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泥を流す聖女として捨てられた私、死神皇帝に拾われて世界の心臓として溺愛される 〜不浄だと追放した王国が枯れ果て、私の涙一滴を乞うてももう遅い〜  作者: 蒼城レイ


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第25話 凱旋の夜、解かれた鎖と崩れた理

皆様、大変お待たせいたしました。

一度は「完結」としてお別れしたエルゼと陛下ですが、どうしても二人のその後が……それも、ただの幸せに甘んじない彼らの物語が溢れ出し、再開することにいたしました。


第2章までの応援、本当にありがとうございました。

ここからは「第3章:氷華の教皇庁編」として、さらにスケールアップした愛と執着をお届けします。

幸せすぎて、世界が壊れてしまったのかと思った。

 目覚めると、ヴィルフリート様の腕の中は「無音」に包まれていた。

 帝都を彩っていた鮮やかな色は消え、私の視覚に映るすべてが、鏡のように透き通った「銀」に染まっている。


「……あ」


 私が微かに声を漏らすと、私の腰を抱きしめていたヴィルフリート様の腕が、折れそうなほど強く私を拘束した。

 いつもなら、ここで「おはよう、エルゼ」と甘く、重すぎるほどの口づけが降ってくるはずなのに。

 

 見上げた陛下の瞳は、燃えるような紅ではなく、深い、深い……絶望の色をした「白銀」に変じていた。


「……ヴィルフリート様……?」


「エルゼ。……行かせない。たとえ、君がこの世界のことわりそのものになったとしても、私は君を、誰にも、神にさえも渡さない」


 彼の指先が、私の頬をなぞる。

 その指先が触れた箇所から、私の肌が、黒い薔薇ではなく「銀色の結晶」へと変質していくのが見えた。

 痛みはない。ただ、圧倒的な「静寂」が体内に満ちていく。

 

 聖域の地下で、私が世界樹の毒を吸い込んだあの日。

 私は気づいていなかったのだ。

 毒を浄化する過程で、私の「心臓」が、人間のものではない「何か」へと作り変えられてしまったことに。


「……陛下、私の体、どうしてしまったのですか?」


「聖教会の奴らが、最後に仕掛けた呪いだ。……いや、呪いではないな。これは『昇華』だ。……エルゼ、お前は今、この世界を維持するための純粋な魔力の塊――『星の涙』になろうとしている」


 陛下が私の胸元に顔を埋める。

 彼の吐息が、私の体温を呼び戻そうとしているのが分かる。

 けれど、彼がどれほど私の魂を繋ぎ止めようとしても、部屋の隅に置かれた花瓶の花は、私の存在に触れることなく、銀色の砂となって崩れ落ちていった。


「……お前が消えるなら、私はこの世界を、文字通り塵へと還す。……お前という器(心臓)がない世界に、価値などない」


 陛下の「死」の魔力が、部屋を覆い尽くした。

 それは、私を連れ去ろうとする世界のシステムに対する、全霊の宣戦布告。

 

 昨日までの「甘い新生活」は、一瞬にして「世界を賭けた逃亡劇」へと姿を変えた。

 

 その時。

 

 部屋の鏡が、音もなく粉砕された。

 飛び散った破片の一つ一つに、知らない景色の断片が映る。

 

 北の果て。凍てつく氷の壁の向こう側で、一人の少年が私と同じ「銀の涙」を流して笑っている。


『……お姉様。ついに、こちら側へ来るんだね』


「……ッ!」


 脳内に直接響く、幼い、けれど絶対的な拒絶の色。

 

「エルゼ!」


 陛下が私をマントで包み込み、窓を突き破って跳んだ。

 背後で、私たちが今までいた豪華な寝宮が、音もなく銀の結晶へと飲み込まれていく。

 

 それは、第2章までの「ハッピーエンド」を食い破る、新たな物語の産声だった。


「エルゼ、しがみついていろ。……これから、神を殺しに行く」


 漆黒の馬が夜を駆ける。

 私たちの行く先には、もはや道はない。

 ただ、陛下と私が二人で堕ちていく、あまりにも重く、美しい破滅の予感だけが満ちていた。

第2章ラストの余韻をぶち壊すようなスタート、いかがでしたでしょうか。

幸せの絶頂から一転、エルゼ様の「神性化」と、それを全力で阻止しようとする陛下の暴走。


次話、第26話「『夜の女神』を称える者たち」。

銀色に染まり始めたエルゼ様を救うため、陛下が帝国の禁忌を解き放ちます。

そして、鏡の中に現れた謎の少年の正体とは……?


再開をお祝いして、ぜひ「ブックマーク」や「評価」で、二人の新たな門出を応援いただけると嬉しいです!

皆様の熱量が、エルゼ様の体温を戻す魔法になります。

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