《Another》僕の妹
「――お兄ちゃん!!」
「わっ」
僕を呼びながら抱きついてきたのはとんでもなく可愛い僕の妹、ミラだ。少し距離感が近いけど、そんなところも可愛い。
「今日ね、新しい技覚えたの!!」
「良かったね、どんな技なの?」
ミラは明るくて無邪気で、誰よりも優しい。……僕とは大違いだ。僕には、眩しすぎる。
兄妹……といっても血は繋がってないんだけどね。
「精神干渉!! やっと使えるようになったんだよ~」
「ミラは努力家だね」
「だってご主人様の役に立ちたいじゃん!! お兄ちゃんもそうでしょ?」
「うん、そうだね」
ご主人様がいなかったらミラとは出会えなかった。だから、僕はご主人様に感謝している。ミラみたいな純粋な忠誠心を僕は持っていないけれど。
***
――その日は、突然やってきた。
戦闘が終わっても、ミラがいなかった。
戦闘が終わったはずの場所に行っても、ミラの姿はない。彼女が殺したであろう人間の欠片が静かに転がっている。
……精霊は、死んだら何も残らない。
そんな、最悪の可能性が頭をよぎる。
たかが数時間。ほかのみんなはきっとミラが居ないことに気づいてすらいない。ミラは、何事も無かったかのようにけろっとした表情で帰ってくるんだろう。
僕の思考が詰まりつつあった時――ミラは帰ってきた。いつもみたいな明るさはなかったけど、怪我ひとつない姿だった。
「ミラ!! どこ行ってたの……!」
「心配かけてごめんね、お兄ちゃん」
「ミラが無事で良かった……」
僕は、ミラがいないと生きていけない。ミラが産まれる前はどうやって生きてたんだっけ、と思うくらい。
「……ちょっと、ご主人様のとこ行ってくるね」
引き止めたい、と思ったけど、そんなの良いお兄ちゃんじゃない。だから、僕はただそう、と頷いた。ミラはご主人様になにか話すことがあるのかもしれない。そう思っていた。
***
次の日。いつもならミラが僕を起こしに来るのに、ミラは来なかった。それだけならただの寝坊だ。――でも、ミラの部屋にも、彼女はいない。自分の心臓の音が、やけに大きく聞こえた。
昨日の夜は、確かに話した。あれは、幻なんかじゃない。――ミラが、朝早く起きてどこかに出かけた? そんなの、ありえない。彼女はいつも僕を起こし忘れることなどないのだから。
……それから、僕はミラを捜し続けた。魔王城も、練習場も、ミラの部屋も、森も、隅なくみた。……でも、いくら捜してもミラの姿は見当たらない。そして、代わりにリリアと会った。
「ね、リリア。ミラがどこ行ったか知ってる?」
「……知らない」
リリアはそう答えた。でも、瞳が揺れてる。そんなことを僕が気づかない訳がないのに。
「教えて」
「ごめん、私は言えないわ」
「なんで? ミラはどこにいるの」
僕が問い詰めると、リリアは深呼吸して言った。
「……わかった。落ち着いて、聞くのよ」
その一瞬、世界が止まった気がした。
「うん、教えて」
「ミラは――」
リリアの声が止まる。
喉の奥で、言葉が詰まっているのがわかる。
「……殺されたの」




