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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆


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(453)拉致

「ゼシュー君と同じ事を聞く事になりますが、何故私が拉致されているのか教えて頂けますか?そもそもここは何処ですかね?」


 今後新たな道具の開発・練成に向けて日々努力を積み重ねているタッシュなので、必要な素材を入手する為に人気のない場所や少々危険な場所に赴く事は多々ある。


 当然身の安全を担保する為に各種道具を装備した上で出かけているのだが、少し前に悍ましい気配を感じた場所は対策済みとは聞いているがやはり少々腰が引けるので別の場所に向かっていた。


 素材が入手できれば場所は何処でも構わない事から多少遠くなるが安全な方に向かっていたところ、地下の面々が新たに作成した未知の出口周辺で作業する結果となってしまった。


 結果・・・タッシュも気が付けばこの場におり、いつの間にかゼシューが現れて喚き散らしているので同じ疑問を持っている。


「お前は・・・随分と道具に関して知識と技術があるそうだな。地上の存在が持っている得体の知れない実力はお前の技術によるものだと判断した。その技術をここで発揮してもらうぞ?」


「え?確かに道具は各種作成しましたが、実力とは何でしょうか?私が作成している道具は基本的には生活環境を良くする方向の道具を作成しているのですが?」


 一部戦力増強に繋がる道具を作成した事もあるのだが大半が生活環境向上の道具である事から、目の前の存在が何を言っているのか良く分からないタッシュ。


「敢えて惚けているのか?そもそもお前はこの場に来て普通に会話が出来ている。魔力の質が大きく異なっている状態で・・・だ。何かしらの道具を身に着けているのだろう?」


 ゼシューとは異なって淀んではいない魔力なので本来地下に充満している魔力は害になり得るのだが、指摘されていた通りに環境に適応できる道具を装備しているので普通に対応できている。


「あぁ、この道具だと思います。これは温度変化を含む環境の変動に対して適応できる道具ですから、これが機能しているのでしょう」


 本来突如として訳の分からない場所に拉致された挙句に多少攻撃的な姿勢を見せられれば少なからず動揺するのだが、今のタッシュは女神の加護があると信じているので動揺する事はない。


「その時点で優れた技術を持つ事は間違いなさそうだな。で、お前は他の道具は何が作成できるのだ?」


「うーん。今この場でと言われると設備もわかりませんし素材も不明なので何とも言えません。どの様な事でお困りですか?」


 タッシュと普通に会話が成立した事から喚くゼシューは別の場所に連れ去られており、王と二人で話す事になっている。


「地上であり得ない事態が起きたのでな。友好的に事を進めようと思ったのだが、まさかの事態が起きた。お前はその辺りの情報を持っているのか?」


「何のことだか全くわかりません」


 ここが何処だか説明を受けていないのでわかり様がなく本心から答えているし、そのタッシュを見て嘘をついているわけではなさそうだと判断している王。


「そうか。地上には見かけが美しいながらも恐ろしい力を持つ悍ましい存在がいる事が確認できている。そ奴等を抑えなければこの国、この世界に未来はないのだ!」


 事情が分からないまま国家存続の話しまで出てしまったので、これ以上自分にできる事はないと判断したタッシュは帰還を申し出る。


「私には今以上の説明はできませんしお力になれる事はなさそうです。授業もあるので、元の場所に戻していただけますか?」


「・・・お前は随分と豪胆だな。今自分の置かれている状況を理解できていないのかそもそもする気がないのか分からんが、取り敢えずお前が装備している道具に関しては一旦こちらで預かるぞ?」


 何を言われているのか分からない内に数人がタッシュを取り押さえて淀んだ魔力に適応する道具すらも奪われると一気に具合が悪化して何も話せなくなってしまうのだが、懐に忍ばせている女神像を奪われて王から出た言葉に反応する。


「こ、コイツが元凶だ!お前はこいつを知っているのか?この悍ましい(・・・・)奴がいる限り大手を振って地上に向かう事は出来ないのだ!」


「お、悍ましいとは何事ですか!女神様に対して冗談でも口にして・・・いいえ、僅かでも思う事すら不敬です!お話しになりませんよ!この女神様の素晴らしさを全く理解できない時点で全てが上手く行くはずがないですよ!その考えから治すべきではないですか?基本中の基本ですが?」


 多少(・・)の体調不良などどこ吹く風で女神像をこき下ろされた事に対して反射的に過剰に反応するいつも通りのタッシュと、この状況で突如として豹変したタッシュに対して少々及び腰になってしまう王。


 タッシュを強制的に取り押さえて身に着けていた道具全てを取り去った配下の者もかなり引いており、どれだけタッシュが異常なのかが見て取れる。


 とは言え幾ら気合が漲っていても普通の人である以上は体が言う事を聞かないので、複数人から抑え込まれたままの状態で厳しい視線を王に向けている。


「道具の影響が装備者に残っている可能性があるな。地下の国では全く想像も出来な品々である以上は、その効果に関して甘く見積る訳にはいかない。おい!ソイツ(タッシュ)もあの喧しい男(ゼシュー)と同じ場所にぶち込んでおけ。この道具に関しては慎重に効果を確認しろ!」


 流石のタッシュも相当具合が悪く言葉を発する事が出来なくなってしまったので、乱暴に引きずられてゼシューと同じ牢に放り込まれてしまう。


 タッシュは会話などできる訳も無く横たわっており、一方の王は道具に関して助けを求める機能があるか否かだけは最初に確認するように告げており、道具の知識がなくとも魔力を流せば起動する事はこれまでの説明を受けて分かっている事から敢えて全く異なる場所で起動して様子を見る事で判別する事にしている・・・が、当然女神像に関しては唯の置物と判断しているし視界にも入れたくないのでタッシュと共にある。


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