第21話:ヴィオレッタの恐ろしい靴と妬み...
血が石壁に安物の香水のようにこびりついていた。実体化した悪霊はもう消えた――床に散らばった塵と死――だがその存在感は重く残る。
オルフェミは先に進んで、エレインをあそこの廊下へ連れて行き、慎重に手を繋ぎながら敵襲に備えている姿勢を保っている。シスターも彼の隣に歩いていく。
私は残った。
何かを壊したかった。
そして運命は私の心の声に応えたわ~!
二人の落ち武者――密輸業者か、奴隷商人の偵察か――がトンネルを這い、死んだ主人か易い獲物を探していた。
代わりに私を見つけた。
「おいおい、お嬢さん...」
一人が嗤った。
「こんな物騒な廃墟にて遊郭から迷子かー?」
もう一人が嘲笑う。
「それっぽい格好してるぜー。その可愛い靴見ろよ~!ガハハ――!」
「ふふふふ~~」
私は笑った。
ゆっくりと。
大きく。頬がピアノ線で吊り上げられるような笑み。
「あら……このヒール、お気に召しましたの?」
かー、かー!
一歩前へ出る。
カチリ。
笑い声が揺らぐ。
「この靴で何をしてきたか、知らないんでしょうねー?」
彼らの予想より速く動いた。大抵の人間の予想より速く。
ヒールが最初の男の膝を粉砕した。
「あぎゃああ―――――――――――!!!?」
蹴られた犬のように叫ぶ。長くは叫べなかった。
バキ―――!!
顔を踏み潰したから。
グチャ―――!!
一度。
バコ―――!!
二度。
グチュ――!!
三度目で。
ハイヒールが頭蓋に突き刺さり、湿った粘土に杭を打つよう。
ああ~、爽快だわ~!
「ひっ――!?」
タタ―!
もう一人は逃げようとした。腰抜め。
「それ!」
タ―――!
私は彼の逃げていく方向に向かって跳んでいった。
グチュ――!!
旋回中の背骨にヒールが食い込み――糸を断たれた人形のように崩れ落ちた。
「待て――!」
待たない。
くちゅー!
喉にヒールを突き立て、ゴボゴボいう音が止むまで押し込んだ。
魔法もない。ナイフもない。ただ私とお気に入りのスティレットだけだわ。
血が石壁に飛び散る。そして直ぐに自分の綺麗な長い銀髪を整える。
「ふー」
息を吐いた。
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その後、奥の間に進んできたので壁にもたれたままの私はエレインを片腕に抱くオルフェミを見つけた。
子猫のように彼のコートに包まれ、小さな手がシャツを握りしめている。
「帰りたい...」
彼女は囁いた。
「もうすぐ待って」
優しい声で返した彼。
「ここへ来た『目的』を果たすまで...」
躊躇い、震える瞳で彼を見上げるエレイン。
「……本当にパパって呼んでいいの?」
何かが内側で捻れた。
オルフェミは迷わなかった。
「そう呼びたいなら、いいぜ?」
「わいー!それならいつもそう呼ぶね、えへへへへ~!」
エレインが初めて心の底から笑ったような気がした。
吐き気がした。
間違っているからではない。
完璧すぎるからだわ~!
その後、廃墟の明かりが差す廊下を歩く時、私は彼らの後ろを歩いた。見つめながら。
オルフェミの背中。広く。馴染み深い。
10歳の無垢の少女、エレインの手が彼のそれをしっかりと掴んでいる。
そして私は?
血に濡れたヒールと嫉妬を引きずって後ろからついていくだけ......
ああ、こんな惨めな気分になるのは人生生まれてきて初めてな気がするわ...
こんなに強く誰かになりたいと思ったことはなかった。
あの子にではなく――
彼女がしがみつくその人に。今や複数の女性から慕われるその人に…….
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