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第11話:攻城前の嵐

オルフェミ視点、数日後:


香と古代魔法の匂いが、空気を重く染めていた。


レイザリア姫とチャールズ王子が、古代の門を再起動させるための複雑な儀式を始める仲、俺はその様子を黙って見守っていた。


胸の奥では、希望と焦りが静かにせめぎ合っている。


「門が完全に作動するまで……二週間かかるわ」

レイザリア姫はそう言った。穏やかな声だったが、その瞳には決意が宿っていた。

「でも心配しないで。ここでは時間の流れが違うの。こちらで二週間でも、あなたの世界ではたった数日程度のはずよ」


その言葉に、ほんの少しだけ胸の重みが和らいだ。


帰れる――!


ヴィオレッタのもとへ。エレインのもとへ。反乱軍の仲間たちのもとへ。

その未来が、ようやく現実味を帯びてきた。


彼らが詠唱を続け、空中に発光する印を描き、門の縁に古代の紋章を刻んでいく様子を見つめながら、俺は“あちら”の混乱を思い浮かべている。


エレインの恐るべき変異。


ヴィオレッタの揺るぎない覚悟。


そして王太子エドウィンの影――!


俺が戻る頃には、いったい何が変わっているのだろうか?

いや、そもそも……俺は、彼女たちを守れるのか?


内心の複雑な思いを読み取ったのか、レイザリア姫がそっと肩に手を添えた。

「ワタシたちにできる限りのことは、必ずやっておくわ、オルフェミ!」


その優しさに、俺は胸に暖かなものがしみこんでくる事を感じながら、かすかに微笑んだ。


今は、この新しい世界の新しい絆を信じよう。この新しい“家族”を......

そして、待とう。二週間。あるいは、たった二日。


目の前の門が、静かに脈打つように光を帯び始めた。

目覚めの第一段階が、確かに始まった。


もうすぐだ......

俺は、必ず帰る!


...................................................


.............


ヴィオレッタ視点、数日後、破壊された反乱軍の基地から少し北に立てられた野営地にて:


反乱軍の陣営には、不安が火花のように走っている。声は多すぎる、疑問は多すぎる、答えは少なすぎる。


斥候たちが戻ってきた時、彼らの険しく泥にまみれた顔を見た瞬間、報告を待たずともわかった。


エドウィン皇太子が王都へ進軍している。

王権の最後の砦である王城は、我々が動かなければ、数日で陥落する。


そして、エドウィンの軍勢の中には――!

あの男がいた。


アウステルリンド公爵。


私の血。


私の恥。


私は即席の演台――木箱と傷んだ板を縛り合わせただけのもの――、に登った!


だが、それで十分だった。そこから見下ろす彼ら、我が反乱軍。農民から戦士へ、脱走兵から防衛者へ。鎧は揃っておらず、武器は中古品だが、その眼だけは……確かに燃えている――!


「では!」

私の声は震えなかった。今は、震えてはいけないから。あの原初の恐怖に晒されたばかりだとしても、色々覚悟と準備をしなくてはいけないから!


「敵が迫っている。玉座を奪うためだけではない」

胸の奥で締めつけられる痛みを押し切り、一語一語を大勢の心へ叩きつけるー!

「我が王国の魂そのものを砕くために来るのだ」


ざわめきが広がる。私はそれを許し、やがて手を挙げて静寂を求めた。


「彼らは裏切りを携えてくる――!そう、かつて家族と呼んだ者からでさえも」


視線は群衆をなぞり、一瞬だけ、エレインのところで止まった。


彼女はヴェレーナの傍らに立ち、小さな手で修道女の魔杖を白くなるほど握りしめている。


彼女の霊気は震え、今や常にまとう不自然な冷気が漂っている。だが、その眼は……もはや怯えた子供のそれではない。


炎で鍛えられた鉄のように強かった!


ヴェレーナがそっと彼女の肩に触れる。無言の約束と祈り。


「我々が戦うのは――!」

今度はより大きく、より強く、私が声を張り上げる!


挿絵(By みてみん)


「ただ国王陛下のためだけではない!ただ王城防衛のためだけではない!この国に、正義と誇りがまだ宿ると信じるために戦うのだから!」


挿絵(By みてみん)


その時、起こった。

「そ、その通りだあ――――――!!」

「あのすかした顔した皇太子、今度こそ恐怖で顔が歪むほど植え付けに行こう―――!!」

「そうだ――!!オラたちが先日感じた混乱と戦慄、今度こそヤツに倍返しに浴びせに襲え――!!」


士気が高まったように皆からの歓声が轟いた―――!

躊躇も疑問もなにもなく、皆が真剣に戦いを望んでいるような目してるばかりだ。

一瞬、私も彼らと同じように気分が高まったけど、冷静を失うことなく直ぐに心を落ち着かせた―!


...希望が、荒々しく、眩しく、家名に刃を向けた日から背負ってきた重荷を引き上げていくのを。


陽が山稜に沈む頃、陣営の天幕と焚き火の上を、空は血のように赤く染まっていた。


私は演台を降り、準備に忙しい陣営を点検するために歩き回る。


鎧は修復され、刃は研がれ、最後の手紙がしたためられる。


そして、最初の星が空にまたたいだ時、私はたった一つの、はかない想いを許した。


来い!


父は失ったかもしれない。

だが、自分自身は失っていない!

これが、何よりも大事なことだから。


そしてこの王国も――!

絶対に、失わせない。


...例え、あの自信に満ち満ちている顔した皇太子をハイヒールで貫く事になろうとも―――!


..................................

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