メンデル
妖精がエレベーターで23階に向かう。
エレベーターはガラス張りになっており、眼下に街の景色が映る。
木造平屋の建造物が大半を占めるが、たまにニョキニョキと背の高い建物が生えている。
(この前のドラゴンの襲撃で、焼け焦げちゃってるとこがありますね)
フロアに到着し廊下を歩くと、傍らに「メンデル」と書かれた表札を見つけた。
ノックをして、中に本人がいるか確認する。
「どうぞ~」
しわがれた声がし、扉を開けると、隙間から緑色の猫が顔を出した。
「ねーねー、知ってる?」
「わ、猫がしゃべった!?」
妖精がびっくりしていると、奥から白髪の白衣を着た老人が現れた。
彼がメンデル教授のようだ。
「それはそら豆と猫のDNAを合成させて作った魔法生物だよ。 で、君はここの学生? まーた単位のことで相談かい?」
「いえ、違います。 死体を復元する方法を聞きに、ここに来ました」
すると、メンデルは眉間にしわを寄せ、とりあえず中に入りなさい、と言った。
部屋に通されると、ソファに座るよう促された。
「……なぜそんなことを聞きに?」
「私の不注意でタナカが死んでしまいました。 だから、生き返らせたいんです」
さっきまでニコニコしていた老人の顔が、別人のように険しくなる。
「死者を蘇らせる術は、生み出してはならん。 仮にそれをやったら、私は間違いなく死刑だ。 理由を説明する」
メンデルは、死者が蘇ることで起こる弊害について語り始めた。
「まず、生き返ることができるようになれば、人を殺してはならない、という概念が無くなる。 すると、人は罰を与えるために人を殺すようになる。 殺された方は、仕返しにとその相手を殺す。 これが次第にエスカレートしていったら、最後は終わりなき戦争がこの世界で勃発することになる」
「……それが、死者を蘇らせてはいけない理由ですか。 なら、秘密にやればいいじゃないですか?」
「君は結構頑固な子だね…… なら、今度は物理的に難しいということを説明しよう。 確かにそのタナカって人の体を復元することはできるよ。 その人のDNA、例えば髪の毛とか、爪とか、そういうものがあれば、体を培養することができる。 でも、一番大事なものが足りてない。 魂、だよ」
その話を聞き、妖精は立ち上がってブラック☆ホールを作り出した。
その中から、ワラ人形を取り出す。
「これは、タナカのワラ人形です。 ここに、タナカの魂が入っています」
「ネクロマンサーの死霊術が使えるのかい!? まずいなぁ……」
いよいよ材料がそろっている。
妖精は、あと一歩でタナカを蘇らせることができる、と思った。
しかし、
「悪いけど、無理なものは無理なんだ」
「そんな……」
「ねーねー知ってる? この教授には、腕のいい助手がいるんだよ」
豆猫によって、助手の存在が暴露された。




