェらのせいで!テメェらのせいで!」
張春輝「あぁ、そうだな。謝って済むとは思っていない。俺にできることであれば、協力は惜しまないと約束する」
程遠志「だったら…」
ここで程遠志の言葉を遮る大賢良師。
良師「父上、今の言葉に嘘偽りはありませんな?で、あれば!彼らには助けを待つ家族が居ます。その者らを助けるために、広宗からも兵を出していただきたい!」
張春輝「人民救済のためであれば良かろう。だが兵は広宗の治安も担っている。よって全ては無理だが角に半分を預けよう。この者らと共に助けを待つ者たちを救援して参れ」
良師「はっ!」
こうして、大賢良師は姑息にも青州への出兵許可を取り付けたのである。
その目的は、父から先程の話を聞いて朝廷の馬鹿さ加減に呆れ、元々空白地だったなら俺が貰っても構わないよな…である。
こうして、後に青州から全国各地に波及する黄巾の乱、その足がかりを得るための戦いを始めるのであった。
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