幕間_その17_加賀のマンション二人きり
さ → 高島さき
遊 → 加賀遊規
二人は、男一人暮らしのマンションに来ていた。
さ 「ゆーき……」
遊 「さきちゃん……何か?」
さ 「二人っきりなのにムードが全く無いのは何故だろう?」
遊 「…………えーと」
さ 「そりゃ来たいって言ったのはあたしよ」
遊 「何を期待していたのかは……」
さ 「ダジャレやめい!」
高島さきが、加賀の頭をぺしりと叩いた。
遊 「いて」
さ 「とりあえず、窓開けて!」
遊 「寒いよ。冬だよ」
さ 「動けば暖かいわ!」
遊 「折角二人っきりなのにさ」
さ 「こんな部屋で二人っきりで何しようって言うの?」
遊 「ほら、ゲームあるよゲーム」
さ 「問答無用でーす!」
遊 「むー」
さ 「あたしの真似しないで!」
遊 「あはは」
さ 「ちょっと! 何このエロ本?」
遊 「ちょっ、発見早すぎだろ!」
さ 「そんなに巨乳が好きなわけ!」
遊 「いや……その……」
さ 「何よ」
遊 「世界を善悪で分けるならエロは善だよ! 圧倒的善だよ!」
さ 「新渡戸君みたいな開き直り方しないでよ」
遊 「さきちゃん……あれだよ。純真な高校生男子がそれ見つかった時の感情をもっと考えて……」
さ 「知らないわそんなの」
遊 「くっ」
さ 「にしても面倒くさがりなのは知ってたけどこんな惨状だなんて」
遊 「ごめん」
さ 「教室のロッカーなんて可愛いものね……」
遊 「そりゃねぇ……でもプライベート空間なんてこんなものかと……」
さ 「何でもゆーきの常識っていう非常識なものさしで測ろうとしないの!」
遊 「正論で糾弾されるのって結構ダメージあるね……」
さ 「しかも、新渡戸君はもっとひどいとか言っといて新渡戸君の部屋とかロッカー整頓されて綺麗だったじゃない! この嘘つきー」
遊 「ん? 新渡戸のロッカーなんていつ見たの?」
さ 「…………」
遊 「…………」
さ 「いいから、収納収納!」
遊 「……ん……あぁ……」
さ 「よい……しょ……」
遊 「…………」
さ 「よっこら……しょ……」
ばき
さ 「あ…………」
遊 「何割れた?」
さ 「…………CDが」
遊 「………………」
さ 「ご、ごめん」
遊 「さきちゃんの体じゅ――」
さ 「何?」
遊 「何でもない」
さ 「大体散らかしておくからこういうことになるのよ! 遊ぶならちゃんと枠を決めて散らかさないように遊びなさい!」
遊 「母さんみたいなこと言わないでよ」
さ 「むー……」
遊 「むー」
高島さきは、がばっとベッドに押し倒し、馬乗りになってほっぺたを引っ張る。
さ 「まーねーすーるーなー!」
遊 「いたいいたいいたいいたい!」
さ 「あたしは痛くないもん!」
遊 「重いし……」
さ 「重いぃ!? 軽いって言いなさい!」
遊 「軽い軽い。すっごく軽いんださきちゃん」
さ 「言い方がむかつくー!」
遊 「…………」
さ 「…………」
遊 「……あの……降りないの?」
さ 「もうちょっと……」
遊 「むぅ」
さ 「むー」
しばし二人、無言で見つめ合う。
遊 「さ、寒くない? 窓閉めようよ」
さ 「え、あ、あぁうん。そうだね……えへへ……」
遊 「さ、掃除掃除」
さ 「むー……」
遊 「さきちゃん、そこにあるDVDを、机の棚に……って何読んでるの!?」
さ 「ゆーきがどのページを見ていたのかを……」
遊 「やめてー!」
さ 「ふむふむ……新渡戸君ほど巨乳に狂信的ではないようね!」
遊 「新渡戸のあれは異常だから……」
さ 「あ、ここ折り目ついてる」
遊 「うあぁぁぁぁ」
さ 「こういう子が好みなの?」
遊 「………………」
さ 「ねぇ」
遊 「………………」
さ 「ねぇってば」
遊 「………………」
さ 「むー…………」
遊 「さきちゃんの目の前で二人分のプリンを食べてやる」
さ 「な!?」
遊 「さきちゃんのお母さんに焦がした鍋の数言いつけてやる」
さ 「なんとゆー陰湿な!」
遊 「でも大好きだから許してやる」
さ 「ねーねー」
遊 「うん?」
さ 「プリンあるの?」
遊 「あるよ」
さ 「たべよー」
遊 「掃除を……」
さ 「そんなの後回しでいいじゃん」
遊 「まー、さきちゃんがそう言うなら」
さ 「…………」
遊 「…………」
「いただきまーす」「いただきまーす」
さ 「おいしいね」
遊 「おいしいねぇ」




