Chapter1 さきちゃん逃亡事件4
視点:加賀遊規→高島さき
飛び出したはいいものの、財布も携帯も定期入れも、全部鞄の中だった。その鞄は、置いてきてしまった。上着のポケットをまさぐってみる。学校の最寄の駅までの一枚の回数券だった。あたしは首にかけた学校の屋上の鍵に触れた。行く場所は、一つしかないように思えた。
学校。屋上。
まだ門は開いていた。開いていなくても、飛び越えて入るつもりでいた。あたしは門の隙間からネズミのようにコソコソと忍び込む。音を立てないように階段を上った。
鍵を鍵穴に挿して回す。開いた。青空が広がっていた。
その青空を見て、色々なことを考えた。
みやこちゃんのこと。ゆーきのこと。これから先の人生のこと。第七帰宅部のこと。ゆーきのこと。テストのこと。そして、ゆーきのこと。
何も明確な意見とか、そういうものを決められないうちに、陽が沈んでしまった。
ずっと上を向いて寝転がっていたから、夕陽も夕焼けも見逃してしまった。
「あーあ……」
呟いて、起き上がる。
街のあかり、豆腐屋のラッパ、このサイレンはパトカーの音かな。車が通る音が微かにきこえる。少し遠くにある、大通りからかな。
扉が開いて閉じる音。
その後、近くから音がした。あたしの望む、あの人の足音、息づかい。振り向かなくてもわかる。
あたしは、うれしかった。見つけてくれた。うれしかった。こんな夜の屋上に来てくれた。
「さきちゃん?」
涙が、あふれてしまった。




