Chapter1 さきちゃん逃亡事件2
視点:加賀遊規→山田ヒロアキ
新渡戸の年上の彼女、林田亜季さんは、俺たちの間に広がった重苦しい沈黙を破った。
「ねえねえ、新渡戸っち。あとヒロアキくんとまちちゃんもなんだけど……」
「何だ?」「何です?」「何?」
俺たちは同時に返事した。
「う……なんだか、すごい言いにくい雰囲気なんだけど……針のむしろというか……同時返事で隙間ナシというか……ま、まぁいいやっ……えっと、それでさ、その、そろそろ……皆の秘密を教えてもらいたいんだけど……」
また、しばらくの沈黙があり、俺、山田ヒロアキがその沈黙を破った。
「……新渡戸、まだ話してなかったのかよ?」
「な、何だよ。しょうがねえだろ。俺の勝手な判断で全部喋れるわけねえだろ」
「まぁ、それはそうだが……何一つ教えてないの?」
「……ええはい」
「それはいくらなんでもダメよね。ヒロアキ」
「そうだね、まっちー」
「霧野みやこって、何なの?」
と林田亜紀
「人間よ」
まちが彼女の目を見て答えた。
「ああ、人間。まぁ何ていうか、話せば長くなるんだけど……」
と、俺が語り始めた時、「まて」と新渡戸が制止した。
「何よ、新渡戸のくせに」と、まちが責めるように言う。
この期に及んで秘密にするつもりなのか、とでも言いたげな視線を送っていた。
ただ、新渡戸は秘密にしたくて俺を制したわけではないようだ。
「いや、まちさ。そこはさすがに、俺が語らなくちゃならんだろう。アキになら全部話しても、いいと思うけど……どうかな」
「どうかな。じゃないわよねぇ」まち。
「だなあ。今まで話してないってことの方が異常だろう」俺。
「どうせ新渡戸のことだから、自分のしてきたアレコレを語って離れられるのがこわいのよ」
「そりゃあ……そうだろう……」
「でも、アキさん、これだけは約束して。これからする話は、私たち以外の誰にも秘密で、そして、少し長い話だけど、全て、本当の話だって、信じて欲しいの」
「うん。みんな嘘つくような人たちじゃないはずだもんね!」
その澄み渡った青空のような笑顔から発せられた言葉に、俺たちは全員、この世の終わりくらいに落ち込み、俯いた。
「あ、あれ? どうしたの? 何でシーンとしちゃったの? あたし何か変なこと言ったかな?」
「新渡戸は嘘つきだよな」
「お前もな」
俺と新渡戸が言い合って、まちも、
「私だって大嘘つきよ」
「えぇ……?」
アキさんの全力の戸惑いの声。
「で、でも、これからの話は全部本当よ。ほら、新渡戸、さっさと話しなさい!」
まちが先を促して、
「あ、ああ。そうだな……むかしむかし…………」
新渡戸は語りだした。




