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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆


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(459)救出と

 王の目の前で作業を始めているゼシューは相当久しぶりの練成なので効率が悪く無駄に魔力を消費しているのだが、この空間に来て魔力の底上げも出来ている事から今の所問題になる事はない。


 敢えて言えば・・・出来上がる道具がより一層雑な仕上がりになる程度だが、そもそもの出来が悪いのである意味誤差の範疇と言える。


「不思議な現象もあるものだ。なぜあの素材が全く異なる形になるのか・・・正直興味が尽きないな。物質を融合する事で別の物質に変換していると言う理解になるのだろうか?」


 疑問をぶつけているのだがゼシューは回答できるほどの余裕も無ければ知識も無いので、王の言葉に対して全く反応を示さない。


 漠然と疑問を問いかけただけなので特段反応がなくとも何も思わない王だが、変化している素材から視線を外す事無くやがて大きなリング形状の品になり始めると練成が最終段階に移行したと思っている。


 実際にこの感覚は正しいのだが、リング自体は相当大きいので人によっては胴回りにはめ込むレベルの品になる。


 事前に小型化は難しいと聞いてはいたがこれ程か・・・と思わなくも無いが、目的が達成できれば問題ないし胴回りであれば行動に制限はかからないだろうと楽観視していた。


「ふぅ・・・流石の余も疲労困憊だ。王よ、できたぞ。これが身体強化系統の力を得る事が出来る道具だ」


 授業の練習レベルで疲労困憊と言えるところが凄いが実際に疲れ切っており、練成のレベルなど分からない王としてはこの道具一つ作成するのにこれだけの労力を必要とするのか・・・と、練成の難しさを無駄に肌で感じていた。


「おい。そうだ、お前だ。これを腰につけてみろ」


 取りあえずゼシューが作成した道具の性能を確認する必要があるので近くの人物を呼び寄せ、机の上にある練成したての道具を装備する様に命令する。


「承知しました、王よ!・・・アチッ!」


 大きなリングを手に取ろうとした所であまりの熱さで反射的に手を放してしまう。


 ある程度緻密な練成になると発熱する事はあるのだが、このレベルで発熱すると言う事は練成に必要なエネルギーを無駄に消費して発熱してしまった現象の為に・・・想像以上に道具の質が低下していることを意味する。


 これも授業で説明される事なのだがその様な知識がないゼシューは持論を展開する。


「おい!気を付けろ。余が丹精込めて練成した品だ。熱量があって当然だろう?」


 正直何を言っているのかよく分からないのだが、そもそも道具の練成に関する知識が皆無の為に理解出来なくて当然だと思っているので自然冷却を待つ事にした。


「王よ。余は今回の練成でかなり疲労したので、一旦休憩するぞ?」


 ゼシューはこの場に待機する必要すらないと判断している上に実際無駄に疲労しているので、こう告げると返事を待たずに勝手に部屋に戻って行った。


 ある程度豪華な扉を開けて中に入ると広い空間があり、ベッドもあるのでそこに向かおうとした所で背後の扉が豪快に閉じた事から“煩い”と言う気持ちで反射的に振り向いて腰を抜かしてしまう。


「あら・・・私の事は覚えているようですね」


 この場に即到着しているスペードクィーンは過去王城で行われたパーティーで会っている事を告げているつもりなのだが、当人からしてみれば容赦なく肥溜めに落としたダイヤクィーンに見えるので腰が抜けてしまった。


「私の信者を無下に扱った様ですが、その詳細が不明である事からそこについて今は言及しません。しかし・・・真実が明るみに出た際には覚悟して頂きますよ?」


 流石のスペードクィーンもロイから尊敬されているタッシュ、それも自らを信望しているタッシュはしっかりと認識しているので守護対象に含まれており、意図的に害を与える存在に対してはロイの許可が必要だが相応の対処をするつもりでいる。


 怯えて腰を抜かしているゼシューの襟首を容赦なく掴んでベッドの近くに行くと、そこには牢の中で衰弱していたはずのタッシュが穏やかな寝息を立てていた。


「相当弱っていました。何故このような状況になっているのか、教えて頂けますね?」


 何故タッシュが無事にこの場にいるのか全く理解できていないまま恐怖の笑顔でこのように告げられてしまい、ゼシューは自らが知る限りの事実をペラペラ話してしまう。


「成程。この国の王が改めて地上侵攻を行おうとしている事は明白ですね。私達に対する復讐と言ってはいますが、勝手に攻め入ろうとして反撃にあっただけですよ?逆恨みです。しかし貴方は・・・本当に呆れますね。自国がどのようになっても良いのですか?」


「そ、それは・・・」


 自らが王位を得るところまでも何も考えずに話してしまったのでこのように言われているのだが、最近色々と常識を学んでいるスペードクィーンから見てもあり得ない態度だと思われて呆れられているので即座に仕置きが行われる事はなかった。


「一先ず情報は得たので貴方に対する対応は後回しにします。ジャッ君の用事が済めば地上に向かいますよ?」


「ジャッ君・・・まで来ているのか・・・」


 一つではあるが道具は練成終了しているしタッシュが練成した道具も複数個存在しているので、ダイヤジャックが道具を装備した王と戦闘になって最悪でも相打ちになってくれれば目の前の存在も他の地下の存在と良い勝負になる可能性があると思っているゼシューだが、自らが戦うと言う選択肢はない。


 少しすると絶え間ない轟音と振動があり間違いなく戦闘が行われているのだろうと思っているゼシューは、比較的長くこの時間が継続した事から相当良い勝負になったのではないかと思っている。


 その期待は音と振動が終わって暫くしてから聞こえて来た声によって完全に掻き消えるばかりか、恐怖に支配される。


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