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リロード  作者: 黒十二色
番外編 幕間集
96/125

梅田ミサキと巨人族

 あるミサキ(以下ミサキB)がいた。


 彼女は歌が好きだった。


 どこで覚えたのだろうか、「ラララ」で歌うその歌は、ジョージの城で働く全てを癒した。特に巨人達は彼女の歌が大好きで、ミサキBもまた、彼らを愛した。


 巨人……。


 陽の当たらない寒い洞窟の中、戦時中の軍需工場跡だった場所で、ジョージの手で生み出された彼らは、怪力にして巨大。


 更に手先も個人差はあるが人間並みに器用で、頭も良い。


 そんな万能な生き物だった。


 巨人達はジョージとミサキ達によって大量に生産され、その数は二百人に及んだ。


 ジョージの城を囲む森の木々は三十から四十メートルほどのものが多かったが大体の巨人は十メートルから二十メートルほどの大きさだった。


 五十メートルを超えてしまった巨人もいたが、ジョージの一言で殺されてしまった。


 力こそミノさんには劣ったが、それは彼らの発達した頭脳に理性というブレーキがあったからだろう。


 ジョージは彼らの記憶に城の設計図をプログラムし、建造させた。


 地中に巨大な一枚岩があり、そこから巨人達自ら発明した道具で石を切り出し、角(かど)を落とし、敷き詰め、迷宮と巨石の石畳を造った。


 決して楽な作業ではなかったが、毎日現場でミサキBが歌う歌は確実に彼らの励みになった。


 プログラムではなかったが、ミサキ達を運ぶのも巨人の役目だった。


 巨人の肩にちょこんと乗って歌を歌うミサキB。


 美しい歌声。


 しかし、城が完成した直後、その辛くも幸せな日々は、終わる。


 ジョージは、彼らを使うだけ使っておきながら、手の平を返したように態度を一変する。


 ジョージが巨人達に新たにプログラムしたのは、ある地点に行くこと。


 そこには、自らが作った巨大な落とし穴の仕掛けがあった。


 数十人がそこに落とされ、それを遠くから見ていたミサキBは、心を抉られたような痛みとどうしようもない寂しさを感じた。そして、


 歌った。


 城へ続く大橋。


 その手前にある大きな鳥居の上に座って、ラララと歌った。

 その歌の響きは、いつもと違った。


 寂しい歌。悲しみの歌。


 その歌が、巨人達の耳に届く。


 巨人達は、その時、完全な目覚めをむかえる。


 思い出す――。


 あの辛くも幸福で、窮屈でも楽しかった建設の日々と、あの幸せな歌を。


 ――プログラムは消え去った。


 そして、優しき巨人達に一つの目的が生まれた。


「ミサキBに悲しい思いをさせた、父親たるジョージを倒し、彼女たちを救い出そう!」


 巨人のリーダーのような立場にいた一人の巨人は、進む方向を変えると、咆哮した。


 そしてミサキBが座っている鳥居まで走り、彼女を肩に乗せ、悲しみの歌を歌っていた鳥居を叩き壊した。


 悲しい歌は止んだ。


 ミサキBは戸惑いながらもドスドスと大地を蹴る巨人にしがみ付いて、


「どうしたの? ねえ、どうしたの!」


 と語りかけ続けていた。


 どうしたもこうしたもなかった。


 彼らは「ジョージを倒す」という使命に燃えていたのだった。


 ジョージは城の中にいた。


 五階。


 高かった。


 巨人の身長でも届かない場所。


 その場所を最も大きな巨人が、巨人を肩車して届かせた。


 城を穿ち、器用にジョージを引っ張り出した。


 そしてそのまま、握り潰そうとした。


 その時、


「きゃああああああ」


 悲鳴。


 ミサキBから発せられたものだった。


 それは、あの歌なんかとは比にならないほどの、悲しい旋律。


 その瞬間、巨人達は全てを理解した。


 ――自分達がミサキBを絶対に失いたくないように、彼女にとってのジョージという男は巨人である自分達なんかより、そしてミサキB自身よりも失いたくない者なのだ。と。


 そう思った時、気を失ったジョージを石畳の上に転がし、自らの命を絶った。


 涙を流しながら……。



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