表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歌舞伎町が僕を食べる。  作者: 夜坂ネオン
ホスト前期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/99

エピソード96 次に繋がる

歌舞伎町、昨今なにかと世間を賑わせている街。


そんな場所で実際に経験したこと聞いたこと考えたこと


そんなことを織り交ぜたノンフィクション風ファンタジーです。


今日の予定は、結局作れなかった。


めろにも、みこちにも、るなにも連絡はした。


麻衣には距離感を考えて、

今日はあえて送らなかった。


返信は来たけど、

今日来られる子はいなかった。


急だったし、

当たり前といえば当たり前だ。


こっちの都合で送ったLINEに、

毎回誰かが合わせてくれるわけじゃない。


それでも、

るなとは後日の約束ができた。


「今度、お店行ってみたいです」


その一文を見た時、

少しだけ気持ちが軽くなった。


喫煙所でいきなり「姫にしてください」と言ってきた子が、

友達と仲直りして、

それでもちゃんとこっちに連絡をくれて、

今度は店に来ると言っている。


急に大きな数字になるわけじゃない。

今日の売上が増えるわけでもない。


でも、こういう約束がひとつ増えるだけで、

次の営業日が少しだけ違って見える。


今日来てもらえなかったことより、

次に繋がる予定ができたことを見たほうがいい。


そう思えるようになっている自分に、

少しだけ成長を感じた。


足元には、

ららに買ってもらったシャツの紙袋がある。


指には、

さっき買ったばかりのリングがある。


スマホの画面には、

るなとの約束がある。


全部、別々の女の子との出来事なのに、

今の俺の一日の中では同じように並んでいる。


それが少しだけ怖くて、

でももう、不自然だとは思えなくなっていた。


俺はカフェを出て、

店へ向かった。


今日はリコピンだけだ。


それでも、

予定があるのとないのとでは全然違う。


この街では、

誰かが来てくれる予定がひとつあるだけで、

呼吸が少しだけしやすくなる。


ヘアメを済ませて、

ロッカールームで新しいシャツに袖を通した。


白をベースにした、ららが選んだシャツ。


前回、新しいシャツを着た時は、

自分で買ったものだった。


二回目の給料で、

少し背伸びして買った一枚。


あの時は、

鏡の前で少しだけ気持ちが上がって、

まおに「似合ってる」と言われて、

それだけで妙に救われた。


でも今回は違う。


このシャツは、ららが買ってくれた。


昨日、原宿で手を繋ぎながら選んで、

彼女っぽいことしたいだけ、

と言って笑っていた。


その顔がまだ頭に残っている。


鏡の前に立つ。


たしかに、悪くない。


派手すぎないのに、

店の照明にはちゃんと映えそうだった。


ららが即決しただけあって、

俺が自分で選ぶより少しだけまともに見える。


でも、袖口を整えながら、

胸の奥に小さな違和感が残った。


前回は、ただ仕事のためのシャツだった。


今回は、そう言い切れない。


ららの気持ちが入っている。


彼女になったこと。


今夜から茨城へ向かったこと。


俺を支えるために仕事を変えると言ったこと。


その全部が、

この一枚に少しずつ染み込んでいる気がした。


シャツなんて、ただの布だ。


そう思おうとしても、

今日はそう思えなかった。


ロッカーの扉の内側に映る自分の指には、

さっき買ったばかりのリングが光っている。


指輪をつけたまま、

ららが買ったシャツを着て、

これから別の姫を待つ。


その現実が、

急に静かに迫ってきた。


騙しているつもりはない。


ららのことを好きなのも本当だ。


でも、今夜の予定はリコピンで、

後日にはるなが来る約束もできている。


まおのことだって、

まだ頭のどこかから消えていない。


好きという感情があるからといって、

他の全部が消えるわけじゃない。


ホストとして店に立つということは、

そういうことなんだと思う。


誰かにもらった気持ちを身につけたまま、

別の誰かの席へ向かう。


その矛盾を、

毎日きれいに整理できるわけがない。


でも、整理できなくても営業は始まる。


俺はシャツの襟を直して、

深く息を吐いた。


今日は、リコピンが来る。


まずはその席をちゃんと成立させる。


ららが選んだこのシャツを、

ただ罪悪感の象徴にはしたくなかった。


これを着て店に立つなら、

せめてちゃんと売れたい。


ららが俺に託した意味も、

まおが守ろうとしている線も、

リコピンがいつも通り来てくれる安定感も、

全部を抱えたまま、

それでも俺はホストとしてフロアに出る。


鏡の中の自分は、

昨日より少しだけちゃんとして見えた。


それがららのおかげだと思うと、

嬉しくて、少しだけ苦しかった。

よんでいただきありがとうございます。

感想、評価、レビュー思ったままにお願いします。

いただいた方にはお返ししに行きます。

ブックマークしていただけるよう謹んでまいります。

今後とも長いおつきあいをよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ