(464)久しぶりの出番
ここは現時点でロイがいるミューゼ王国ではなく、ハイス子爵家が存在している大陸のソシケ王国内部のとある場所。
「お頭。そろそろ次の任務が来そうな予感がしませんか?」
一見チンピラ風のガラの悪そうな存在が同じような風貌の人物にこのように問いかけており、実際に過去盗賊として活動していた一団の拠点になっている。
拠点と言えば聞こえは良いが、ジョーカーによって強制的に調教されてこの場所で生活する様に指示を受けているのである意味監獄とも言える。
生活環境は決して監獄ではないのだが・・・仮に自由に外出してそのまま逃走しようとしても周囲には深い森に囲まれており、時折獰猛な獣の鳴き声が聞こえる事から餌になり果てる可能性が高い。
そもそもこの状況に陥った際に得体の知れない力に恐怖しているので逃走する意思も無く、幸か不幸か今の所誰も餌にはなっていない。
「お前の方もそう考えているのか?実は俺の方も同じ意見だ」
過去盗賊のグループを二つ配下にしているのでジョーカーとしては一纏めに管理しているのだが、一応彼等は今も二つのグループとして活動出来ていると認識しているので他方の話しを聞いたもう一方のグループが割り込んでいる。
同居?当初は多少の争いが有ったのだが時折出現するカードの者達によって強制的に更なる調教が行われた結果非常に大人しくなっており、今では互いが不思議な絆で結ばれている状態になっている。
「貴方は先見の明があるのかもしれませんね。教育の賜物でしょうか?予想通りに任務があるので良く聞いて下さい」
この場にいるのはソシケ王国内部にあるシンロイ商会の商品入荷担当になっている内の一人であるスペードエース。
一応姿は隠しているし口調はジョーカーの様に振舞っているので、この声を聞いた盗賊たちは練度の高い軍隊の様に一斉に姿勢を正して真剣に耳を傾けている。
「実は異国で少々王族の躾が必要になったので、元来の貴方達の素行によって脅しを掛けておこうと思っています。その辺りは敢えて修練しなくとも皆さんの得意分野だと思いますので、宜しくお願いしますよ?」
元とは言え盗賊からすれば王族に対して脅しを掛けると聞けば普通では恐れ戦くのだが、彼等が恐れるのはジョーカーやその仲間達だけになっているので指示を黙って聞いている。
どの国でどの様な立場の存在であろうが指示に従う以外の選択肢がない程に調教されているので、カードの者達からすれば多少の汚れ仕事をさせるには丁度良い手駒となっている為に重宝している。
「後ろに扉があるのは見えていますね?全員視覚的にも脅しを掛けられる状態にした後に、扉の向こうに行っていただきます」
確かに扉が突然出現しているのだがその扉がダイヤ部隊特性の道具であるとはわからないので、まさか異大陸迄飛べる事も理解できていない。
対となる扉も既にダイヤキングの指示によってミューゼ王国側にも準備されており、かなりの魔力を消費する事からカードの者にしか真面に使用する事は出来ないが使用時には互いの扉が接続されて長距離でも一気に移動できる道具になる。
指示された通りにこれでもかと言わんばかりにチンピラの装いになって使用できるか否かは別にして露骨に武器も装備完了した面々は、言われた通りに扉を開けて内部に侵入すると・・・似たような部屋に到着する。
ここで普通の感性があれば周囲をきょろきょろしてしまうのだろうが、完全に調教されているので作戦実行中と認識している以上余計な行動を行う存在は皆無になっている。
「良く来ましたね。待っていましたよ。これからとある国の愚王に対して心身ともに圧力を掛けに行きます。肉体的にも精神的にも相当追い込むのです。当然敵は偽りではありますが恭順の姿勢を見せるかもしれません。そこも踏まえると最低でも一週間程度は追い込む必要があります。わかりましたね?」
「「「「「はいっ!」」」」」
姿が見えず共監視されている事は当たり前だと理解しているので、指示を違えるわけにはいかずに今回の作戦に必要な行動を真剣に考えている一団。
今の説明であれば王が偽りの態度・・・一時的に遜っても時間が経過すれば元に戻ると言われているので、そこを踏まえて強烈な脅しを掛ける必要がある事も理解している。
「質問であります!」
最早どこの軍隊だと言わんばかりの態度だが、ジョーカーとしては調教が上手く行っている事に気を良くしているので普通に対応している。
「何でしょうか?」
「はい!心身共にと言うご指示であるので、物理的に痛めつけてしまう事になるかと思います。どの程度が許容範囲でしょうか?」
現場の状況は不明ながらもこれまでの経験から王単体と相対する可能性が高く、全員が全力で攻撃しては命の危険すらあるので問いかけている。
「そうですね・・・気にせずに実行して頂いて問題ありませんよ。仮に問題が出そうな場合には、我の方で王をある程度回復しましょう」
相当な悲劇で意識を失っても強制的に戻される事態になるので、正直に言えば一週間も必要なく数時間もあれば十分心身ともにへし折る事が出来るのだが、その辺りの知識が皆無なジョーカー含むカードの者達では理解できずに必要以上の調教が行われる事になる。
実行部隊の元盗賊たちは対象人物が非常に苛烈な状況に置かれるのでどれだけ非道な行いをしたのか・・・はたまたどれだけ不思議な存在を怒らせたのかと内心思っているのだが、任務以外に意識を向ける余裕はなくなっている。
「承知しました。任務完了はボスが判断いただけるのでしょうか?」
「そうですね。任務終了時には我の方からその旨伝えましょう。それでは宜しく頼みましたよ?」




