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近接国家と言えばハルカがいる獣人国家になるのだが、正直王女が知り合いの国に行ってしまうと再び国の上層部に関与する羽目になりかねないと自重しているのでそこが目的地になる事はない。
「アテネちゃんも楽しく生活できるようになっているし、その辺りはタッシュ先生達がいるから心配ないよね?パールちゃんとも仲良くなったみたいだし」
地下の国から地上に生活圏を移したアテネと豪商ロロニアドの娘である意味魔力に関する逆の症状で苦しんでいた二人だが、今ではすっかり健康になって仲良く友人としてミューゼ王国で楽しく過ごしている。
一人で歩いているロイはどうせ足元のスペードキングが聞いているだろうと思い独り言のように呟いているのだが、この流れで行けば過去の事例からクィーンズの誰かが顕現を願い出る事になるのは知っているので自ら口にする。
「暫くは寂しくなりそうだからさ?クィーンに一緒に歩いてもらおうかな?」
どのクィーンかを指定しないのは何時も争いになっていると聞いているので、そうなる前に自らカードを収納から取り出して全てのクィーンを顕現させる。
一般のカードの女性陣も本当は激しく立候補したい所なのだが格上クィーンに文句を言える立場ではないので、グッと堪えている所だ。
四人のクィーンズは降ってわいた幸運に歓喜しているのだが良く見られたい思いが強いのではしゃぐような事はせず、敢えて優しく微笑みながらロイに近接してさり気なく接触している。
四方から近接されても歩き辛くない所が高い身体能力を無駄に活かしている証拠なのだが、ロイとしてもこうなる可能性が高いと感じていたので特に指摘はせずに好きにさせながら会話をしつつ歩いている。
「アテネさんやパールさんも楽しそうにしている事が改めて確認できております、ご主人様。タッシュ先生がしっかりと面倒を見てくださっておりますよ」
タッシュの女神になっているスペードクィーンが像から得た情報をロイに伝えており、そこを皮切りにミューゼ王国での昔話に花が咲いている。
周囲の警戒はスペードキングに任せておけば問題ないので全力でロイにだけ意識を持って行っているクィーンズだが、足元のスペードキングから必要な情報だけは得ている。
「それではご主人様。久しぶりにマッサージなど如何でしょうか?」
癒しに長けたハートクィーンの一言で街道脇にそれてまどろみの世界に向かう事になったロイと、その間に本当に残念そうな顔をしてスペードキングからの指示を達成する為に離脱するスペードクィーン。
「はぁ・・・さっさと済ませて私もご主人様に触れる至福の時間を過ごしたいです」
ありきたりだが外観からは強そうに見えない若い男性一人と綺麗な女性四人の一団はある意味目立つので、何かしらの罠がないか警戒していた一団が行動に移す兆候を見せた事からこの流れになっている。
「私が対処するのではなく、ジョーカー殿が使役している面々に対処させる方が効果的ではないでしょうか?」
結果的に使役する存在が増える可能性もあるし自分はロイの傍に居られるのでブツブツ文句を言っているが、各上・・・それも自らの部隊のトップから直接的な命令を受けてしまえばロイからの介入がない限りは断る事は出来ない。
「ごきげんよう!」
「うわっ!!」
監視している対象が見通しの悪い場所に移動した事を確認して今後の動きを話し合っている所、突然背後からこのように声掛けされれば驚かない方がおかしい。
「お、お前は・・・アレ?」
遠目でも美しい容姿は確認できていたので街道脇に消えたはずなのに・・・と言う思いが消せないのか、思わず動きが止まってしまう。
「疑問に思われている事はある程度理解できますが、そこはどうでも良いではありませんか。私も暇ではありませんので、貴方方の用件・・・聞かず共理解できますが、済ませてみてはいかがですか?」
用件は略奪以外には考えられないのだが、そこを踏まえて敢えて女性一人で来ているのに実行しろと催促している時点で相当な力を隠し持っている可能性が高いと判断している一団に緊張が走る。
実はこの団に属している人物は何らかの理由でつまはじきにされた人々が寄り合って行動する様になっており、例えば動きが遅いだの話し方が特殊だのと・・・正直自分に罪がない状態で町や村からはじかれていた。
残念ながら寄り合って行動しても戦闘能力が高いと言う程でもないので、略奪と言っても誰かが会話して意識を引いている内に盗みだす事や休憩していた場所で落ちている品を拾い集める程度だったりする。
スペードキングとしても怪しい監視が有った時点で注視していた事から戦闘能力が本当に低い事と特殊な装備や道具を持っていない事は把握できていたので、自らが対処するのではなく直接会話をして状況を把握する方が良いと判断していた。
スペードクィーンもその辺りの説明を受けているのだが、少しでもロイと長く接したい気持ちが先走り過ぎているので多少強めの表現になってしまう。
非常に綺麗な女性のかなり抑えた剣呑な雰囲気に一気に飲まれてしまうので、スペードクィーンとしても少々やり過ぎたかと反省している。
「先ずは・・・そうですね。皆さんは生きる為に少々手を汚しているとお見受けします。全員の状況を把握する事はできませんが、生きる為とは言え罪悪感が有りながらの行動でもありそうですね」
姿を見れば真面な生活をしていないのは丸わかりで、正直怪我をしている人物もいれば栄養状態が非常に良くない人物もいるのだが・・・何とか互いを助けようとしている素振りは見えている。
ロイであればどうするかを考え、ダイヤキングの了解を得て対策を実行する。




