オウマ
2人は、電車を使って西イーストシティに向かっていた。
タナカの地元である。
「オウマのやつ、今何してんのかな……」
妖精はそんな話を無視し、駅で購入したチョコレート・サプライズに夢中であった。
これは、卵の形をしたチョコの中に、玩具が入っているお菓子だ。
「中身はプルプルスライムでした。 本当にあの店からシークレットレアのゼウス・ドラゴンが出たのでしょうか? 噂はあてにならないですね……」
ブツブツそんなことを唱えていると、アナウンスが流れた。
「次は~、西イーストシティ、西イーストシティ」
「おい、まっちー。 そろそろ降りる準備しないと」
妖精は短くため息をついた。
(……はいはい、降りますよ)
駅前は閑散としており、「サンキューマート」なるコンビニしかない。
(典型的な田舎にしかないコンビニですね…… 賞味期限の怪しいパンとか置いてそうです)
「まっちー、こっちだ」
駅から出て左の通りを進む。
遠くには山が見え、道行く人は犬の散歩をしている老人くらいだ。
「今日は天気がいいねぇ」
「はは、そうっすね!」
老人からは必ずと言っていいほど声をかけられる。
これも典型的、田舎の特徴と言えよう。
「そろそろオウマの家に着くぜ」
オウマの家は、緑色の三角屋根をしており、呼び鈴を鳴らすと母親らしき人物が現れた。
「あれっ、タナカさんちの…… 急にどうしたの?」
「久しぶりです。 オウマに用があって来たんですけど」
「オウマは今セントラルで働いてるわよ。 確か、かなり大きな建設現場に入ってるみたいだけど」
母親の話では、鳶として都内でも最大級の現場に入ってるとのことだ。
「ありがとうございます!」
「良かったらまた来てね。 彼女さんも一緒でいいから」
「あっ、いやっ、その…… はい!」
ドン、と妖精が背中に蹴りを見舞った。
一旦セントラルに引き返し、都内最大の建設現場を探す。
そこは駅前からさほど離れていない場所にあり、巨大な複合オフィスビルの建築現場であった。
「絶対ここだよな。 でも、これだけでかいとオウマを探すのも一苦労だぜ」
しかも、バリケードで囲まれており、関係者以外は中に入ることはできない。
仕方なく、昼時に作業員が出てくるのを待ち伏せすることにした。
すると、意外にもすぐにその人物は見つかった。
「……あれっ! ちょっと見た目変わっちまってるけど、あいつだ! 面影があるぜ」
ガタイのいいひげ面の日に焼けた男。
彼こそがオウマであった。




