《Past》私の初恋
「慈しみの光よ、我に応えよ。穢れを優しく包み込み、傷を癒し、あるべき姿へ戻し給へ」
私が詠唱すると、私の手で触れた目の前の人の擦り傷が、少しずつ見えなくなってくる。……うん、このくらいかな。
「ありがとうございます!!」
「いえいえ、お大事になさってくださいね」
私は町の診療所で聖女として手伝いをしている。人々の怪我や病気を魔法で治すこと――それが精霊に選ばれた私の仕事。騎士と一緒に魔族の討伐をしている聖女もいるらしいけど、私はこの町が好きだから違うところに行きたくない。
「ねえ、メル。最近仕事のしすぎじゃない?」
「そう? 私はもっとみんなを助けたいんだけど……。セフィロスが疲れたんならちょっと休む?」
私は光精霊のセフィロスと一緒に仕事をしている。私は、というか聖女はみんな精霊と契約しているのだけど。
「ボクは大丈夫だよ、偉大な光精霊だからね。メルの体調を心配しているんだよ」
「ふふ、そうだね。セフィロスはすごいよ」
「すみません!! 重傷者が外に!!」
突然扉を開けてやってきたのは、私と同じぐらいの青年だった。それに、その人も脚を怪我している。歩けるようだけど……でも痛そう。
「――行こう、セフィロス」
「……うん、そうだね」
「こっちです!!」
言われた通りに着いてく。青年は急いで走ろうとしているけど足が上手く使えていない。この人も割と重傷者では……? 見るからに無理してる。その人治した後にこの人も治療しないと。
***
森の近くに、その人はいた。
足が変な方向に曲がっている。骨折してここから動けなかったのだろう。
私とセフィロスはすぐにその人に駆け寄った。
「失礼します、少し触りますね」
「慈しみの光よ、我に応えよ。穢れを優しく包み込み、傷を癒し、あるべき姿へ戻し給へ」
怪我が酷いからか、治療に時間がかかる。
大丈夫、まだできるよ私。
はぁ、ちょっと疲れてきちゃった。
「……ありがとうございますっ!!」
「いえいえ、傷が治って良かったです」
良かった、この子の傷治せたよ。次はあっちの青年だね。
「ありがとう。魔物から守りきれなくてね」
ああ、この青年は騎士なのね。自分が守れなかったことに罪悪感を感じていたのか。魔物相手にひとりでこのくらいの被害に抑えれるのすごいと思うんだけどね……。
「あなたが悪い訳ではありませんよ。あなたも診せてください」
「いや、俺はいい」
「でも……」
「歩けるから必要ない。それよりお前、魔熱でてないか?」
魔熱――私そんな魔法使いすぎたかな。
「大丈夫です。あなたの怪我の方が……」
重症ですよ。そう言いかけて、口が止まった。だって、私の額に彼の手が触れたから。
「やっぱ熱あるだろ。無理すんな」
……そうなのかな。たしかにさっきより熱っぽい気もしなくもないけど。
胸の奥が少し落ち着かない。……きっとこれも魔熱のせいだ。
「少し休みな」
「え……?」
「休まないと悪化するよ」
――優しい人だと思った。理由なんてきっとないのだろう。でも、私は久しぶりに聖女じゃなくて1人の人として見られた気がした。
それでどうしてか、少しだけ――嬉しかった。
魔熱は、魔力を使いすぎると起こります。セフィロスは精霊で魔力に慣れているので、同じくらい魔力を使っても魔熱は出ませんね。
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