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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆


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458/495

(456)異常?

「み、皆さんご存じの通り、一週間以上タッシュ先生が不在のまま連絡が取れていません」


「流石に私も心配になって来たわ。今のタッシュ先生であれば自分の力を勘違いして暴挙に出る事もないし、多少危険な場所での素材採取だとしても万全の体制で臨んでいるはずなので油断していたわ」


 ヨーレイとパーミアがタッシュの私室でこのように口火を切っており、今この場にはロイとミルバ、そしてダイヤジャックだけがいるので特段何かを配慮する程精神的に弱くないと知っている事から少々厳しい表現も使っている。


「フム。自分としても油断していたことは否めないな。タッシュ先生の行きそうな場所に心当たりは有るのだろうか?ヨーレイ先生、パーミア先生」


 ダイヤジャックから問われた二人は互いを見ているのだが、どの様な効果の道具を作成しようとしているのかは時折聞いているのだが必要な素材、その採取場所に関しては全く聞いていないので明確な回答が出来ない。


「ごめんなさい、ジャッ君。ちょっと分からないわね。最近は複数の新たな道具に関する研究を行うと言っていたので、応じて素材もそれなりの種類になるはずなのよ。残念だけれど研究段階である以上は、ジャッ君が練成に必要な素材を言い当てる事が出来たとしてもその素材を採取しようとしたかは分からないの」


「そ、そうなのです。研究とは試行錯誤をしてゴールに到達するので、そ、その途中に使用される素材は大半が目的を達する事が出来ない品です」


 ダイヤジャックを含むダイヤ部隊であれば目的の効果を聞けば必要な素材に関しては即座に理解できるのだが、二人の教官の説明を聞けばその素材に到達する為に各種素材を使用して実験すると言っているので現時点でタッシュが探そうとしているはずの素材が本来の練成に必要な素材である可能性は低い。


 残念ながらこの説明を受ける直前まではどのような効果を目的としている道具なのか聞けば即解決だと考えていたダイヤジャックだが考えを改めており、同じくカード状態のダイヤ部隊を始めとした面々も新たな視点だと感じている。


 とは言えロイの指示なしでは過剰に介入する事は厳禁だと入念にくぎを刺されている為に、ダイヤジャックからの続報を待っている。


「ロイ君。過去にタッシュ先生は不思議な存在に乗っ取られていたでしょ?その後に生まれ変わっているけど、同じように何かを引き付けてしまったと言う事はないかな?」


「何とも言えない・・・かな。不思議な現象を引き付け続けてしまう人はいるとは思うけど、タッシュ先生が当てはまるかは分からないしそもそも今回の不在がその影響かも分からないからね。逆にミルバ君はそれが原因だと考えているの?」


 高速思考を持つミルバであればある程度正解に到達できるのではないかと考えているロイが逆に質問をしており、この場には同じ能力を持つ上に数多の経験があるパーミアもいるので労せず正解を得られるだろうと安易に考えていた。


「ごめん。今の情報だけじゃ何とも言えないんだ、ロイ君。パーミア先生はどうですか?」


 ミルバも同じ力を持つパーミアに確認しているのだが、失踪した事実しかないのでパーミアも分かる訳がない。


「全く手掛かりがないこの状況では推測しかできないわ。それも相当確度が低いと言う前提が付いちゃうから、意味がないわね」


 ダイヤジャックであればある程度の範囲で気配を察知する事が出来るので、結果を即公表するか否かはロイの判断が必要だがこの程度の行動は許容範囲だろうと考えて即実行している。


 当然地下の国で厳重に幽閉されている存在を感知できるわけも無く、ダイヤジャックとしても自分の力はあくまで練成特化なので気配察知の範囲が他の部隊の面々よりも小さい為に起こった結果だろうと安易に考えていた。


 その頃の地下の国ではゼシューは魔力に対する耐性があるので普通だがタッシュは辛うじて生存している状態が維持されており、本来の目的である地上の戦力増強に寄与している道具を作成させる事は達成できていない。


 その理由は・・・タッシュに関しては怨敵とも言える存在の像を所持しているばかりか説教まで始まってしまったので即牢にぶち込んでいるからで、仮に練成に関する技術が高かろうが死神と言っても良い存在を模した像を持っているので、どの様な悪影響を及ぼすかわからないと言う恐怖から実行させるべきではないと判断されていた。


 更にタッシュが身に着けていた各種道具に関しては有用であると判断されていたので、その練成に関する知識をゼシューから得れば良いと言う王の判断でもある。


 正直タッシュが大切に所持している女神像に関しては即座に破壊したかったのだが何をどうしても破壊する事は出来ず、この場に留めておくことも許容できずにタッシュと共に牢にある。


 遠くに捨てる選択肢もあったのだが、何故かこの像だけはタッシュが必死に守ろうとするので鬱陶しくなった部分もあるのだろう。


 ある程度時間が経過するとゼシューはタッシュが装備していた道具が並べられている場所に案内されており、王と面会している。


「何故余があのタッシュと共に牢に入れられなければならなかったのだ?説明を求める」


 当然切れているのだが、幾ら力が増しているとは言っても王の敵ではないので恐怖を感じる事なく事実だけを告げている。


「あの場でお前は冷静ではなかったからな。だが今は冷静になれただろう?そこでお前にはこの場で力を与えた事に対する対価を払ってもらおう。この道具だが、あのタッシュとか言う男が装備していた。相当な品である事は分かるのだが、地下の国では道具に関する技術はまるでないのでな。お前であれば同じような品を作れるのではないか?」


 対価と言われて少々むっとしたゼシューだが自らの力を渇望しているように聞こえるので途端に機嫌が良くなるので、過去の様に過剰に自分の力を上振れさせた状態での高説が始まる。


「当然だな。余の力を持ってすればタッシュ程度が作成する道具など目を瞑ってでも練成する事が可能だ。だが勘違いはするなよ?一応タッシュも我が国ではそこそこの技術を持っていると認識されている。その遥か上を行く存在が余なのだ」


 事実など分からない王なので、これで忌々しい連中を一気に始末する事も甚振る事も可能だと口角が上がっていた。


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