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リロード  作者: 黒十二色
第三部:リバースエッジ
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リバースエッジ エピローグ4 田山明孔

 俺は愚痴るように、今日の感想


「今日のジジィはいつになく気まぐれだったな」

 それが俺の感想だった。


 セバスチャンという名を名乗り始めたってのが、一番意外だった。


 はっきり言って、今回の作戦での俺の見せ場はほとんど無く、あろうことかクライマックスには登場すらできずに場外で気絶しているという体たらくだった。


 だからこそ、作戦終了後には何とか良いところを見せようと目を皿のようにして調査を続けた。


 そして、尖塔の最上階。蜘蛛の巣が罠のように張り巡らされた一室で、ある二つの資料を見つけた。


 一つは、ジョージと繋がっていた人物の名簿。


 もう一つは、ジョージが自ら書いたと思しき日記だった。


 はじめは、字も丁寧で日本語のみだったのが、次第に字も乱雑になり、様々な文字や記号が並ぶようになっていった。


 まだ読める時期の記録には、美咲という女性との出会いや、別れのこと。


 そして、ジョージの目的が記されていた。


 簡単に言ってしまえば、それは……「世界征服」の野望だった。


 ゆくゆくは、あの鋼の皮革を持つドラゴンを量産して、手始めに日本を占領し、そして世界まで統治下に置こうという考えだったらしい。


 中には「国民は全員美咲がいい」という記述も見られた。


 と、すれば、この森の中の城はつまり、一つの国だということではないだろうか。


 何にしても一つ言えるのは……ひどく狂っていた。


 それは確実だ。


 尖塔の一室をくまなく探し、螺旋の階段を下って外に出ると、丁度、セバスチャンが城の方から歩いて来るのが見えた。


「田山、何かあったか」


「ジョージの日記と、ジョージに繋がっていた連中の名簿、今のところその二つです」


「そうか、見せてくれ」


 俺はセバスチャンにそれらを渡した。


「お前の部下は?」


「見当たりません」と俺は答えた。


「そうか……」


「……さっきのことなんですがね」


「何だ、さっきのことって」


 実は、先刻セバスチャンが、全ての部下に全てのミサキを持ち帰るように一度命令したのだが、それをすぐに撤回して待機を指示したのだった。それはつまり、組織の墓には葬らず、この場所に墓を作るということだろう。


 セバスチャンが一度決定したことを撤回するようなことは今まで無かったので、俺は驚いたのだが、本人は別段何とも思っていないようだった。


「どうして、ミサキ達をここに埋めようと思ったんです?」


「そうだな……田山ならわかるだろうと思うが……ミサキの気持ちを考えた時にな、私達の所へ持ち帰り他の〈器〉達と共に供養(くよう)されるよりも、この場所でジョージと共に眠りたいだろうな……とな……」


 ミサキの気持ち、ねぇ……。


 セバスチャンはジョージの日記をパラパラと捲る。


「これは……常人には少し足りん内容だな」


 まったくだと思い、頷くと、セバスチャンはこう言った。


「少しは笑え」


「は?」


 えぇ? どこに笑う要素があったんだ?

 全くわからないんだが!


 わけがわからないが、とりあえず笑っておこう。


「は……はっは……」


「わざとらしい笑いはいらん」


 どっちなんだよ……。


「田山」


「はい」


「いつか、お前にはこの組織を任せようと思っている」


「……まだまだ先の話だろ。俺はもっと強くならなきゃいけないんだ」


「ああ、そうだな。最終局面でだらしなく気絶しているようではまだまだだ」


 くそ、気にしてることを……。


「組織の名前を考えておけ。蔵野が言うには誰かを救おうとする気持ちがあるのなら名前を持つべきらしいからな」


「名前ねぇ」


「この世界で、罪を犯さずに生きている人間など、いないに等しい。特に、言葉を発する以上、誰にも嫌な気持ちを抱かせないなどということは不可能に限りなく近い。言葉、というものは、銃弾のようなもので、特に心無い言葉というものは、なかなか自分には返ってこない。人を傷つけてそのままということも多い。だから、『やり直し』の再装填(さいそうてん)をするんだ。やり直す為に何度も足掻く。その結果、人の道を外れてしまっても、その道に戻るために、また『やり直し』の再装填をするんだ。……だが、しかし『やり直し』のきかない罪も、やはりあるのだろうな……私や、お前や、梅田さくらのようにな」


 いつになく饒舌だった。


「ヒロアキと蔵野は?」


「彼らの罪は、私の罪だよ」


 当人達はそうは思ってないだろうけどな。


「頂点に立つとは、そういうことだ」


 しばしの沈黙の後、


「行くぞ」

 セバスチャンはいつものようにそう言った。



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