梅田ミサキと巨人族
あるミサキ(以下ミサキB)がいた。
彼女は歌が好きだった。
どこで覚えたのだろうか、「ラララ」で歌うその歌は、ジョージの城で働く全てを癒した。特に巨人達は彼女の歌が大好きで、ミサキBもまた、彼らを愛した。
巨人……。
陽の当たらない寒い洞窟の中、戦時中の軍需工場跡だった場所で、ジョージの手で生み出された彼らは、怪力にして巨大。
更に手先も個人差はあるが人間並みに器用で、頭も良い。
そんな万能な生き物だった。
巨人達はジョージとミサキ達によって大量に生産され、その数は二百人に及んだ。
ジョージの城を囲む森の木々は三十から四十メートルほどのものが多かったが大体の巨人は十メートルから二十メートルほどの大きさだった。
五十メートルを超えてしまった巨人もいたが、ジョージの一言で殺されてしまった。
力こそミノさんには劣ったが、それは彼らの発達した頭脳に理性というブレーキがあったからだろう。
ジョージは彼らの記憶に城の設計図をプログラムし、建造させた。
地中に巨大な一枚岩があり、そこから巨人達自ら発明した道具で石を切り出し、角を落とし、敷き詰め、迷宮と巨石の石畳を造った。
決して楽な作業ではなかったが、毎日現場でミサキBが歌う歌は確実に彼らの励みになった。
プログラムではなかったが、ミサキ達を運ぶのも巨人の役目だった。
巨人の肩にちょこんと乗って歌を歌うミサキB。
美しい歌声。
しかし、城が完成した直後、その辛くも幸せな日々は、終わる。
ジョージは、彼らを使うだけ使っておきながら、手の平を返したように態度を一変する。
ジョージが巨人達に新たにプログラムしたのは、ある地点に行くこと。
そこには、自らが作った巨大な落とし穴の仕掛けがあった。
数十人がそこに落とされ、それを遠くから見ていたミサキBは、心を抉られたような痛みとどうしようもない寂しさを感じた。そして、
歌った。
城へ続く大橋。
その手前にある大きな鳥居の上に座って、ラララと歌った。
その歌の響きは、いつもと違った。
寂しい歌。悲しみの歌。
その歌が、巨人達の耳に届く。
巨人達は、その時、完全な目覚めをむかえる。
思い出す――。
あの辛くも幸福で、窮屈でも楽しかった建設の日々と、あの幸せな歌を。
――プログラムは消え去った。
そして、優しき巨人達に一つの目的が生まれた。
「ミサキBに悲しい思いをさせた、父親たるジョージを倒し、彼女たちを救い出そう!」
巨人のリーダーのような立場にいた一人の巨人は、進む方向を変えると、咆哮した。
そしてミサキBが座っている鳥居まで走り、彼女を肩に乗せ、悲しみの歌を歌っていた鳥居を叩き壊した。
悲しい歌は止んだ。
ミサキBは戸惑いながらもドスドスと大地を蹴る巨人にしがみ付いて、
「どうしたの? ねえ、どうしたの!」
と語りかけ続けていた。
どうしたもこうしたもなかった。
彼らは「ジョージを倒す」という使命に燃えていたのだった。
ジョージは城の中にいた。
五階。
高かった。
巨人の身長でも届かない場所。
その場所を最も大きな巨人が、巨人を肩車して届かせた。
城を穿ち、器用にジョージを引っ張り出した。
そしてそのまま、握り潰そうとした。
その時、
「きゃああああああ」
悲鳴。
ミサキBから発せられたものだった。
それは、あの歌なんかとは比にならないほどの、悲しい旋律。
その瞬間、巨人達は全てを理解した。
――自分達がミサキBを絶対に失いたくないように、彼女にとってのジョージという男は巨人である自分達なんかより、そしてミサキB自身よりも失いたくない者なのだ。と。
そう思った時、気を失ったジョージを石畳の上に転がし、自らの命を絶った。
涙を流しながら……。




