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歌舞伎町が僕を食べる。  作者: 夜坂ネオン
ホスト前期

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エピソード102 約束した日

歌舞伎町、昨今なにかと世間を賑わせている街。


そんな場所で実際に経験したこと聞いたこと考えたこと


そんなことを織り交ぜたノンフィクション風ファンタジーです。


それから数日が経った朝。


今日は、るなと約束した日だった。


るなが初めて店に来る。


初めてホストクラブに来て、

初めて指名をする。


その相手に自分を選んでくれたということが、

思っていたより嬉しかった。


ホスト冥利に尽きる、

という言葉は少し大げさかもしれない。


でも、まだ入店して二か月ほどの俺にとっては、

十分すぎるくらい大きなことだった。


歌舞伎町の喫煙所で、

急に「姫にしてください」と言ってきた女の子。


友達と喧嘩して、

担当がいなくて、

朝まで行く場所がなかった子。


その場の勢いみたいに見えた出会いが、

ちゃんと店への約束に変わった。


それだけで、何かひとつ、

自分が前に進んでいるような気がした。


だからなのか、

今日はなぜかいつもより早く起きてしまった。


目覚ましより前に目が開いた。


まだ少し眠れる時間だったのに、

もう一度寝ようとしても、

頭のどこかが起きている。


るなはどんな顔で店に来るんだろう。


初回の空気に緊張するのか。


それとも、喫煙所で声をかけてきた時みたいに、

急に大胆なことを言うのか。


初めてのホストクラブは、

たぶん誰にとっても少し特別だ。


入口を入る時の緊張。

席に通される時の落ち着かなさ。


暗い照明と、

知らない男たちの声。


普通の飲食店とは違う、

独特の距離感。


その最初の記憶の中に、

自分が入る。


そう考えると、

いつもの営業とは少し違う緊張があった。


売上がどうとか、

いくら使ってくれるかとか、

もちろん考えないわけじゃない。


でもそれより先に、

今日はちゃんと楽しい時間にしたかった。


るなが「来てよかった」と思えるようにしたかった。


それが結果として次に繋がるのか、

ただ一回の思い出で終わるのかは、まだわからない。


でも、最初の一回を雑にはしたくなかった。

布団の中でスマホを開く。


るなとのトーク画面には、

昨日の夜のやり取りが残っている。


「明日、緊張してきました」


「大丈夫、俺がいるから」


「それホストっぽいですね」


「ホストだからね」


「じゃあ信じます」


そんな短いやり取りだった。


信じます。


その言葉が、少しだけ胸に残っていた。


大げさな意味じゃないのかもしれない。

冗談半分かもしれない。


それでも、初めての店に来る子がそう言ってくれるなら、

こっちはちゃんと応えないといけない。


俺は起き上がって、

煙草に火をつけた。


朝の部屋は静かだった。


歌舞伎町の夜とは違って、

何も急かしてこない。


なのに、気持ちだけは少し早く店に向かっている。


今日は、るなが来る。


その事実だけで、

いつもの出勤日とは少し違って見えた。


まだたった一人の予定だ。


それでも、誰かが自分を選んで初めて来る日というのは、

こんなに朝から落ち着かないものなんだと思った。

よんでいただきありがとうございます。

感想、評価、レビュー思ったままにお願いします。

いただいた方にはお返ししに行きます。

ブックマークしていただけるよう謹んでまいります。

今後とも長いおつきあいをよろしくお願いします。

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