タナカ
「えっ、開けるのか、開けないのか、どっちなんだいっ!?」
この時点で、摩訶不思議亭の店主もまさか箱の中身がドラゴンだとは思っていない。
青い鎧を着た勇者も、妖精の態度の豹変に一瞬戸惑う。
「……勇者を決めるんだろう? 開けてしまえ、中身は俺が始末する」
「ダメです」
「なぁまっちー、今から何が始まるんだよ」
随分長いこと、この声を聞いてなかったな、と妖精は思った。
間の抜けたセリフの声の主は、もちろんタナカであった。
「全く、あなたのせいで色々苦労したんですから」
「な、何だよっ、俺は別に何もしてないだろ」
タナカの元気な姿を見て、妖精は少しウルッと来てしまった。
(タナカごときで…… 年を取ると、涙腺緩くてダメですね)
妖精は上を向いて、あー、花粉症だわ、と誤魔化すと、こう言った。
「勇者の条件は強さだけではありませんよ。 ここは一発、魔王を倒した方が勇者でいいじゃないですか?」
「おいおい…… 確かにそりゃ確実だが、魔王がどこにいるかさえ分からないんだぞ?」
「ふっ、勇者たるもの、それは自分で見つけなきゃダメですよ」
くるり、と妖精は勇者に背を向け、歩き始めた。
「なあなあ、これからどうすんだ? 本当に魔王を探すのかよ?」
妖精にはアテがあった。
前にタナカの記憶を探った際、魔王になると息巻いていたものがいたのだ。
「あなたの幼馴染みに、魔王になりたい、と言っていたものはいませんか?」
「え? いたっけなぁ……」
妖精はタナカの服を掴むと、思いっきり引っ張って地面に倒した。
仰向けになり、妖精を見上げる。
「って、何すん……」
「お前が勇者なら、俺が魔王だ」
「……!? 何でそれを知ってんだ……」
タナカは思い出した。
子供のころヨシコを助けに入り、逆にやられたことを。
「オウマだ…… あいつ、今何してんだろ……」
「あなたの生まれ故郷に行きましょう。 そこに手がかりがありそうです」




