Chapter1 さきちゃん逃亡事件3
視点:山田ヒロアキ→加賀遊規
思い当たる場所を捜し回った。
でも彼女は見つからない。プライバシーの侵害ではあるが、背に腹はかえられない。さきちゃんの鞄を覗き見る。携帯も、財布も、鞄の中にあった。だからそう遠くへは行っていないだろう。
さっきまで歩いてた公園は隅から隅まで。さすがに女子トイレとかを見ることはできなかったけど、遊具の中とか、滑り台の溝の中とか、くずかごの中とか、木の上とか。全く気配も痕跡も無かった。さきちゃんの行きそうな場所を捜す。
僕の家にも行ったし、僕の実家にも行った。母親が匿っていると疑って家捜ししたが、これも見当たらなかった。こっそりヒロアキの家にでも行ってるかと思ったが、これもいなかった。
どこだよ……。
歩いて家に帰ったのかもしれないと思い、電車に乗って彼女の家に行く。高島家のインターホンを押した。
お母さんが出た。
「あ、か、加賀です。さきちゃん、帰ってませんか?」
「え? さきちゃん? まだ帰ってないけど……どうしたの?」
「え、えっと……」
「帰ったら加賀君に連絡するように言っておくわ」
「あ、はい。お願いします」
「携帯電話に掛けてみるのとか……」
「あ、今さきちゃんの携帯僕が持ってるんで意味ないです……」
「さきに何かあったの?」
「そういうわけでも……」
「ケンカでもしちゃった?」
「い――」
違うというようなことを言いかけて、途中で引っ込める。かわりに、
「……失礼します!」
と言って去った。
質問ぜめに耐え切れず、僕は来た道を逃げ戻った。
さきちゃんが帰っているならそれを隠すようなお母さんじゃないだろうと思う。だからきっと本当に家には戻っていないのだろう。
夕方から夜になるような時間に、僕はその場所の前に立った。
陽はもう沈んでいた。人一人分通れるようにしてあった門から校内に入る。事務の人に「どうしても今日取りに来なきゃいけない忘れ物がある」と言って通してもらった。
階段を上る。ひたすら、上る。夜の校舎は静かで、独特の雰囲気がある。威圧感というか、なんというか……。
冷たいドアノブを静かに回す。やっぱり鍵は掛けられていなかった。押し開ける。
重たい鉄扉がゆっくりと閉じた。




