広宗を襲う賊徒の過去(急)
野盗たちが連れてきたのは鄧茂の母だった。
野盗頭「ククッ。確かに俺好みの強気な女のようだ」
鄧茂の母「もう一度、同じ言葉を言わせたいのかい?」
野盗頭「この前の強気な女はどれだけもったか?」
野盗A「オカシラの第五姐さんになった人っすね。確か、1週間もたずにオカシラの女になったっす!」
野盗頭「お前はどれだけ保てるかな?今から楽しみだ。この女は連れて行け!」
野盗B「ヘイ!」
鄧茂の母「野盗の女になるぐらいなら舌を噛み切って。んぐぐっ」
野盗頭「忘れてた忘れてた。こういう強気な女はこうやって、口を塞いでおかないと直ぐに自害するんだったぜ。ふぃー危ない危ない」
野盗C「気が効かなくてすいやせんオカシラ!」
野盗頭「気にすんな。良し、生き残りどもはもう居ないな?残しとくと手痛いしっぺ返しを喰らうからな。完全に殺しとけ」
野盗D「ヘイ!」
鄧茂は自分の母が連れていかれても草むらに身を隠して息を潜めて、耐えるしか無かった。
この村のことを役人に伝えられるのはもう自分しか居ない。
訴えたら朝廷は絶対に調べてくれる。
そう信じて。
だが、鄧茂は極限状態の中、漏らしてその場に気絶した。
程遠志「おい!大丈夫か!村長様!皆んな!一体何が!誰か!誰か!生きてる者は居ないのか!」
鄧茂「んぎゃ!?」
程遠志が生き残りを探して草むらに足を踏み出し、踏んづけられた鄧茂。
程遠志「良かった!お前は生きてるんだな!一体、何があった?」
鄧茂「貴方は確か程遠志殿!?」
程遠志「そういうお前は、誰だ?」
鄧茂「麓の村の端っこっちゃ端っこですが同じ村に住む人間を忘れます?鄧茂ですよ鄧茂!」
程遠志「そうか。すまない。俺は村長様の家で田畑の手入れをしていた程遠志と言う。俺がいない間に何があった?どうして、村長様も皆も家までもこんな目に…」
鄧茂「それは…カクカクシカジカでして」
程遠志「野盗の群れが村長様たちを!?しかも商人と結託していた!?鄧茂の母が連れて行かれた!?このことを一刻も早く、役所に訴えねば。立てるか鄧茂?」
鄧茂「…はい」
程遠志「ん?何か焦げ臭い匂い以外にもこうよく嗅ぎ慣れた匂いというかそんなのがしないでもないな」
鄧茂「いやぁ俺は何も…はっ!?直ぐに川に行ってきます!」
程遠志「ん?あぁ、泥だらけだったもんな。良く洗ってくると良い」
鄧茂「はい!」
鄧茂が川に身体を洗いに行く。
程遠志「しかし、あの嗅ぎ慣れた匂いの正体は何だったのか。いや、そんなことよりもだ。皆をこのままにしておけない。共同墓地で済まないが、埋めてやらねば。あの辺りは火の影響が無かったのか木が残っているな。皆が眠る場所の目印としても良さそうだ」
暫くして鄧茂が戻ってくる。
鄧茂「程遠志殿に気を遣わせました」
程遠志「気にするな」
鄧茂「(さり気なく漏らしてることを伝え、そのことを追求しない。なんて漢らしい人なんだ)程遠志の兄貴!俺はアンタに惚れた!兄貴と呼ばせてくれ!」
程遠志「なんか知らんがそう呼びたいなら別に構わないが」
鄧茂「ありがとうございます兄貴!ところで兄貴は今、何してるんです?」
程遠志「村の仲間たちをこのままにしておけないからな。ちょうど目印になりそうな木を見つけたので、皆んな一緒で済まないがちゃんと供養してやろうと思ってな」
鄧茂「そういうことでしたら俺も手伝いますよ兄貴!」
程遠志「あぁ。助かる」
埋め終わった後、程遠志は鄧茂を連れ、青州の済南国東平陵の役所にやってきていた。
役人A「さっき来た奴ら鬱陶しかったぜ。一々、野盗に襲われたことを報告しに来ても、なんもできねえっての!」
役人B「ただ命じられるままに働いてる奴らは良いよな楽で。俺たちは毎日毎日、上にあげたらボコられそうな陳情ですら聞かないと行けねぇんだから」
役人A「違いねぇ。今の青州刺史の龔景様は、出世の事しか考えてねぇ。どっかの役人は、民の報告をそのまま上げて、飛ばされたらしいぜ」
役人B「阿保だろそいつ。龔景様に逆らって今の青州で生きていけるわけねぇのに」
役人A「違いねぇ。朝廷を牛耳っている十常侍様に気に入られてらっしゃるからな龔景様は」
程遠志「今、少し良いだろうか?」
さっきまで話していた役人2人が姿勢を正す。
役人B「陳情ですか?お聞きします」
程遠志「大興山の麓の村に住む程遠志と申す。村に野盗が大挙して、村人が全滅した。他の地域にも被害があるとまずいと思い報告だけしに参った」
役人B「これは助かります。こちらでも人を派遣して詳しく調べておきますね」
程遠志「お頼み申す」
程遠志たちが離れる。
役人A「そうそう、あぁいう感じが1番良いよな。こっちも適当にあしらって終われるし」
役人B「全くだ」
程遠志に何か言いたそうな鄧茂。
程遠志「どうした鄧茂?」
鄧茂「僭越ながら申します。どうして兄貴は、野盗たちを捕まえるように言わなかったので?」
程遠志「あの役人は無駄だ。ろくに調べるつもりもない。時間の無駄だ。要件だけ話して、こちらはきちんと報告したという事実だけで十分だ。そういう調書だけは残るからな。さて、役人が使い物にならないとなると俺たちだけで野盗どもを追うしかないが…そのためには先立つものがない。朝廷の息のかかる商人どもから調達するしかないか」
鄧茂「それって俺たちも野盗と変わらないのでは?」
程遠志「だからあくまで俺たちが奪うのは朝廷の息のかかる商人どもからだけだ」
鄧茂「母を取り返すためならそれも仕方ない…か」
程遠志「きちんと朝廷が動いてくれればこんなことをしなくても済むのだ。あんな上の顔色だけを伺う腐った役人を重用せずにな」
これが彼らが賊徒となり冀州から青州を通って、都へと届けられる商人からの積荷を効率よく奪うために安平郡の広宗付近に現れた理由である。
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