リバースエッジ エピローグ2 セバスチャン
視点:蔵野まち→セバスチャン
蔵野まちと山田ヒロアキ。若き二人を見送ってすぐに、私はすぐに最も頼れる部下の一人の名を呼んだ。
まだもう少し、やるべきことがある。
「田山」
「はい」
部下はすぐに返事をしたので、命令を下す。
「城周辺の探索と、生存者の確認。お前の部下の捜索と、残された情報の有無の調査。人数はどれだけ使ってもいいからやっておけ」
「りょ……了解」
「では、行け」
「はっ」
田山明孔は敬礼して今まで歩いてきた獣道を慌てて駆け戻っていった。
残されたのは二人。私と梅田美咲良――ではなかった。
もう梅田さくらだったな……。
私と梅田さくらが、森と外の境界線上に残された。
「セバスチャン」
「何だ?」
セバスチャンという名も、何故だろう、いつの間にか馴染んでしまったな。
「セバスチャンは、自分の幸せは追わないの?」
「追わないさ。過去に追いつくことはできないからな」
「まだ、例の彼女のこと引きずって……」
「引きずるさ。死なれてしまってはな」
「あの二人は、大丈夫かなぁ……」
「大丈夫でなくては困る」
「そうね……」
「私達の子供みたいなものだからな」
私が言うと、
「……うん」
頷いて、俯いた。
そしてさくらは、俯いたまま、続ける。
「本当は、謝りたかった。まちちゃんを白衣に包んで置き去りにしてしまった弱いあたしだったから……。今でも弱いままだけど……でも、謝ったりしたら、怒ったわよね、きっと」
「そうだな」
静寂。
「……んっ」
梅田さくらは黒い外套から長い腕を出し、天に向かって伸ばした。
そして大きく背伸びをした後「ふぁ」と欠伸をした。
「さて、ジョージとの決着もついたし、これからどうしようかなぁ」
「私のところへ来るか?」
「それはしないわ」
まるで私がそう言うのがわかっていたかのような即答だった。
「そうか」
残念だ。
「世界をね、旅してみようと思うの。あたし、ジョージばかりを探し歩いていたから世間知らずなのよ。きっときっとこの世界には、たくさんの綺麗な場所があって、綺麗な人とかがいて、そういうものに、もう少し目を向けてみようと思う。もしかしたらそのうちに、魔法が解けて緑色にならなくなるかもしれないしねっ」
「そうなると良いな」
「うん……」
また、しばしの沈黙の後、彼女は言った。
「……待っててくれる?」
「待つものか」
「そう、じゃあ、行ってくるわね」
「ああ」
「またいつか……会いに来るわ」
「ああ」
「死なないでね」
「ああ」
「約束よ」
「ああ」
「バイバイ」
「ああ」
それから二分くらい、しばらく互いに黙っていた。やがて私が、沈黙を破る。
「行かないのか?」
そしたら彼女が、ようやく
「またね」
そう言って、彼女は駆けていった。
「また、フラれてしまったな……」
一人呟き、一人笑う。
さて、私も田山の手伝いに行くとしよう。
彼女は森の外へ。
私はまた森の中へ。
彼女には、鳥のように、大空へと羽ばたいて欲しい。
決して、花びらのように散ってしまうことがないように。
だが、私という居場所があることも忘れて欲しくはないな。
自由に見える鳥ですら、翼を休めることのできる陸地という存在に縛られているのだから。




