Chapter7 はるかとさくら2
視点:梅田咲良→松井田はるか
真っ白な壁。辛うじて白い光をくれる窓。でも、外の風景をみることはできない。
その上、鉄格子までつけてあって、牢屋みたい。
たしか、以前閉じ込められてた部屋でガラスを割って逃げ出したから、そのせいで、外も見えなくされちゃったのかな。
わたしが悪い子だからいけないのかな。
鏡の無い部屋。
わたしって、誰だっけ。
★
あ、なんか、かゆい。
かゆくて、いたい。
むし、うざい。
どこから来てるんだろう。
服を脱いだ。
くさいのは、服だと思ったから。
★
「あー!あー!」
まだ、声を出すことはできた。
「ー♪」
好きな歌を歌った。
どこで覚えた歌だっけ?
★
「誰かー……誰もいないのかな……のどかわいたな。おなかすいたな」
疲れるから、もう歌うのはやめよう。
爪を噛んでみる。
空腹は満たされない。
脱いだ服の中に、何かないか探した。
汚い人形しかなかった。
人形の中に何かないかなと思った。
引き裂いてみたけど、何もなかった。
★
どうして、わたしは閉じ込められているんだろう。
お父さん、どこ行ったのかな。
お母さん、何してるのかな。
あれ?
お父さんとお母さんって、どんな顔だったっけ?
どんな声だったっけ?
★
白いカベが嫌だった。
さびしいと思ったのかな。
だからわたしは、何か描くものを探した。
何もなかった。
「あ、そうだ」
とても良いことを思いついたといった調子で、わたしは言った。
そして、手の甲にかみついて、そのまま、噛み切った。
「いっっったぁ…………」
なめた。変な味がした。いたい。
げきつう。
「ぅぅぅ……何でこんなバカなことしたんだろう……」
深呼吸を三回くらいした。
落ち着いた。
何を描こうかな、と思った。
とりあえず、人差し指に絵の具をつけて、白いカベに触れてみた。
赤い点。
もう一回。
目みたいになった。
なので輪郭を描き足した。
鼻、口、髪の毛。
まつ毛なんかもつけてみた。
何か足りないなと思った。
ああ、眉毛だ。
描き足す。
胴体と四肢を描いて完成した。
★
「アナタの名前はなあに?」
「そう、マチっていうのね」
「え? どこかで会ったことあるの?」
「ごめんね、覚えてないわ」
「ああ、そんな、泣かないで。きっと、思い出すから」
「あ、ごめん。眠くなってきちゃった。また明日、お話してね」
「うん、ごめんね」
原因不明に痛む手の甲をなめた。
鉄くさい味がした。
「おいしい」
★
どぉんどぉん、と音が聴こえた。
何の音だろう。どうでもいいや。
のどかわいた。
かゆい。くさい。
でもかくと痛い。
左手がずきずきする。
どくんどくんって言っている。
かゆい。のどかわいた。
自分の髪の毛をわしわしとしてみた。
鉄の格子に結び付けてみた。
特に意味はない。
動けない。
足も動かない。
裂かれた人形を、繋ぎ合わせようとしてみる。
頭がいたくなりそうだったからやめた。
トントンと足音みたいな音がする。
見つからないように息を潜める。
★
誰か……たすけて。
くるしいよ。




