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魔王に討たれた聖女、転生したら魔王の手下の闇精霊でした~それでも私、魔王討伐を諦めません!~  作者: 夜月海歌


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《Another》僕の妹2


「ミラは――殺されたの」


 心の奥が、すーっと冷えた。


「……殺す」


 殺してやる。その人間を、この手で苦しめてあげる。絶望の底に落としてあげる。黒く淀んだ眼を潰して、鼻と口に腐った人間の肉を詰め込んで、身体中に棘をさしてあげるよ。指を一本一本丁寧に折って、折ったところから棘を差し込んで。皮を少しずつ剥いで、その下の肉を炙って。声が出なくなるまで喉を潰して、それでも意識だけは保たせてあげる。 1秒1秒痛みを噛みしめてよ。


 ――ミラはもう何も感じれないんだよ? 痛みを感じれるだけ贅沢だよね。死なせないからね。ミラを殺したことを、死にたくなるくらい後悔させてあげる。――後悔してももう遅いけどね、ミラは戻らないんだから。


「リリア、誰がミラを殺したの?」

「ルシエル、落ち着いて。冷静じゃないあなたに、私は教えられないわ」

「冷静だよ。だから教えて」

「冷静じゃないわ。今のあなたは何をするのか分からない」


 ミラを殺した相手を苦しめるだけだよ。いいじゃん、そのくらい。


 ……教えてくれないなら、強硬手段に出るしかないんだよ?


 ねぇ、リリア。誰がミラを殺したの。僕に教えて。


「……!? ルシエル、やめて」

「教えてくれたらやめるよ。僕だってこんなことしたくない」


 早く。1秒でも早く。


「やめ、て……、おねがい」

「ミラを殺したのは誰?」


「……ご主人様よ」


 そう。僕はリリアにかけていた精神干渉を解除した。



 ……ご主人様なら、苦しませれなくない? 途中で命令されてできなくなるだけだ。


 それなら、殺せばいい。地獄に道連れにしてあげるから一緒に苦しもうよ。


「ありがと、リリア」

「……待って、何するつもり?」


 無視して早く行きたいけど、仕方なく僕は答えた。


「――殺しに行く」

「!? ご主人様が死んだら私たちも死ぬわよ!?」

「だから?」


 ……それが、何になるの?


「やめなさいよ!! ミラが悲しむわ」

「ミラはもういないよ」


 だから、もう何も無い。





 ***




 ご主人様にとって、僕達はただの駒でしかないのだろう。だから、あんなに慕っていたミラのこともいと簡単に殺せる。忠誠心があってもご主人様のところに届くことはない、報われることはない。


 それなら僕は、その穢れた心を壊してやりたい。


 ただの駒が反抗してきたら、どんな反応をするのだろう? ただ捨てるだけかもね。でも、捨てられたら僕は自由になる。捨てられたら死ぬ? そうだよ。僕達は命を握られているのだから。でも、それでも。僕にはそれしかない。





 ***




 正面から行って、勝ち目がないことくらいわかってる。だから。


 僕は、擬態魔法で蚊になってお城に潜り込んだ。


  いつも通りの廊下だ。床の隅まで埃がない。彫刻も規則正しく置かれている。何年もここにいるのに、今日は妙に目に入ってくる。

 

 ミラはこの廊下が好きだった。綺麗だって言ってた。


 できることなら、僕がミラの身代わりになりたかった。僕なんかが死んだって誰も悲しまないんだから。



 ご主人様は、いつもと同じところにいた。ミラを殺したというのにいつも通りなんだね。


 大丈夫、僕の姿は見えないはず。



 ――華炎爆。咲き誇れ、純黒の華よ。その身を灰へ、その魂を黄泉へと送る――


『――やめろ』


 あ。僕は、まるで息の根まで止められたかのように動けなくなっていた。


「ルシエル、其方は誰かに命令されたのか?」

「…………」


 この人は、臣下が自分の意思で裏切ることを考えてもいないのだろうか。自分はミラを見捨てるくせに、自分はされることがないだろうと本気で思っているのだろうか。……気味が悪い。


「……次はないぞ」


 それだけ言って、去っていった。そう、僕は相手にもされない。また攻撃しに行っても、止められるだけなんだろうなって思う。


 僕はこれからも、あの人の指示に従って戦わなきゃいけない? なんのために?


 ……いっそ負けてやろうか。人間に負けて、殺されればいい。ふと、ごみ置き場に人間が持っていた魔剣があることを思い出した。あれを使えば……。



 

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