(454)練成の準備
牢にぶち込まれているタッシュは辛うじて意識はあるが何もできない状態になっておりゼシューは免疫?の関係で普通に出来ているのだが、地下の国として地上の有り得ない力を持つ存在を目の当たりにしているので急ぎ各種設備を構築していた結果・・・この牢も非常に堅牢である上に考え得る外部との連絡手法を阻害する様に作られている。
無駄に部屋の壁周辺に相当な魔力を集中させて密度を上げ、その魔力により何らかの道具による不思議な通信手段が有ったとしても阻害できると考えているし内部の存在に対しても行動を制限できる状態になっている。
「きょ、今日はタッシュ先生がお休みの為に、き、急ではありますが魔力分野の講義を行います」
ゼシューが学校に来なくても最早誰も気にしないばかりか寧ろ助かると思っている者が大半だが、タッシュが休むと授業が成立しないので急遽ヨーレイが授業を担当する事になっている。
その日の昼休み・・・不在ではあるが部屋が大きく何時もの集合場所になっているのでタッシュの部屋にいるいつもの面々。
「ヨーレイ先生。タッシュ先生はどうしたのですか?今日の授業に関して予習をしたところ、分からない部分が有ったので質問が有ったのですが・・・」
「わ、私も良く分からないのです。ぎ、逆にミルバ君は何か知っていませんか?」
「日々練成に必要な素材の調査や実際に採取を行っている事は知っていますので、ひょっとしたら予想以上に時間がかかっているだけかもしれないです」
ヨーレイとミルバの会話を黙って聞いていたロイは確かにその通りかもしれないと思っており、特段カードの者達に何かの調査を指示する事はない。
「確かにミルバ君の言う通りに何時も素材に関して色々悩んでいたのは事実だよね。何も連絡がない所は少し気になるけど、もう少し様子を見ても良いかな?で、ジャッ君?例の道具だけどさ?」
ロイとしては豪商ロロニアドの娘に対応するための道具練成を形上ミルバが請け負っているが、実際にはダイヤジャックが練成する事は誰もが理解しているのでその話題に移行する。
どのような道具だろうがダイヤ部隊の力を使えば素材すら練成出来てしまうのだが、余りにも過剰な道具を作成してはロイ一行が不在になった際に障害が出てしまう可能性がある事からなるべく一般的な素材を使用して練成する様に事前にロイが指示を出している。
当然練成に関しても可能な限り教官の手を借りても良いのでカードの力を使用せずに出来る状況が望ましいと希望を告げられているので、ダイヤジャックとしてもその辺りを含めて検討した結果を説明する事になる。
「例の体内魔力を常に適度に吸収する道具だったな?ロイ君。一応練成は難しくはないのだが、少々入手が難しい素材が二つほどある」
過去には思いつきもしなかった道具・・・特に直近では魔力生成の道具をこともなげに練成して見せているダイヤジャックがこの様な発言をした事からロイ以外が一瞬眉をしかめながら話しを聞いている。
「一つ目はクリエ鉱と呼ばれている石で、かなり長時間特殊な魔力に晒されている場所で見つかる事が多いのだが、ざっと探したところこの国にはなさそうだ。そして二つ目だが、パンゲル草と呼ばれる植物だ。これも国内では発見できていないな」
あっさりと国内の調査を終えていると明言している所は相変わらずなので、特にミルバはそれ程の力を持っているダイヤジャックをもってしても・・・と言う気持ちが捨てきれない。
「ジャッ君。その二つの素材入手の目星はついているのかな?」
「当然だな。一つ目は少し前にタッシュ先生が言っていた悍ましい雰囲気を感じていた件と関連するが、正にその雰囲気を作っていた連中がいる場所にある。二つ目は・・・これはミルバ君にお願いした方が良いのだが、例の獣人の方がいただろう?あの国にあるのは間違いない」
過去ミルバが助けた獣人がお礼を伝える為だけにこの国に来て警報が鳴ってしまった経験があるが、当然ミルバと獣人の国の王女ハルカは顔を合わせているので会う事が出来ればお願いする事は可能だろう。
そもそも他国・・・それも一つは国の場所すら良くわからない状況で素材があると明言できているので、真偽に関しては全く検討する必要が無く単純に感心しているミルバ。
地下の国の鉱石に関しては王を強制的に送り届けた際に見つけていた品で、獣人国家に関しては王女ハルカや侍女エリューンの服に多少付着していた品を把握していただけなので、パンゲル草に関しては獣人国とミューゼ王国の道中に存在している可能性も捨てきれない。
仮に獣人国家に無ければ強制的に自生させれば良いと相変わらず規格外の事を考えているダイヤジャックは、これで多少自分の補助が必要になる可能性はありながらも依頼を受けたミルバが直接動いて必要な道具を作成できるはずだと確信している。
同じく依頼を受けた国王ステヴァンも対処可能な道具の練成を指示しているので、宝飾品をかなり有利な条件で継続的に取引する事が出来るだろうと笑顔になっている。
その道具はありていに言えば普通の道具で、道具の起動には魔力が必要になる事から必然的に装備者の体内から魔力を消費し、その用途は身体強化を行う極めて一般的とも言える道具の練成を行っている。
特に冒険者に対して多く販売されているので練成の技術も確立されており、正直このレベルであれば豪商ロロニアドが既に見つけて詳細を把握した上で娘に対しての使用は適さないと判断されているのだが・・・その部分にまでは頭が回らない。
市場に出ている道具は行動の障害にならない様に比較的小さな道具ばかりであり、ロロニアドの娘パールの魔力を吸収するには容量が小さすぎる。
一瞬であれば必要な量の魔力を吸収する事は出来るのだろうが、その分過剰に能力の発動に変換され・・・今回は身体強化に振り分けられてしまうので道具に対する負担だけではなくパールの体にも大きな負担がかかる。
ミルバと国王が互いにロロニアドからの依頼に関して動き始めているのだが、真に必要な道具を作成するには互いに少々壁がある状況だ。
「ふははは、ではミルバ君。先ずは獣人国の王女と会いに行くか?」




