(460)結果
突然扉が開いた音がすると略同時にこのような声が聞こえる。
「ふははは。この程度の実力で忠告を無視するから痛い目を見るのだ。ホレ、お前の希望の星が腰を抜かしているぞ?」
ダイヤジャックに引き摺られているのは腰にゼシューが練成した道具を装備したボロボロの王で、これ以上ない程に痛めつけられているのは一目でわかる。
「そしてゼシューよ。貴様はこの程度の道具を偉そうに披露したのか?その程度の実力では学校を卒業する事・・・いや、進級自体も不可能だろう?それに地上では貴様がいない方が全てにおいて良い方向に行くのでな。今回の罰としてはそこを踏まえて選択肢を与えよう。良く聞け!」
これまで以上に偉そうな態度なのだがジャッ君として行動している以上はこのキャラを維持する必要があると思っているし、寧ろ最近ではこっちの方が素ではないかと思う程に馴染んでいるので違和感がない。
「一つ目だが、地上には戻してやるが貴様の住居は肥溜めだ。既に数回ゆっくりと肩まで浸かって寛いだ過去があるだろう?故に罰とはならない可能性は否めないが、そこは甘んじて飲み込んでやろう」
「・・・・・・」
ゼシューは既に罰を受け入れるほかないと思っているので逆らうつもりはないのだがこの選択肢はないと思っており、選択肢と言われている以上は続きを待っている。
「二つ目だが、地上に向かわずにここに留まる事になる。当然二度と地上に出る事は出来ない。さぁ、好きな方を選べ!」
ゼシューはここでも深く物事を考えずに肥溜めだけは許容できないと言う気持ちで二つ目・・・この国に残る事を選択しており、最早手駒もいなければ異常な力を持つ敵がいる地上よりも今の環境が継続されるのも悪くないと思い始めていた。
実際にはゼシューが作成した道具に関してはダイヤジャックがボコボコにした後の王に懇切丁寧に説明しているし、ゼシュー自身の練成に関するレベルについても教えている事から同じ環境で過ごせる事は絶対にない。
とは言え王自身もボロボロになっているので会話が成立する状況ではないし新たな指示も出せないので、そこに思い至らないゼシューは迷う事無く地下に留まる事を選択した。
「ふ、二つ目だ。余はこの国に残る。地上ではお前の様な不純物が多くいるのでな。余には空気が馴染まないと思っていたのだ!丁度良い機会だ!!」
最後の最後で暴言を吐く事も忘れないが、これがきっかけに余計な罰を受ける可能性にも思い至れないのがゼシューだ。
「この期に及んで貴様は随分と偉そうだな?このジャッ君様に向かってその様な態度を取れるところが気に食わん」
王を放り投げるとゼシューを掴みこの場から去るダイヤジャックは、地下の国にも存在する肥溜めにゼシューを容赦なくぶち込んで直にタッシュとスベードクィーンがいる部屋に戻る。
「タッシュ先生は自分が運ぼう」
タッシュ自身を運ぶのではなくベッドを含めて軽く持ち上げているダイヤジャックと、最早この場所には興味がなく第二の目的であるクリエ鉱については根こそぎ奪っているので去り際に最後の一撃を叩き込めば良いと思っているスペードクィーン。
ここに至るまでに地下の国を容赦なく散々破壊して地上との通路を作成する技術に関する書物も含めて廃棄しているし、住民の命は奪っていないがこれ以上ない程に脅しを全員に加えている事から三度目になる地上侵攻と言う考えは起きないだろうと思っている。
とは言え二度目がありそうだったので完全に信用しているわけではない為に地上との通路になり得る場所に関してダイヤジャックが即座に把握して全ての場所を完全に硬化させているので、カードの者達レベルの力がなければ技術が発達しても新たに地上に向かえる道を作成する事は出来ない。
この事実は王だけではなくゼシューも知らないので、何れは地上にと言う甘い考えがありながらも不可能である現実をそう遠くない内に突きつけられる事になるだろう。
「これがこの世界の見納めだな」
「そうですね。正直全てを滅ぼしても良い気はしますが、そこはご主人様の意思に反しますので我慢しましょう」
こう言いながらスペードクィーンは最後に巨大な炎の竜巻を発生させており、言葉と行動が一致しないと思いながらも指摘できずに苦笑いのまま地上に向かうダイヤジャック。
進むと同時に道を塞いで硬化させているので背後に通路は無く、直に地上に戻る事が出来ている。
「今回は像のおかげで比較的早く対処する事が出来ましたね。常に聞き耳を立てる訳には行きませんが、同じような状況の際にはタッシュ先生の方から連絡が出来る様に改造して頂けますか?」
寝ているタッシュの懐からスペードクィーンの像を取り出してダイヤジャックに渡し要望を告げており、依頼を受けたダイヤジャックはまさかスペードクィーンがここまで対応するとは・・・と内心で驚愕しながらも対応する。
「この機能に関しての説明はジャッ君にお願いしても良いですか?」
「無論だ。そこは任せてもらおう」
この一連の流れで二度と地上でゼシューを見る事は無くなるのだが、ジャッ君として事情を目が覚めたタッシュに説明しているので学校の関係者は特に騒ぎ立てる事はなかった。
どれほど邪魔に思われていたのかが良く分かるエピソードだが・・・当人は肥溜めのおかげで暫く苦痛の時間を単独で過ごしており、その時間は王を含めた面々の回復時間でもあった事からある程度状況が改善された時に再び相対していた。
当然過去と同じ扱いになる訳も無く、ゼシューの実力を含めて全てを理解した・・・そもそも実戦で何も道具の恩恵を受ける事が出来なかった事で身を持って把握しているので、地上への通路を一人採掘する業務につかされることになる。
残念ながら採掘等できる訳も無く・・・人生が終了するまでこの状態が維持されるだろう。




