憑依
「そんなに罪を犯したくないのなら、もうあなたには頼みません」
妖精は、豆猫に助手がどこにいるのかを聞いた。
「助手は、隣の部屋にいるよ」
「ありがとう」
メンデルが苦虫を嚙み潰したような顔になる。
「まてっ! それでは、何も学ばないぞっ! 君は、間違っているっ」
妖精は聞こえないふりをして教室を出た。
メンデルの隣の部屋に、エンドウ、という表札を見つけ、ドアノブを握る。
しかし、一瞬躊躇した。
(……本当に、これでいいのでしょうか?)
自分のせいでタナカを殺してしまった。
その罪を償うには、タナカを蘇らせるしかない。
だが、何か大切なことを見落としている気がした。
(……さっきメンデル教授が言った通り、私はタナカの死から何も学ばず、また同じことを繰り返すのではないでしょうか?)
初めて妖精の中で迷いが生じた。
このままタナカを蘇らせてもいいのか?
その時だった。
誰かに突き飛ばされたような感触があったかと思うと、突然目線が低くなった。
「ボーッとしてるからだ。 馬鹿なやつめ」
妖精は目を疑った。
自分が、自分に向けてそう言い放ったからだ。
「な、何が起きたんですか!?」
「自分の体を見てみろ」
妖精は、自分の体を見た。
毛むくじゃらで、緑。
まさか、と思った。
「お前の体を頂いたんだよ。 そこに寝転がっているワラ人形、あの中にタナカになりすまして潜んでいた。 そして、隙をついてお前の体を乗っ取ったんだ」
タナカだと思っていたワラ人形は、以前ブラック☆ホールに収めた幽霊であり、その幽霊が自分の体を乗っ取り、その際、自分の魂がはじき出されて豆猫に乗り移ったのだ。
「か、体を返しなさいっ!」
すると、妖精が豆猫をつまみ上げた。
「お前はどこか遠くに行ってもらおうかな。 全く害はないが、目障りだ」
妖精が豆猫を握りつぶして球体にすると、窓に向かって放り投げた。
窓の隙間から体が放たれると、地球を周回した後、とある民家の上に突っ込んだ。
屋根の上に隕石でも落ちたのか? とヨシコは飛び起きた。
この女性、昨夜遭遇したばかりの、タナカの幼馴染のネクロマンサーであった。
「夜勤明けで疲れてるんだから、勘弁してよ……」
2階に上がり、被害状況を確認する。
屋根に穴が開いており、緑色の球体が床に転がっている。
「な、なにこれ…… 巨大なまりも?」
よく見ると、玉には継ぎ目がある。
ヨシコはその継ぎ目に指を入れ、元の形に戻した。
すると……
「イタタ…… やられました……」
妖精 (見た目は豆猫)が声を上げた。




