梅田ミサキと半牛半人
迷宮のミノタウロスは、ジョージが生み出した初めての合成獣だった。
ある一人のミサキ(以下ミサキAと表記)とミノタウロスは、同じ時に生まれた。
最初からミサキは大人っぽい人の形をしていて、ミノタウロスもまた、生まれた時から巨体だった。
彼らは、プログラムとは関係なしに、互いに姉弟であると自覚していた。
ミサキたちは、ミノタウロスのことを、ミノさんと呼んでいた。
ミノさんは話すことはできなかったが、ミサキAとだけは、心が通じ合い、それは、会話しているようなものだった。
ミノさんは、ミサキAにしか懐かなかった。
それを見て、ジョージはミサキAにミノさんの世話をさせた。
ミノさんは力が強く優しかった。
その怪物的な力の使いどころとして、巨石を持ち運んだり、とにかく力仕事が与えられた。
迷宮を組み上げていった。ミノさんはそれに疑いを持つこともなく、こなした。
そのうちに、ミサキは増えていき、巨人や、他の合成獣たちが次々と生まれていった。
しかしミノさんはそんなことに興味はなかった。
ただ、ミサキAを、そう、愛してしまっていた。
だから……
城建設中の事故でミサキAが亡くなってしまい、それで、もう、生きる意味を失ったとミノさんは思った。
死というものを理解していたのかどうかはわからない。
彼は多くのミサキ達の中からミサキAだけを見つけ出すことができた。
そして、死んでしまったミサキAは、弔うというよりは、捨てるように扱われていたから。
ジョージが、そうしていたから。
だから、きっと本能的に怒ったんだろう。
それで暴れた。
結果、自らが笑顔で造り上げた地下迷宮へ、数多の巨人の手によって閉じ込められ、虚無の顔で徘徊した。
ミノさんには食事が与えられ、その中に合成獣の命を繋ぐ薬が混ぜられた。ミサキA以外のミサキが、彼の身を案じて、様子を見に行ったり、食事を与えに行ったとき、ミノさんに殺意が生まれ、その右腕で殴り殺そうとした。
しかし、その腕は止まり、彼は大粒の涙を流した。
ミノさんは迷宮で生活するうちに、食事の時間を覚え、なるべくミサキたちに接触しないようにした。
それでも出会ってしまった時には、大声で怒鳴り、追い払おうとした。
その度、ミサキは悲しそうにその場を去るのだった。
やがてミノさんは自分に与えられた役割を考え始めた。
そして導き出したのは……。
――迷宮という守るべき領地を与えられ、ミサキたちを侵入者から守ること。
――ミサキ達はミサキAにとっては妹みたいなもので、つまり自分自身にとっても、妹なんだ。
――だから、守ろう。
ミノさんはそう思った。
彼は徘徊する。「侵入者を殺す」という目的で。




