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泥を流す聖女として捨てられた私、死神皇帝に拾われて世界の心臓として溺愛される 〜不浄だと追放した王国が枯れ果て、私の涙一滴を乞うてももう遅い〜  作者: 蒼城レイ


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第17話 謎の年下魔導士、エルゼに跪く

お忍びデートの熱は、宮殿に戻ってもなお、私の肌を内側からき続けていた。

 ヴィルフリート様に抱き寄せられた肩、耳元で囁かれた独占の誓い。

 アステリアでは決して得られなかった「誰かに必要とされる感覚」が、今の私を支えている。


 けれど、幸福な余韻に浸る間もなく、後宮の広間に見慣れぬ先客がいた。


「……遅いですよ、陛下。いくら至宝を手に入れたからといって、政務を放り出してデートなんて。帝国魔導院の予算が、僕の不満と共に爆発しそうです」


 ふてぶてしい声と共に、ソファからひょいと顔を出したのは、一人の少年だった。

 私より二つ、三つ年下だろうか。

 寝癖のついた亜麻色の髪に、ぶかぶかの魔導法衣。眼鏡の奥にある琥珀色の瞳は、若さに似合わぬ冷徹な知性を湛えている。


「カイル。……誰が立ち入りを許した。消えろと言ったはずだ」


 ヴィルフリート様の声が、瞬時に絶対零度まで下がる。

 私の腰に回された手の力が強まり、背後から突き刺すような威圧感が放たれた。


「やめてくださいよ、怖いなぁ。……それより、その子が例の『黒涙の聖女』ですか?」


 カイルと呼ばれた少年は、陛下の殺気をさらりといなすと、椅子から飛び降りて私に歩み寄ってきた。

 そして、私の顔をじっと覗き込む。


「ふうん。……確かに、魔力の波長が異常だ。光を弾くのではなく、空間ごと『なぎ』にしている。……ねえ、ちょっと触らせて。君の涙の成分、結晶化して保存してあるんでしょ?」


 彼が私の頬に手を伸ばそうとした、次の瞬間。


 ――ガギィィンッ!


 火花が散るような音がして、カイルの指先が、見えない漆黒の障壁に弾かれた。

 ヴィルフリート様が、私を完全に自身のマントの裏側へ隠し、カイルの喉元に冷たい指先を突き出している。


「……二度と言わん。この娘に触れようとするな。その指、根元から消し飛ばしてやってもいいのだぞ」


「……っ、相変わらず過保護ですね、陛下。……でも、これじゃ解析が進まない。彼女の力が『死の呪い』を中和しているのは事実だ。それを解明すれば、陛下だって楽になるのに」


「必要ない。……エルゼが傍にいれば、それだけでいい」


 陛下の執着は、もはや理屈を超えていた。

 私は、陛下の服の裾をそっと引き、顔を出す。


「あの……ヴィルフリート様。この方は……?」


「帝国魔導院の最年少院長、カイルだ。……性格の歪んだ、ただのガキだ。気にするな」


「院長……!? こんなに若いのに……」


 驚く私に、カイルは不敵に笑ってみせた。


「ガキとは失礼だな。僕は真理の探究者ですよ、エルゼ様。……ねえ、君。自分がどれほど『ヤバい』存在か、分かってる? 君が泣くたびに、世界の魔力バランスが書き換えられてるんだよ」


 カイルは懐から、小さな魔力測定器を取り出した。

 それは本来、高位魔導士の魔力を測るためのものだが、私に向けた瞬間、バチバチと音を立てて火花を噴き、文字通り「粉砕」された。


「……えっ?」


「……うわ、まじか。最高値振り切って壊れた。……君、本物の『心臓』なんだね」


 カイルの瞳から、それまでの不遜な色が消えた。

 彼は呆然と、壊れた測定器と私を交互に見つめ、それから吸い寄せられるように、その場に片膝をついた。


「……訂正します。君は『研究対象』なんかじゃない。……僕が一生をかけて解き明かすべき、『究極の数式』だ」


「カイル……貴様、まだエルゼを物のように……」


「違いますよ、陛下! これは敬意です! エルゼ様、僕を貴女の専属魔導士にしてください。……貴女のその『黒』が、どれほど純粋で、どれほどこの汚れた世界を浄化しているか、僕が証明してみせる!」


 少年の熱狂的な視線に、私は戸惑うしかなかった。

 シモーヌ様たちとはまた違う、知的な、けれど狂気を孕んだ崇拝。


「……お断りだ。エルゼの解析は、私が行う。貴様は泥を啜っていろ」


 陛下が私の耳を塞ぎ、カイルを追い払おうとする。

 けれど、カイルは引き下がらなかった。


「……陛下、そうも言っていられませんよ。……ザカライアスが動いています」


 その名が出た瞬間、陛下の動きが止まった。

 

「聖教会の異端審問官。あいつはエルゼ様を『世界の敵』として仕立て上げようとしている。……彼らが狙っているのは、エルゼ様の力そのものではない。……その力を使って、アステリアに眠る『禁忌の門』を開くことだ」


 カイルの表情が、一瞬で大人びた、深刻なものに変わる。

 

「エルゼ様。……貴女の持っているそのペンダント。……それは、ただの形見じゃない。……帝国の建国神話に語られる、『夜の女神の鍵』そのものなんだ」


 胸元のペンダントが、再びドクンと、私の鼓動と共鳴した。

 

「鍵……?」


「そうです。……その鍵が開いたとき、陛下。貴方の『死の呪い』は消えるかもしれない。……けれど代わりに、エルゼ様は……」


 カイルが言葉を飲み込む。

 陛下の腕が、折れそうなほど強く、私を抱きしめた。


「……させない。……何が起きようと、私はエルゼを離さない」


 帝都の華やかな光の影で、私を巡る運命の歯車が、また一つ、残酷な音を立てて回り始めていた。

自称・天才魔導士カイルの登場!

陛下との「エルゼ様を巡る火花」が最高にニヤニヤする回となりました。

年下の少年にまで「究極の数式」とまで言わしめてしまうエルゼ様……。

もはや彼女の魅力は、帝国中の、いや世界中の天才や強者を狂わせていくようです。


しかし、カイルがもたらした「夜の女神の鍵」という不穏な言葉。

ザカライアスの狙いがエルゼ様自身の殺害ではなく、彼女の「力」を使ったさらなる大きな目的であることも判明しました。


次話、カイルによる「エルゼ様の魔力徹底解明(という名のイチャイチャ邪魔回)」がスタート!

嫉妬に燃える陛下が、カイルを黙らせるために取った「大人げなさすぎる行動」とは……?

そして、母の形見のペンダントが、ついに「本来の姿」を現し始めます。


「陛下、もっと嫉妬して!」「カイル君、いいキャラしてる!」と思ってくださった皆様、ぜひブックマークや評価での応援をお願いいたします!

皆様の応援が、エルゼ様のペンダントの謎を解き明かす光となりますわ。

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