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リロード  作者: 黒十二色
第三部:リバースエッジ
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リバースエッジ エピローグ1 蔵野まち

視点:山田ヒロアキ→蔵野まち

 左手に残る色々な感触。


 泣きたくなるものばかり、いっぱい残っている。


 鏡に映った私であるはずの女の子は、私ではないみたいに私を見ていた。


「あ……」

 声が、もれた。


 涙も、こぼれていた。


 ちょっと、かわいいポーズとかしてみる。


「にゃん……」


 誰の反応もなかった。当たり前だ。


「……さきじゃないんだからっ」


 鏡の向こうの顔は真っ赤。体が熱くなっているのを感じながら、宝物を扱うように、傷つけないように、桜色の服と、その他さくらから半ば無理矢理に着せられた服たちを脱いだ。


 鏡で見た私自身の身体には、また傷が増えていた。


 どんなに可愛い服を着ても、やっぱり中身の私は変わらないわよね……。


 血のにおいがした。

 嫌だった。


 こんなに血のにおいを不快だと思ったことも、今までなかった。


「……山田君、どうしてまた服ボロボロなの? またまち怒らせたの?」


 扉の向こうから、楽しそうな声。


 さきの元気な声。帰ってきたことを実感した。


 だけど……さき……人聞きの悪いこと言わないでよ。


「あのなぁ、いつ俺がまちを怒らせて服ボロボロになったよ。……まぁ、まちが戻ってきたら詳しく話すから、加賀とでも遊んでてくれ」

 ヒロアキがそう言った。


 そんな風に言ったら、さきは怒るわ。


 私は引き戸を開け、お風呂場に入り、シャワーの栓をひねる。


「……っ!」


 冷たかった。


 でも、そのまま構わず浴びていると、水はお湯に変わってきた。


 心地よかった。


 しばらく浴びて、脱衣所に出る。


 こびりついたように血のにおいは残ってしまっていたけれど、それが、まだ身体に残っているのか、鼻の奥に残っているのか、また記憶にこびりついて離れないでいるのか、わからないし、これ以上さきや皆を待たせるのも何だか悪いな、と思ったから、私は皆のところに帰ろうとした。


 くるくると周囲を見渡して、自分の失態に気付いた。


 ぐるぐるともう一度見回して、バスタオルすら無いことに気付いた。


 お風呂お風呂、シャワーシャワーと急ぐあまり、着替えもタオルも、何も持ってきていなかったのだった。


 ひどいミス。私らしくない。


「さき! 助けて!」


 この言い方もいけなかったな。


 この時の私はどうかしていた。


「まち! どうした!」


 勢いよく扉を開けたのは、ヒロアキだった。


「ご、ごめん、まち、――」


「バカー!」


 そう叫んで、反射的に、蹴り飛ばしてしまった。


「ぐはぁああっ!」


 ドアの向こうに吹っ飛んでいった。


 気付けば、私は皆が好きだった。この場所が帰るべき家なんじゃない。大好きな皆が集まる場所は、どこだって家なんだ。私は、あと何千回皆とこうして会えるだろう。あと何万回ここに帰って来れるだろう。


 思えば、色々なことがあった。


 その中で、一つ、わかったことがある。

 私は、出会った全ての人々を愛している。愛していたいと思っている。だから私は、きっと皆が共有しているだろう空に向けて言うんだ。


 最後にはきっと、皆同じ場所に帰る。


 私は皆を置いて行きたくないから、最後の一人になるまで、生きてやろうと思った。そう決意した。

 決意させてくれたのは……。


 ――ありがとう。ごめんなさい。


 なんて、こんなことを考えるのは少し気が早いか。



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