(463)ロロニアド
「ゼシューはいなくなり、恐らくここには戻ってこない。となると・・・次はどうする?」
一応国王なので可能であれば自らの血統を持つ人物に王位を継承してもらいたい気持ちが高いステヴァンなのだが、口にしている通りに王位を継承させるつもりだったゼシューがいなくなった今では残る選択肢はこれまで迫害してきたミルバだけになっているので非常に悩んでいる。
「ミルバであれば運営と言う面では申し分ないのか?しかし・・・」
自らの事を棚に上げて実力を査定しているが、ミルバが素直に王位を継承するか疑問が残るし権力を移譲した際に報復されかねないと言う懸念もある。
現実的にはミルバは既にステヴァンに全く興味が無くなっているので余計な事をしなければ反撃する必要性を感じていないし、国家運営に関与している貴族の大半はステヴァンに見切りをつけているので今の自分の立ち位置を大きく勘違いしている。
「悩ましいな。暫くは余が継続していくほかあるまいが、こうまで人材不足に陥るとは思ってもいなかったぞ?」
次代を育てるのも為政者の務めなので全責任はステヴァンにあるのだが、当人としてはそのような意識はないので全てが他責になる。
差し当たりこれまでの体制を維持しながら考える他ないと口にしており・・・実際には特段何もしておらずに逆に実働部隊からすれば邪魔にしかなっていなかったのだが、ここでこれまた何時もの通りに無駄な事を閃いてしまう。
「フム。改めて余の威光をしっかりと認識させるにはうってつけだな」
ステヴァンの手にはロロニアドから献上された宝飾品があり、交易に関しての話しが出ていた事を思い出している。
「余の方から下賜してやった道具に対して、改めて感謝を伝えられておらんな。その機会を与えるとともに交易について実行に移すべきだろうな」
ロロニアドが真に欲している道具ではなく中途半端な品・・・ある意味市場に出回っている程度の品を与える事で目的を達していると考えているので、その後の交易についても相当有利な条件で実行できることは間違いないと確信している。
「無駄な心配だったな。余ほどの存在になれば人材だろうが利益だろうが、向こうから必然的にやってくるのだ。ははははは」
結果的にはロロニアドだけが面倒な時間を取られる程度の被害を受けるのだが、今の所それ以外には面会の調整を行う事務官以外は大きな影響を受けていない。
寧ろゼシュー不在の効果が出ているので相当効率的に業務が行えており、ロロニアドとの面会調整を行う事務官も余裕で対処できている。
「ロロニアドよ、よく来たな。その方・・・」
「お久しぶりです。こちらが我が娘のパールになります。この度私の最大の目的であった娘の体調が戻りましたので、最も安心安全であるこの国に拠点を移す為に同行させております。陛下への説明時、対象の人物を知人と申し上げた事に関してはお詫び申し上げます」
「そうか。身内の体調が戻ったのであれば良い事だな。何よりだ」
ここだけ聞けば自ら与えた道具によって改善した可能性が高いと感じているので交易の話しに続けようとするのだが、先制攻撃を受けてしまう。
「はい。ありがとうございます。我が娘はミルバ王子の手配頂いた道具でこの体調を維持する事が出来ております。ですから、王子の近くで生活をさせて頂く事で仮に道具に何かしらの異常があっても即対応頂ける安心感を得る事が出来るので移住を決意しました」
明確にステヴァンが手配した道具ではなく対抗馬として聞いていたミルバから得た道具によって改善したと伝えているので、非常に面白くないステヴァン。
「・・・余の方で手配した道具が有っただろう?その道具と間違えてはおらんか?」
「いいえ。申し訳ありませんが例の道具に関しては多少身体強化に魔力を消費するだけの道具ですので、娘の体調が戻る事は有り得ません。しかしこの国は素晴らしいですね。これだけの道具を難なく練成してしまう。それも学校の授業レベルで実行できてしまうようになっている所も素晴らしいですよ」
ミルバが・・・実際には最初にダイヤジャックの指導を受けながらタッシュが練成し、その後に授業の教材として同じ品が練成されている事実など知る訳がないステヴァン。
「・・・確か体内の魔力を一定量消費させる道具だったな?正直実際に必要とする環境は非常に少ないだろう?そのような品を学校の教材にしているのか?」
最早どちらがこの国の重鎮かわからないような質問になっているのだが、豪商ロロニアドは事前にこの辺りの質問が来る事をミルバやパーミアから示唆されると同時に回答まで与えられている。
「はい。何でも現在市場に出ている道具が故障する原因の一つに消費魔力の調整が出来ない事が挙げられるそうです。今回の道具はその部分の対処・・・つまり、道具が無駄に貯えている余剰な魔力を吸い上げる機能として活用する事が出来るので、稼働中の道具の長寿命化に寄与する事が出来るのです。本当に良く考えて学ばれています!」
学校を褒める事は国を褒める事に繋がるので、流石のステヴァンもこの内容では直接的にロロニアドをこき下ろす事は出来ない。
「そ、その通りだ。良く我が国の事を理解しているようだな。それで交易に関してだが、その方は我が国に拠点を移して活動するのだな?」
「先ほども申し上げました通り、娘の安全の為にも道具の作成者の方の近くに居を構える必要があります。永住かと言われるとそうではないかもしれませんが、少なくとも数年はこちらに拠点を構えさせていただく所存です」
「その方の家族を思う心に感心しておる。ところで・・改めて交易に関してだが、先の説明では我が国の道具に対して宝飾品をと言う話しだったな?」
「当初はその想定でしたが、私の拠点はこの国になる以上は交易の意味がありません。自国と自国で何かの商品を交換しても何も益は有りません!」
ロロニアドの拠点がこの国になっているだけで商会長の立ち位置は未だに持っている事から交易を行う事は可能なのだが、信頼できない存在との商売は身を亡ぼす事を知っているので敢えて誤認させるような表現で躱していた。




