瘡蓋をひたすら剥がす ※
瘡蓋を掻き毟るような7本
※一部に鬱要素があります。苦手な方はご注意ください。
『カサブタと全然違う色』 ※鬱要素あり注意
躓いて、派手に転んで立てなくて。
焼けたアスファルトを這うような心地で、嗚咽を漏らし、時に激しくベソを掻き、蹲り、まだ立てはしないけど、上体を起こすことはできたのか。
目の周りは涙で焼け、鼻の下は赤く擦れて、アスファルトで酷く擦れた手首はやっとカサブタになっていた。
気付けば、庭のブルーベリーの実が色付いている。
あれは実だけでなく茎まで染まらないと甘くならないのに、わりと大雑把な母は、鳥に盗られてなるものかと未熟なものまで収穫してた。
母らしいと、本当に久し振りに笑う。
ガラス鍋に実と砂糖とレモン果汁を雑に入れてレンジで加熱したジャムは、私の灰色の視界に鮮やかに映える。
『愚か者の臓腑』※鬱要素あり注意
ギリギリと絞るような胃の痛みで蹲ってからというもの、胃が食べ物をうっすら拒むようになった。お粥とやわらかいうどんとクタクタに煮た野菜とほぐした鶏のスープの世話になること一週間。
その間、熱中症に二度罹った。踏んだり蹴ったり、泣き面に蜂。
ガタガタの精神でハメを外して自棄酒をして、唐揚げと焼鳥を食べたら、元の木阿弥。胃腸はまた元通り、食事をやんわりボイコットするようになった。またやわらかいうどんからやり直す。
精神と臓腑が連携しているようで、その実、まったく噛み合ってない。涙が勝手に出て困る。
半月で二.六キロ減。頬が痩け、肋が浮き、腹はへこんだ。
なにもかも自業自得。漬けたばかりの梅酒も残りわずか。
愚かすぎて嗤う。
『部屋にいるよりかは有意義』
室温が今夏最高気温を更新することはわかっていた。だから、いっそのこと余計に暑い場所で有意義な時間を過ごしてやろう。
日がモロに当たる灼熱のベランダ。床も壁も黒ずみや苔が気になっていた。
水を張ったバケツとデッキブラシと使い古しの歯ブラシを手に、床に這いつくばり、壁に張り付き、丹念に洗う。
水は気持ちよく、偶に吹く風は暑さと疲れを一瞬だけ忘れさせる。
しゃがんで作業すると何ともないのに、立ち上がるとたちまち目眩がする不思議。水と熱中症対策飲料を少しずつ飲む。
昼食も摂らず二時間半。しまった。掃除前の写真を撮るべきだったけど、少しはキレイになったと思う。有意義有意義。
『毒の海』 ※鬱描写あり注意
ずっと。ずーっと、私は毒の海辺を裸足で歩いてる。
調子の良いときは浜辺に落ちてるシーグラスや貝殻なんて宝物を探してるけど、常に波のスレスレを歩いてるんだ。
どこに向かっているのかわからない。波から遠ざかろうとしても寄ってくるから、ため息をついて仕方なく波打ち際を歩く。
時期により潮は満ちるし、横殴りの風や砂利に足を取られてよろけて波に足を突っ込むこともある。
毒なんだ、この海。だから、触れると痛いし、すぐさま体の芯まで侵食してくる。
膝が折れ、崩れ落ち、蹲り、呻き、海の中へ倒れ、とことん苦しむ。潮が引くまで苦しむ。ずっと。
こんな苦痛、他の人は理解できない方がいい。
私だけ苦しみゃいいんだ。
『命綱』 ※鬱要素あり注意
見えないし、日頃は意識もしない、けれど生きている限り命綱の本数は加減される。
私の命綱は今、何本あるんだろう? 数えられないからわからない。
でも、断たれたときはわかる。
一本目は引き千切られた。
二本目は断ち切られた。
三本目は噛み切られた。
四本目は捻じ切られた。
一日に四本の命綱が役立たずになり、何もかもがどうでもよくなった。
その翌日から自らで命綱を剃刀で梳いたり、熱で焼き切っている。
あと、何本の命綱が残ってるんだろう。煩わしい。
捨ておいた命綱を見た人が、ひとつ私の頭を叩き、細いけど丈夫な、呪いに近い命綱を一本繋いでいった。
繋ぎ留められた。
まだいないといけないのか。
『御高説』
貴方を救えるのは貴方自身。
深層心理にいる自身を見つけ出して語りかけ、優しくしてあげて。
思考という名のエゴは、自身を痛めつける性質が強いから、思考に取り憑かれないこと。
他に囚われないこと、己のみを見ること。
人生という路を行く、己という名の乗り物の操縦を他に委ねないこと。
なんて、ややこしい難題を矢継ぎ早に挙げ連ねるのだろうね。
僧に成る気も悟りを開くつもりもないんだ。
不器用で超弩級の方向音痴の私では、御高説を実践しようったって一歩目で踏み違えたり、勘違いして道を大いに違えてしまいそう。
端的にこう言やぁいいのさ。
自分の倫理の正解も模範解答も、他の人では知り得ないんだよって。
『星屑を拾う』
シュレディンガーと胡蝶之夢。
あってないようであるようなないような。現実か夢か。
光と闇。善と悪。天と地。混沌と秩序。主観と客観。両極。二元。
空。色即是空。
記憶は塗り替えられる。
真実と正解は人の数だけある。
ややこしいことを考えなさる。
あなたがそれで何かを悟り、過去や未来の線でない、現在=たった今という点を確固たるものとして感じて、立っていられるのならば、ややこしいことに意味はあろうよ。
あなたが無駄と仰る思考に囚われる私は、けれども、それでも思考の海を漂い続け、時に溺れるんだろう。
この思考という混沌から星屑を拾うために。
私が浚った星屑を無駄とは決して言わせない。
カサブタと全然違う色 2026.7.10
愚か者の臓腑 2026.7.10
部屋にいるよりかは有意義 2026.7.12
毒の海 2026.7.12
命綱 2026.7.16
御高説 2026.7.19
星屑を拾う 2026.7.19




