第19話:古の逆賊の迷宮
三日後:
「正義の街の下には」
ソーンブライアーが言った。「必ず暗い過去が眠っている」
首都旧市街の外れ、廃墟となった礼拝堂の裏路地に立っていた。
街灯は怯えるように明滅し、ソーンブライアーは砕けた敷石の下に隠された排水口に錆びた鉄鍵を突き刺した。
カチャリ。地面がうめく。
ハッチが開き、螺旋階段が暗闇へと続く。
エレインがオルフェミの外套にしがみついた。
「ここ、嫌い.......」
彼女は囁いた。
「正しい感覚だ...」
オルフェミは手を差し出しながら言った。
彼女は躊躇なくその手を握った。
この手の任務の度にエレインを連れ回すのは、私の屋敷のメイドや執事たちと留守番させる方がもっと危険だからだ…少なくともここなら、私やオルフェミ、ヴェレーナのような戦闘のプロが直接守ってやれる。
私はグローブを締め直し、ソーンブライアーに続いて降りた。
迷宮内の空気は澱んでいなかった――古びていた。血の記憶を留めるように。
壁面は彫石で、色褪せた象徴、沈黙の誓い、歴史書から抹消された王室審問官の紋章で覆われている。
ヴェレーナは降りながら祈りを唱えていた。
オルフェミは片手をエレインの肩に、もう片方を刃に置いている。
「ここは逆賊と反逆者が監禁され拷問されていた場所だった」
ソーンブライアーが説明した。
「異端の嫌疑をかけられた者たちも。王冠は彼らを『忘却の民』と呼んだ」
私は振り返った。
「で、なぜ私たちがここに?」
彼は陰鬱に笑った。
「遺体が動き出したからさ」
最下層でそれらを発見した。
暗闇に積み重なる骨とローブ、そして更に悪いもの――生々しい血痕だ。
石に刻まれたルーン文字が微かに光る。最近まで儀式が行われていた跡。
エレインが凍りついた。
そして嗚咽し始めた。
オルフェミが心配そうに振り向く。
「どうした?」
彼女の瞳は見開かれ、虚無を見つめていた。
「叫んでる」
私は瞬きした。
「何が?」
「...叫んでる…けど、音がしない」
彼女は耳を押さえた。
「閉じ込められてる。埋められてる。鎖で繋がれてる......」
ソーンブライアーが彼女の横に跪いた。
「残響を聞いているんだな、ここで埋められている死体から......」
「死霊の声を聴いているのよ」
ヴェレーナが十字架を取り出しながら訂正した。
「この子は感受性が強い」
エレインが泣き出した。
オルフェミは彼女を抱き上げた。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼女は顔を彼の肩に埋めた。
「どうして『彼ら』が叫んでるの?」
私は壁と血痕を見た。
「...誰かが目覚めさせたからよ」
迷宮がうめいた。
深部から、音色が響く。
鐘ではない。
オルゴールだ。
ひとりでに鳴っている。
ソーンブライアーの顔から血の気が引いた。
「...動かざる者が、今ここで、『やっと』動きだすんだ」
オルフェミがダガーを抜く。
ヴェレーナのメイスが鈍い金属音を立てて床に触れた。
私は前へ出た。ハイヒールの踏み鳴らしてる音が石床に響く。
オルフェミの腕の中のエレインが私に向けて囁いてきた。
「行かないで~」
「幽霊なんかより酷い相手は慣れてますわ」
私は言ってやった。
...本当は嘘だった。
角を曲がると、それが見えた――!
小さな部屋。子供用の寝室が、完璧な状態で地下に保存されていた。
ベッド。おもちゃ箱。鏡。すべて塵一つない。
そして中央――赤いぼろきれをまとった人影が、フードの下に顔もなく、浮遊するオルゴールのハンドルを回している。
私たちが入ると止まった。
ゆっくりと振り向き――震える骨のような指を上げ……
まっすぐエレインを指差した。
「ひー!」
彼女が息を呑む。
「私を...知ってる気がする~!」
ヴェレーナが前に出た。
「なら忘れさせよう!」
その『何か』が叫んだ――!
音ではなく、私たちの骨に直接響くように。
「うげえ~~!」
そして襲いかかってきた!




