黒薔薇の涙
更新遅くなってすみません!!
なるべく予定通りの日程に投稿できるように頑張ります
「ミラって誰ですか……?」
気づけば、私はそう聞いていた。
「闇精霊、もう死んだのよ」
……ミラさんを殺したのは、きっと私達人間だ。仕方のないことだとわかっていても、悲しくなる。それに、リリアさんが早く話を終わらせたがっているような気がする。
「――死んだって何。殺されたでしょ?」
ルシエルさんの声には、棘があった。いつもの軽々とした態度とは違って、明らかな憤怒。
「そうね。ルシエル、この話はもう終わりにしましょう?」
「わかった。じゃああっち言ってて。僕はカルミアと話するから」
え、私と?
「ルシエル!! カルミアに変なこと吹き込むつもり?」
「変なこと? 事実だよ。心配なら勝手に聞けば」
「もう……」
ルシエルさんは、私に何を話すんだろう。ミラさんのこと……?
「ね、カルミア」
「は、はい……!」
「ミラはね、僕の妹みたいな存在だった。すごい可愛くて優しい子だったんだよ」
優しい……。前なら、闇精霊に優しい人なんていないと思ってた。残虐で、冷酷で、非常な生物。
でも、今ならわかる。リリアさんはそんな人じゃない。みんなのことを心配してくれて、寄り添ってくれる。悪い人だけではないんだよね。
「それでね、ご主人様のことすごく慕ってた。僕も、その時はそうだったかな」
え……!? 意外。ルシエルさんがそうだったなんて信じられない。何か変わるきっかけがあった……?
「……でもね、ミラはご主人様に殺された」
「え……」
慕ってたのに? それなのに魔王は闇精霊のこと殺すの? そんな……。
「ご主人様は、僕たちのこと簡単に切り捨てるんだよ。どれだけ忠誠を誓っていたって、裏切られるんだ」
それが、ルシエルさんが魔王のことを嫌いな理由? ……少しだけ、ルシエルのことがわかった気がする。だって、大事な人が魔王に殺されたんでしょう? それなら、たとえ自分の主でも、嫌いになるのかもしれない。
「ルシエル。その言い方なら誤解を生むわよ」
「事実しか言ってないよ?」
「伝えてないことがあるじゃない……」
リリアさんは、少し呆れたように言う。……でも、さっきのぴりついた空気は無くなった気がする。少し安心。
「ミラは、人間に隷属魔法をかけられたの」
隷属魔法……禁術では? 隷属魔法は、国際法で禁止されている魔法だ。だから、どの国でもかけられないはず。人間相手にはもちろん、闇精霊や魔族にも。光精霊と聖女のは契約だからね。
かけられたということは、誰かが禁術を使った……!? 禁術は極刑だよ。
「それで、ご主人様を殺すように命令されたらしいのね。……だから、ミラはご主人様を殺そうとした」
「…………」
……だから、ミラさんは魔王に殺されたのね。ルシエルさん、ちゃんと説明してよ。全然伝わってないじゃん!!
「ご主人様はミラの隷属魔法を解除してあげれば良かったのに殺したんだよ? 僕たちのこと、なんとも思ってないからだよね」
「ルシエル。それは不可能だったのよ。仕方ないでしょう?」
……解除出来ないなら、殺すしかなかったのだろう。そうしないと魔王が殺されて闇精霊もみんな死んじゃう。
「仕方ない、ね。隷属されられて、ご主人様を殺そうとして、だから殺された。仕方ないことなのかもね。――でも、納得できる?」
……納得?
だって、それ以外に方法はなくて……。
私が困ってると、ルシエルさんが笑った。どこか空っぽな目で、それを誤魔化すように高らかに笑っている。
「……殺そうとしたのも、殺されたのも、ミラの意思は関係なかった!あの子の感情は無視され続けた!!」
ルシエルさんが感情を昂らせて話しているところを見るのは、初めてかもしれない。
「……あの子は、戦闘で負けたから隷属魔法をかけられた! だから、負ける方が悪いんだよ!! そうだろう!?!?」
ルシエルさんは笑ってる。……でも、誤魔化してるだけだ。頬が少し濡れている。
負ける方が悪い……。そんなの違うと思う。
でも、何も言えなかった。だって、ルシエルさんは笑ってる。笑っているのに――すごく苦しそうだ。
「だからね――」
何事も無かったかのように言った。静寂な空間に、ルシエルさんの声だけが響く。リリアさんも、もう何も言おうとはしていなかった。
「敗者に文句言う権利なんてないんだよ」
……その言葉が、ひどく歪んで聞こえた。
もし、私がミラさんの立場だったら……。考えたくもない。




